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笑いながら泣いているのか、泣きながら笑っているのか

可愛らしい装丁と、気の抜けたタイトルからは想像を超える内容だった…

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000373035

にしおかすみこさんというと、
SM女王様の黒いボンテージ姿で鞭を構えて叫ぶ姿が印象に残っていたのだが
今はこんな(ユカイな)ことになっているとはおもわなかった。

まったく、家族というのはつくづく厄介になりえる。
愛情がなければやってらんないだろうし、
愛情があるからこそやってらんないんだろう。
その辺の機微が実にさっぱりと、
小気味よく、愉快かつ切実に描かれている。

文章のジャンルとしてはエッセイになるのだろうが、
内容はいっそ報道とかドキュメンタリーに近い。
ほとんど事件の記録といっても過言ではないような気がしている。
なんといっても色々ギリギリなのだ。
暴言の打ち合いのような生々しいやりとりに至っては
「家族だから」という理由で辛うじて許されている…のではなかろうか。
ある種の、そういう世界でのギャグのように思えてくる。

それにしても、文章を読んでいて声を出して笑ってしまうなんて、
ちょっと覚えのない経験なのだが
それと同時に涙で文字が滲んで読めない…という経験は初めてだ。

オモシロいとシンドイが同時に襲ってくる。オモシンドイ。
「笑える」が限界を超えて、「笑うしかない」になるのだ。
(祖父の葬式で、足がしびれ過ぎて笑うしかなくなったことを思い出した)
自分でも自分の感情の向かう先がよくわからなくなっていた。
…ひょっとすると、立場によっては
「笑ってはいられない」という方もいるかもしれない。
内容は書き方次第でいくらでも深刻になれるものばかりだから。

でも、「どうか笑ってほしい」というのが、
芸人である筆者の願いなのだろう。

人生は、生きてるだけで大事件なのだ。
笑いながら泣いていても、
泣きながら笑っていても
笑ってるほうがいいじゃないか
笑えるなら、まあ、いいじゃないか。

この本は、そう思わせてくれる。


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