【書評】億を稼ぐ勉強法
雑感
全体的には良くある自己啓発本の内容ではあるが、著者の経験とそれによる成長が書かれているので、対象読者には刺激になる一冊だと思う。
そして、この本の対象読者は、私が思うに「過去の著者」だ。過去の自分(著者)に向けた指南書のようなもので、「なぜ成功しないのか?それは○○だからだ。こうすれば上手くいく」といった内容になっている。
では、過去の著者とはどんな人物か。本書で度々出てくるキーワードとして「知識メタボ」というものがある。勉強して知識だけは膨大にあるが、結果が出せない状態のことである。
かつて自分が「知識メタボ」だった時に、強いコンプレックスを感じており、同じような状態になってしまっている人に向けてアドバイスしているような印象を受ける。勉強してるけど、結果が出せない、収入増えない、と感じている人には参考になると思う。
個人的に気になったところ
さて、ここからは、個人的に気になったところについて、私の意見を交えて紹介したい。
あなたがYouTubeを見ている時、メディアの広告収入のために「タダで働いている」という見方もできます。
これは、「なるほど」と思った。消費する側か生産する側か、といった話は良くあるが、消費を「タダ働き」とまでするのは過激だが面白い。
というのも、例えば娯楽であれば、通常その対価としてサービス料を払うものである。メディアのビジネスモデルがBtoBtoCで広告収入になっていることで、消費者は無料でそのサービスを受けられるという仕組みになっている。消費者はサービス料を支払わない代わりに、視聴する広告を見たりすることでサービス提供者に間接的に対価を払っているのだ。なので、対価を支払っているのであって、決してタダ働きされているわけではない。
しかし、そういう表現をすることで、ハッとなり真剣に考える人も多いと思われるので、有効な手段であると思う。
結果にコミットする時に、やり方はわからなくていい
プレイヤー、マネージャー、経営者を経験しているが、これはその通りだ。結果を出す人は、例外なくこのマインドで、ゴールと方針を決めるフェーズとそれを実行するフェーズは、思考を分離している。ゴールと方針を決める時に具体的なやり方を考えていては小さくまとまってしまう。
これまで見てきた経験だと、「やり方」を気にするのは技術系が多い。これは、実際に実行する時に手を動かすのが自分たちであるため、実現出来なかった時に責任を問われるのを恐れているように思う。だが、そのマインドでは、今持っているスキルやノウハウで出来ることしか実現する気は無い、ということであり、大きな成長は見込めない。ゴールと方針を決めて、そこから試行錯誤して何としてでも実現するように動いたほうが良い。
また、「やり方」を気にする人は、「最初に決めた事を最後まで変更せずにやらなければならない」という思い込みが激しいのも特徴だ。神にでも誓っているのだろうか。試行錯誤した上で、実現困難であると分かったときや、もっと価値が出せそうなものが見つかった時は、最初に決めた事に固執せず変えれば良い。やりもしないうちに「分かりません、出来ません」では、士気を下げるだけである。
お金を稼げる人と、稼げない人の一番の違いは「仕事のベクトル」です。顧客不在で自分中心の人は、悩みが増え、余計な勉強にお金がかかり、お金は出ていく一方です。
「人は自分のことを考えると悩み、顧客のことを考えると知恵が出る」
お金を稼げる稼げないは、所属している組織にもよるので一概に言えないが、活躍する人/しない人、と見ればその通りである。マーケティング的な表現をすると、「プロダクトアウト」と「マーケットイン」だ。顧客不在で「俺達の考えた最強のサービス」という素晴らしいサービスを作っても、誰も求めていなかったら1円も儲からない。儲からないから悩んで、見当違いな勉強や投資をして・・・と言った形で悪循環に陥る。(本書の話とはズレるが、数億円の調達をして1〜2年で溶かすベンチャーを結構見てきた)
勉強とは・・・顧客価値を高めるためのインプット&アウトプット
成長とは・・・顧客に価値をあたえること
報酬とは・・・顧客価値の対価として受け取るもの
本書で述べてる仕事のベクトルを具体的の考え方で、勉強や成長、報酬に関して、自分中心ではなく、顧客中心で再定義している。
時系列としては、勉強、成長、報酬という順番ではあるが、逆の順番で考えたほうが分かりやすい。
まず、報酬とは、顧客価値の対価として受け取る。つまり顧客価値を出てないものに対して報酬は発生しない。自分が払う側で考えれば当然の事であるが、サラリーマンをやってると意外と忘れてしまう人も多いのが現実だ。「(自分本位で)勉強して成長した(知識が増えた)。自分のスキルでこの給与はおかしい。なので昇給位してください。」というのは、随分と都合の良い話である。「出来ない人ほど給与交渉してくる」というのは、こういう所に原因があるように思う。
報酬を受取るためには、顧客価値を出すのが当然であり、そのために、顧客価値を高めるためのインプットとアウトプットをするのは必須だ。顧客価値を高めるためでないインプットやアウトプットをするのも良いが、それは「(ビジネス的な意味では)勉強ではなく趣味であり、趣味の知識が増えたことで報酬は当然発生しない」と言うのは覚えておいたほうが良いだろう。
おわりに
今回は、億を稼ぐ勉強法 について紹介した。
結論としては、「自分なりに勉強してるけど、結果が出せない、収入増えない」と感じている人にはオススメしたい。努力する方向性が間違っているだけで、それを正せば、億稼げるかどうか別として現状よりは良くなるだろうと思う。
気をつけてほしいのは、本書で紹介されている戦略や方法論は、あくまで著者の体験談であると共にポジショントーク(営業的な狙い)も大いに含まれている。
全てを鵜呑みにせず自身の状況に照らし合わせて、自分に合わせたやり方を考えるた方が良いだろう。
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