半径1kmの旅:水戸市常陸青柳駅
♪ 知らない町を 歩いてみたい
という歌がある。昔は「どこか遠くへ行きたい」と思ったこともあったが、今はなんだか落ち着いてしまった。
だが、知らない道をぶらぶら一人で散策するのは好きだ。
「途中下車の旅」にも憧れる。電車に乗って、気が向いたらふらっと降りて、面白いもの、美味しいものと出会いながら、その土地をゆったりと味わう。ステキだ。
とは言え、いきなり遠くに行くのもハードルが高いので、まずは地元茨城から旅をしてみたい。
テーマは「半径1kmの旅」。
駅などから、半径1kmの範囲をぶらぶら散歩しながら、その町の魅力を探してみよう。
茨城は車社会なので、車で通ったことがある道はたくさんあるが、歩いたことがある道は意外と少ない。新たな魅力が再発見できる予感。
記念すべき第1回目の旅は、県庁所在地の水戸市。
本来はどーんと水戸駅と行きたいところだが、他の記事でも書いているように私は大のヘタレなので、いきなり水戸駅はキツイ。膨大な再発見がありそうなのだ。
ほどほど。ほどほどのあたりがいい。
ということで、水戸駅から水郡線で一駅の常陸青柳駅をスタート地点に決めた。
途中下車の旅にも憧れるが、地元なので、この日は車で常陸青柳駅まで行った。
駐車場があったが、月極と書いてあったので停めるわけにはいかず、南西にある水戸市青柳公園へ移動。
気を取り直して、11時過ぎに公園からスタートを切る。
さあ、どんな出会いが待っているだろうか。
公園の裏は土手になっていて、那珂川の河川敷にサッカー場があった。
ホーリーピッチというらしい。水戸ホーリーホックの練習場とのことだが、この日はやっていなかった。
土手沿いを歩いて大通りに出る。水府橋を渡れば、もう水戸駅周辺だ。
那珂川を見ようかと思ったが、ホーリーピッチを見る限りけっこう遠そうなのでやめた。
大通り沿いに北上すると、そそられる看板を発見。
「直火焼自家焙煎珈琲」。「じか」が二つもついている。これはすごそうだ。絶対にこだわっている。
しかし、私は珈琲の違いがわからない男なのだ。酸っぱいか酸っぱくないかくらいしかわからない。
なので、あまりこだわってる珈琲は申し訳なくて飲めない。
ヘロヘロに疲れていたら休みたくて入っただろうが、旅はまだ始まったばかりだし、これから昼食だ。
気にはなるが、今回はスルーさせていただいた。
ぐるんぱさんを過ぎて、でっかいハローワーク正面の細い路地に入る。
あらかじめ目をつけていた昼食場所に向かう。
あてもない旅も楽しいが、やはりある程度下調べした方が安心なので、いくつか目的地は設定している。
路地を抜けて、那珂川沿いの土手の下を進む。こんな所にレストランがあるのか? と疑いながら進むと、唐突に店が登場した。
第一の目的地、ハワイ料理のお店「PAIAshore(パイアショア)」さん。
何を食べようとかは決めていなかった。そもそもハワイ料理をあまりたべたことがないので、何でも良かったのだ。
メニューを見ると、明らかに気になる料理があった。
「ショウユチキン」だ。
店員さんに聞いたら、これもハワイ料理らしい。ソウルフードとのこと。
ここは思い切って、ショウユチキンを注文。ドリンクはなんだか体に良さそうなアサイージュース。それと、ハウピアという聞いたことのないデザートを注文した。
正直に言って、大当たりだった。
アサイージュースはすっきりした甘さ。最初は後味が気になったが、慣れてくると全く気にならない。
セットのサラダもしっとりタイプのポテサラが付いて嬉しい。
ポタージュはコーンではないし、なんだろう? じゃがいもかな? わからんけど美味い。
そしてメインのショウユチキン。スプーンで押すだけでほぐれる柔らかさ! 甘辛いタレがまた美味い。タレ付いたライスもまた美味い。
最終的にはチキンをほぐしてライスに混ぜて食べたらまあ美味い。
デザートのハウピアもココナッツミルク寒天みたいな感じだが、とにかく密度が濃い。ずっしりしている。フルーツのソースも美味い。
大満足で店を後にした。
安くて美味しいのに、私の他に客はいなかった。まあ平日だしな。
さて、来た道を少し戻り、別の路地を通って大通りに戻る。
晴れて、気温が高くなってきた。腹いっぱいだし、ちょっとキツイ。
ダラダラ歩いていると、武道具の店を発見。
武具店と聞くと、RPG好きの血が騒ぐが、おそらく剣道用品だろう。
看板に宮本武蔵っぽいキャラが描かれていて、そこに「つよいムサシ」とある。
弱いムサシがいるなら強いムサシもわかるが、私は強いムサシしか知らない。「強井」という苗字なのかも。
つよいムサシを過ぎると、また面白そうな店を発見。
なんと、仏具店と多国籍物産店が一緒になっている。
仏具店はやっているようだが、多国籍物産店は休みだった。残念。
こういう出会いがあるから、知らない町散歩は楽しい。
大通りをさらに進むと、そろそろ駅からほぼ東に1km地点だった。
フラミンゴのいるレストラン「メヒコ」の看板が見える。メヒコも美味しいが、今は食べられない。
ちなみに、絶対に1km圏内じゃないとダメ! ではなく、ちょっと過ぎるくらいなら、行きたければ行っていい、という緩いルール。
メヒコの看板を横目に、北に入る路地を曲がる。
少し進むと、小さなお地蔵さんのお堂があった。
十王堂地蔵尊、というらしい。せっかくなのでお参りしていこう。
お堂の中にお地蔵さんが数体と、賽銭箱がある。格子にちょっと手を突っ込んで、十円玉を投げ込んだ。
流石に中を撮影するのは憚られたので、外観だけ取らせてもらいますね、と心の中で呟いた。
気温もさらに高くなり、お堂を後にする時に「あー、暑い」と言ったのを、すぐ側の民家の人に聞かれてしまっていた。
さて、第二の目的地である、たまご直売所に向かうため、道を曲がりながら、何となく北西へと向かう。
住宅地から田んぼへ抜ける道に、ジブリっぽいこんもりした森を背負った神社があった。
これは興味深い。ちなみに私は信心深いわけではないが、神社仏閣などの雰囲気は嫌いではない。
赤城鹿島神社。こちらも小さいながら立派な参道がある。
杉の木の根元には、ひたちなか市の文字があった。いつの間にか水戸市からひたちなか市に入っていたらしい。
せっかくなので、ここでもお参りする。また十円玉。五円がなかったからだ。その時はなんとも思わなかったが、こう書くと「ご縁がない」みたいでちょっと嫌だ。
見かける度に寄ってしまうのなら、今度は五円玉をストックしておこう。
神社の周りは田んぼが広がっていて、作業をしている方もいた。
細い道を農機具を載せてきたと思われるトラックが塞いでいる。車だったら通れなかった。歩きで良かった。
田んぼ道を抜けて大通りに出ると、ファンキーな水戸黄門がいる。
車で何度か来た事がある「お酒の遊園地イシカワ」さんである。
暑かったので、吸い込まれるように店内へ。
私は下戸なのでお酒には興味がないが、おつまみには興味がある。
見たこともないお菓子がたくさん売っていた。
しかし、今は徒歩である。買い込むわけにはいかない。
お茶だけ買って店を後にし、この旅が終わったら、帰りに車でまた来ようと決めた。
散歩旅は楽しいが、荷物を増やせないのがたまにキズ。
すぐ隣にある焼肉屋「風林」さんも気になる。夜営業のみだなので、今度来てみよう。
午後1時をまわり、暑さもさらに厳しくなった。
疲れも出て、けっこうヘロヘロだ。
目的地の卵直売所はイシカワさんからひたすらまっすぐ歩く。
水戸市地方公設卸売市場の看板が見える頃、第二の目的地の卵直売所に着いた。
その名も「たまgo市場」。
プレハブの店内に入ると、うすうす気づいてはいたが、無人だった。
たまごが3パックで1,000円。けっこういい卵らしい。
しかし、徒歩である。買えない。
なぜ私はここを目的地に設定したのだろう。
しかも、今は家に卵がたくさんあるので、帰りに車で寄って買うわけにもいかない。
仕方ないので卵かけごはんのタレ(200円)だけ買って、店を出た。
目的地設定は大事だ。
でもきっとおいしい卵だろう。機会があれば今度買ってみよう。
さあ、帰り道である。
卵屋さんは常陸青柳駅からほぼ北に1km地点なので、がっつり歩くことになる。
果てしない田んぼ道をひたすらまっすぐ歩いていく。
遠くに水戸の市街地が広がるのが見える。なかなか素敵な景色かもしれないが、それどころではないくらいヘロヘロだった。
ようやく駅に着くと、ちょうど良く電車が来た。
撮り鉄ではないが(そもそも鉄でもないが)、思わず撮影。
水郡線は水戸から郡山市まで続く歴史ある路線だが、車社会なので私は乗ったことがない。
二両編成のかわいい車体。ちょっと乗ってみたくなった。
調べてみると郡山まで3時間半かかる。ちょっと乗るだけにしておこう。
駅に着いて、ゴール! ではない。
じつはもう一つ、目的地がある。
駅近くの横道から住宅街に入り、しばらく進むとかわいらしい洋菓子店「ル・シトロン」さんがあった。
ここも来たことがないお店。近いのに、知らないことがたくさんある。
ショーケースには5,6種類のケーキの名前が書かれていたが、残っていたのは三種類だった。もしや、かなりの人気店なのか。
小ぶりなエクレアと小ぶりなシュークリーム、パウンドケーキを二種類購入した。
すぐ近くに公園があった。
もうここで食べてしまいたいくらい疲れていたが、不審者で通報されそうだったので車まで我慢。
やっとのことで公園に戻り、一目散に車へ。
日光で車内が高温になっていたので、窓を開けながら冷房をフル稼働させて熱気を追い出す。
スマホを取り出し、歩数を確認すると、11,780歩、7.2km歩いていた。
半径1kmでも、こんなに歩くのか……。自転車旅にしようかな……。
かかった時間はほぼ三時間だった。
喉を潤し、一息ついたところで、早速エクレアとシュークリームをいただく。
エクレアはチョコがトロ―リ。流れそうで流れない絶妙な固さ。そして濃さ。すっきりとした味わいのクリームと、サクサクの皮とのバランスがいい。
シュークリームのカスタードも濃い! シュー皮の底面が特にサクサクで甘くてうまい。
これはあたりだ。よい店を見つけてしまった。
糖分を補給し終えて、車で「イシカワ」さんに向かう。
まっすぐにお菓子コーナーで気になっていたお菓子をカゴに入れていく。
先ほどは疲れていたのか、店内のBGMに全く気付かなかったが、なんとイシカワさんのオリジナルソングだった!
♪ イシカ~ワ~⤵ イシカ~ワ~⤴
「つまみを買い込んで飲もう」みたいな内容だった気がする。ちんすこう、って聞こえたが、本当に歌詞にありそう。曲も歌もイイ感じでヤバイ。
「心地よい疲れ」と言いたいところだが、実際は「ガッタガタ」である。
まあ、最初の試みで到達できるはずもない。
だが、繰り返していくうちに、7kmくらいどうってことはなくなるはずだ。
体も心も健康になる予感しかない。これは良い趣味を見つけた。
思っていた以上に楽しかった。
つぎはどの駅からスタートしようか。
どんなものに出会えるだろうか。
もうそんなことを考えている。
旅に出よう。
おまけ