見出し画像

土井ヶ浜遺跡で観た彗星

次に見えるのは六千八百年後

                狭間 孝


深夜に双眼鏡で南の空を探した

双眼鏡のピントを合わせて

くっきりと見えた彗星はハレー彗星だった

淡路島阿万吹上浜で職場の同僚三人で

海からの風が寒かった


解体した僕が生まれた阿万下町

実家のベランダで

この時は彗星が明るくて

西の空に見えていたのは

ヘール・ボップ彗星は


新型コロナ感染症が流行した二〇二〇年三月に

発見された彗星は

六月の梅雨時 太陽に近づき輝くという

今度はカメラで撮ってみたい!

夜明け前の北東の空は雲が晴れず撮れなかった


山口県下関市豊北町の叔母の家は

満州からの引き揚げ住宅で

弥生人のお墓だった土井ヶ浜遺跡の中にある

高齢の叔母が退院したというので

見舞いに行くこととなり


土井ヶ浜の弥生人墓地の上で

星座が分からないくらいの無数の星と

銀河を観ながら 

三〇秒後 カメラの液晶モニターに

尾を引いた彗星がくっきりと映し出された


北西に輝く北斗七星を見つけたら

その下 地上に近い空あたりに

レンズはワイド広角で

一眼レフの感度はISO一五〇〇〇

シャッタースピード三〇秒 絞りは開放


遠い昔 まだ遺跡が保護されていない頃

石で囲まれた弥生人の棺の中に寝転んで

銀河を眺めたことがあった

記憶の底で銀河の光の中へ吸い込まれていくようなそんな感覚になったことを思い出した


彗星が次に地球に来るのは六千八百年後

何とも思いも及ばない

一〇年先の未来さえわからないのだが

その時 人類は核を

戦争を克服しているだろうか


南天の赤い実とカマキリ
淡路島鮎屋ダムの秋

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?