回想 vol.2
【変容_1】
そうして迎えた翌年=昨年は、年頭から夏を過ぎるまで、まさに順調そのものであった。
旅館の運営会社も当社も共に何の懸念材料もなく、どちらかというと、自身の馴れが生じることそのものに不安を感じていた。
何かしらの刺激を求めていた。
自分が本厄であることもさすがに意識はしていたが、こんなもんか?程度で忘れかけていた秋、私は事業を1つ手離した。
というより、潰した。
数年の間、当社のドル箱事業であった。
誰もがその名を知っているであろう今をときめく上場企業の子会社を受託元とした事業であり、安定した収益をもたらしていたのだが、私の中の矜持が利益のためだけに頭を垂れ続けることを拒んだ。
あるいは、単純に退屈していたのかもしれない。
詳細は割愛するが、現場を下請けの管理対象として見る体質が許せなかった。とはいえ、これは私の言い分に過ぎない、と後に理解するのだが。。
その当時は、そんな事は思いもよらず、彼らの要求をことごとく撥ね付け、あまつさえ、本社で居並ぶ経営陣を前に噛みついた。
会社の大小で、現場を知らないぶら下がり達がモノを言うな、その正義だけが私を動かしていた。
やはり、大手お決まりの法務部がなんだ、という話になりはしたが、結果としては契約更新の解除。自動更新はしませんよというもので、さらにお優しいことに意思表示期限の更にひと月も前にその通達を頂戴した。
果たして、その日から会社の存続、吐いた唾の正当化を懸けた奔走が始まった。
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