【メビウスの迷宮・制作記録②】システム設計編
今回は本作の各システムの設計について語る記事です。
カードバトルそのものの設計は比較的早くから固まりましたが、それ以外のシステムは紆余曲折あって今の形になりました。そのような背景を含め、各システムの設計について語っていきたいと思います。
一部、設計とは関係ないコラムのようなものもありますが、ここは作者の自由帳なので好きなように語ります。
探索
基本的な流れ
本作はランダムに出現するイベントを選んでいくことで進行する。イベントは3つの中から選ぶ形式。
イベントの数はあらかじめ決められており、画面右上のアイコン上に表示されている。
イベントを選択すると探索度が増えていき、それが10に達した時、そのエリアのボスが出現する。
ボスを撃破した時点で強制的に次のエリアへ進む仕様。
SPやアイテムの入手などを考えるとなるべくイベントを消化していく方が望ましいが、デッキの構築状況や残りのHPによっては戦闘を回避したいケースもあると考え、すべてのイベントを消化しなくてもボスに挑める仕様とした。
戦闘
敵との戦闘。戦闘終了後は報酬としてカードとSPを獲得できる。
敵の種類はザコと強敵に分かれている。
強敵は文字通り強いので戦力が整ってない状態で挑むのは危険だが、報酬のSPは3と高く設定されてるため、キャラ育成を考慮するとスルーはできない塩梅になっている。
祭壇
スキル習得またはカード削除が行える。両者は同時に行うことは出来ない。
スキルの習得(スキルツリー)についてはテーマが深いため、詳細は記事の後半で語る。
初期カードの「アタック」と「ガード」の性能は控えめであるため、なるべく削除したいところだが、スキルの効果も大きいのでどちらを優先するかは人によってプレイスタイルが反映されやすい。
このあたりは意識的にそうなるようデザインした。
ちなみに初期カードの性能は控えめと述べたが、強化(※)するとそれなりに使える性能にしている。
※厳密には強化スキルの習得
削除前提のカードというのはプレイヤー側にも作者にも面白くないので、初期カードの性能は「ありすぎても邪魔だが、強化すればそこそこ使える」程度の性能にした。
妖精の店
所持金を対価にカードとアイテム、またカードの削除が行える。
後半エリアに行くほどレアリティの高いカードがお店に並ぶため、レアなカードが欲しい場合はなるべくお金を溜めておいたほうがよかったりする。
カード削除は実行するたびに価格が跳ね上がる仕様。
デッキ圧縮を簡単にできるようにしてしまうと極端なバランスになってしまうので、1プレイあたり多くても3回程度になるようにした。
お店のラインナップ更新機能はアップデートで追加した機能。最初から実装するつもりだったのだが、なんか忘れてました☆
アイテム
3つまで持てる消費アイテム。
制作初期は未実装だったが、テストプレイをする内に事故が頻発したので、万が一の保険や戦略の幅を持たせるために実装した。使い切りだがいざという時に役立つので、出し惜しみせずここぞという時に使おう。
入手機会は宝箱イベントとショップのみでゲーム全体を通して取得できる数はあまり多くはない。作者がバランス調整をする際は、基本的にアイテムを使わずクリアできるよう、頑張って縛りプレイをしながらテストプレイしていた。
調整に関しては若干甘いと感じてるところもあり、アイテムの種類が少ないのと下位互換の性能となっているアイテムが一部存在する(※)。
※一応ショップ価格は低めに設定してるが、入手機会がそもそも少ないので取るメリットは薄い。
良い改善案が思い浮かばず今の形となっているが、もし調整をするならアイテムというシステムそのものを改善する必要があると考えている(いっそ消費アイテムではなく、任意発動できるスキルにするとか)。
休息
HPの回復 or SPの取得ができる。
難易度BASICだと通過するだけで自動的にHPが回復する仕様のため、ゲーム初心者にも優しい。
本作のSPは非常に重要なので、回復よりもSP獲得を優先したいところ。
実質SP獲得1択みたいな感じになっていたので(まあ本家StSもそんなバランスだが)、もうすこし改善の余地があったかもしれない。
イベントシャッフル
テスターからの要望で追加した機能。
金を払うと表示されているイベントを入れ替えることができる。
ゲーム序盤なら事故ってもすぐやり直せるが、後半に事故が起こると非常にツライ。そのためのリカバリー手段として本機能を実装した。
スキルツリー
本作の重要なシステムのひとつ。
スキルの効果は非常に高く、習得するだけでキャラクターの使用感が激変するため、習得のタイミングはとても重要。
習得できるスキルはキャラクターによってバラバラだが、上中段が攻撃、下段が補助寄りのスキルになっている。
スキルの習得にはSP(スキルポイント)が必要で、1プレイで取得できるSPには限りがあるため、ツリーすべてのスキルを習得できない。
イベント消化具合にもよるが、1プレイあたりで習得可能スキルはツリー1本すべて+ 他ツリーの8割くらいになる。
本作の大多数のカードはスキルとの相性を前提に設計しているため、デッキの方向性を考えつつ、どのスキルツリーを習得していくかが本作の肝となっている。
スキルツリー方式を採用した理由を説明する前に、作者自身このシステムに思うところがあるので、作者なりの考えを述べた上で語らせてほしい。
スキルツリーというシステム
実はスキルツリーというシステム、作者はちょっと苦手だったりする。
苦手な理由を説明したいところだが、スキルツリーが好きな人も多いと思うので、まずは一旦このシステムの良さについて自分なりに考察してみる(予防線)。
自分の好きなようにキャラクターを育成でき、戦略に幅が生まれる。
育成方針を考える面白さがある。
「こんなスキルを覚えるのか〜」といったワクワク感を提供できる。
もう少しこれら点について深堀りしてもいいが、コラムの主旨から外れるので省略。
では、自分がスキルツリーが苦手な理由について述べる。
スキルの振り直しがめんどうくさい
スキルの説明文だけだと有効性が把握できず、スキルを取る判断が難しい
1については文章の通りで、覚えたスキルをわざわざリセットするのは非常に手間。ゲームによってはスキルの振り直しにペナルティが付けられているケースもあり、非常にめんどうくさい。
バランスを考慮してそのような設計をしているのは理解できるが、スキルの習得に制限を設けたいのであれば、スキルスロットのような形にして、サッと変えられるようにしてほしいのが本音。
2は文章だけだとわかりにくいので具体例を挙げる。
例えば炎属性を習得するツリーがあったとして、はたして炎属性がこの先有効なのかどうかは判断できない。
つまり、育成方針を立てるにしても判断材料が無い状態だとどのようにSPを割り振ればいいのか困るという話である。
(ついでに言うと、実際に使ってみないと有用性がわからないケースもよくあるので、やはり説明文だけで判断するのは難しいと考える)
…とイロイロ文句を垂れたが、自身のRPG感を頼りに育成方針を考える面白さも理解しているので、全てを否定しているのではない。しかし、その方針が間違ってた時にやり直しが発生すると非常に面倒くさいことになるのだ。
結局のところ、スキルの振り直しがストレスという話に行き着く。
じゃあなんでスキルツリー方式を採用したのさ
スキルツリーを採用した理由はキャラビルドをプレイヤー自身で行えるようにするためである。
前記事でも語ったが、本作はゲーム展開をプレイヤー自身で制御できる作りにしたかったため、キャラの育成方針を決められるこのシステムは理にかなっていた。
アンチみたいな論調で語ったが、スキルツリーのあるゲームが嫌いな訳では無い(世界樹の迷宮とか)。
苦手な理由はシステムがマイナス方向に作用しているゲームをよく見かけるからであって、システムに欠陥があるとは考えていない。
スキルの振り直し問題
長々と語ったが、本作は先に述べた不満点はクリアしていると考えている。
本作はローグライト形式であるため、ゲームをリトライするときは、ゲームそのものがやり直しになる。よって、スキルの振り直しというシチューエーション自体が存在しない。
まとめると、スキルの振り直しが面倒ならスキルの振り直しが発生しなくてもいいようにゲームを作ろうという、非常にシンプルな話でした。
エネミー設計
わりと大きめのテーマだが、本作の敵はそこまで凝った作りではないのでポイントを絞って説明する。
行動パターン
敵の行動パターンは固定で、ランダム行動をする敵はほぼ皆無。
人によってはランダム要素があったほうがいいという声もあるだろうが、ぶっちゃけ好みの問題なので固定にした。
とはいえ敵の行動のバリエーションが少ないのも味気ないので、1ターンに複数回行動する仕様にした。
※ 一部キャラは敵の攻撃をキャンセルする強力な行動ができるため、そのような戦法をメタるために複数攻撃を行う敵を登場させている。
行動サイクル
基本的には 攻撃→攻撃→ 防御 のような行動サイクルになっており、特殊なギミックを持つ敵は少ない。
凝ったギミックの敵が存在しない理由は、単に思いつかなかったからカードゲームという性質上ランダムに手札が配られるので、それに合わせて臨機応変に行動するのが難しいと考えたからである。
デバフ解除
本作はデバフを無効化する敵が存在しない代わり、ほとんどのボスおよび一部のザコはデバフ解除を持っている。
本作のデバフはあまり強くない(出血除いて)と感じる人は多かったと思うが、その理由はだいたいデバフ解除のせい。
この仕様は賛否が激しかったが、デバフだけで戦う戦法は作者としてはあまり推奨したくなかったのでこのような調整にした。
まとめ
今回はゲーム全体の設計の考え方について述べた。
これまで述べてきたシステムはランダム要素を持ちつつも振れ幅が少ないため、プレイするたびに展開が大きく変わるケースは少ない。
これはローグライト作品の特徴からは大きく外れている。
毎回展開が同じというのはマンネリ化を招くというデメリットはあるが、逆に言えばリトライ性が高く、プレイヤーからすれば攻略は容易になる。
本作に関して、「もう少し色んなランダム要素が欲しかった」という意見も頂いているが、遊びやすさ・手軽さを優先したため、今の形になっている。
もう少し制作の余裕があればランダムイベントみたいな要素も実装できたかもしれないが、そのあたりは妥協した。
この『メビウスの迷宮』というゲームはランダム要素が嫌いな人間がローグライトを制作したらどうなるのか、というテーマを含んでいるのかもしれません。
今回の記事は以上です。
次回はキャラクター設計について語ります。
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