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「エモい」どころじゃものたりない

正に日本語の宝箱や~! と内なる彦丸が叫ぶ。
つくづく、染み入るように、母語が日本語でよかったと実感する本と出合ってしまった。


いや、世界のどの国の言葉も等しく美しく、素晴らしいということに異論は全くない。
各地域の様々な文化、価値観、おもいがそこにはある。
翻訳できない単語の数々があることも知っている。
そのことの難しさよりも、その面白さも。

さておき、漢字、カタカナ、ひらがなと3種類(最近はアルファベットや各種記号も自由に使われるから5種類と言ってもいいかもしれない)の文字を組み合わせ、音だけでなく、見た目にも様々なイメージを広げられる言語は世界でも日本語だけだ。
そのために悪魔の言語などと評されたこともあるくらいだ。

その特殊な日本語を、外国語として0から学ぶだけでも大変だろうに、古語にまで手を広げるとなると…最低でも人生3周くらいは余裕で必要になる気がする。
想像するだけで、心がくじけそうだ。

にもかかわらず、母語が日本語というだけで、簡単にこの本の良さを享受できる。
これはもうサービスというよりもズルかもしれないと心配になるレベルではないだろうか。


「古語辞典」なので、当然辞典として活用することもできる。
漫画やゲームなどで見かける、なんとなくわかるようなわからないような言葉の本当の意味や元ネタを調べるのにちょうどよかろう。
(受験にはちょっと不向きかもだけど)
各種創作のヒントや参考にもなるようにおもう。

ただ、パラパラと眺めるだけでも、その美しさ、奥深さを充分に味わうことができる。(わたしはちょっと震えたし、なんなら感極まって少し泣いた)
用例文の数々もグッとくる。

ひとつひとつの単語がアンティークのアクセサリーや宝石のようで、1個1個を手に取って、矯めつ眇めつ眺めて、手触りを確かめて、味わってみたくなる。

多くの、大昔の日本人たちがずっと大事にしてきた言葉の欠片が、こうして現代の我々にきちんと響く奇跡が愛おしい。
言葉の力と、人のこころの普遍性を実感して嬉しくなる。


あいにくと、タイトルの「エモい」がピンとこない人間なので、そこだけ少し残念におもっていたのだが、前書きに答えが書いてあった。

「好きなキャラをエモく表現するために感受性を爆上げしたいから、爆エモな語彙を知りたい」
 二次創作に挑戦してみたいマンガ好き中学生にこう頼まれたことから、この本の企画はスタートしました。

『エモい古語辞典』堀越英美 まえがき

(なるほど、そういう経緯なら納得せざるを得ない!)

件の中学生が爆エモどころでは満足できないような語彙を獲得できているとよいのだけれど、もしできていなくても、この本は改めて日本語にハマる人を増やしてくれる、多くの人の宝物になってもおかしくないものになっているとおもう。いい依頼をありがとうと言いたいし、本にしてくださった全ての関係者に勝手に感謝しよう。

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