【イリスのゲーム・制作記録④】キャラクターについて語る
キャラづくりはゲーム制作において特に楽しい部分ですよね。ここに力を入れるゲーム制作者の方も多いと思います。私もそんな一人です。
本作は登場人物それぞれにドラマがあり、背景から性能までこだわってキャラクターを作りました。
そんなわけで、本作のシナリオの核とも言えるキャラクターについて語っていきます。「キャラを作る時こんな事を考えてました」という視点での内容になっています。
※あんまり設定周りについては触れていません
キャラクターを語る都合上、わりとネタバレがあります。あと長いです。
枠を当てはめて考える
キャラクターをイチから作るのはなかなか難しい。自由な発想は大切だが、奇をてらったキャラクターを作るのはセンスが要る。
自分が作ろうとしているのはRPGだ。ならばRPGありきでキャラクターをデザインする方がストーリーも作りやすいだろう。
…ということで、キャラ作りにおいては先に役職を考え、それに当てはめる様にキャラクターを作っていった。
あまり大勢のキャラを作ると作業量的に大変だし、かといって固定メンバーというのもちょっと味気ない。
じゃあとりあえずキャラは6人くらいにしよう。
そんな訳で、よくある王道ファンタジー風な世界観を考慮しつつ考えたジョブは以下6枠。
・勇者
・僧侶
・騎士
・盗賊
・魔法使い
・自由枠
自由枠というのは、既存のジョブに縛られず自由な発想でキャラクターを作ろう、というモノである。
全員が型にはまったキャラでは面白くない。個性が際立つキャラが混じればゲームに意外性を持たせられるだろう、という発想である(※)。
※ついでに自分の趣味を詰め込んでもいい
大枠が決まったところで、各キャラクターについて語っていく。
グラム(勇者枠)
RPGの王道ジョブといえば勇者でしょ、という感じで作ったキャラ。
デザインもまんまツクールMVの勇者のグラフィックとほぼ同じなので、製作コストが非常に少なく、作者的にはありがたい奴だった。
彼の正体は勇者という設定を逆手に取ったもの。王道な肩書と相反するストーリーで本作のダークな側面を演出した。
それぞれのストーリーによって好青年風な姿と冷酷な戦士、全く異なる姿を見せる点はけっこう気に入っている。
コンセプト:万能系アタッカー
ゲーム初心者向けにデザインしたキャラクター。
攻撃・回復・補助すべてをこなす幅広い立ち回りができ、勇者の肩書に相応しい活躍を見せてくれる。
誰が使っても扱いやすいキャラとするべく、どの技もクセが無く、序盤から終盤まで頼りになるような性能を目指した。
妨害スキルとして優秀な攻撃デバフ・麻痺・暗闇の3種を扱えるのは非常に心強い。
ゲームが得意な人ほどこの手のタイプは器用貧乏という評価を下しやすいので、ヒネた性格の作者はこういうタイプこそ強くしたくなるんだ★
ステータスは高水準にまとまっているが、強力なスキルには使用条件を設けた。そのため肝心な時に役に立たずという状況がままある。
このような逆主人公補正みたいな性能は、本編のシナリオを読んでくれた方ならなんとなく察してくれるかと思う。
エルフィ(僧侶枠)
回復してくれるピンクのお姉さんが欲しくて作ったキャラ。
制作初期は影が薄かったので色々と設定をつけ足していったら、当初の想像をはるかに超えて背景が重くなってしまった。
複雑な背景ゆえシナリオにはだいぶ苦労したが、感情が変わりやすいので書いていて楽しかったキャラ。普段は落ち着きのある女性といった雰囲気だが、師匠と一緒の時では素に戻るのが好き。
追想ラストの変貌ぶりには驚かれたかもしれないが、色々と不幸が重なったゆえの結果であり、本来は茶目っ気のある優しいお姉さんなのですよ…
コンセプト:色々できるヒーラー
グラムと同様、初心者向けにデザインしたキャラクター。
回復・治療・予防・蘇生といった、ヒーラーとして求められるスキルは一通り習得する。
とはいえ単なるヒーラーでは活躍の場が限定化されてしまうため、自己バフを利用した行動順の調整や回避パッシブスキルなど、初心者から上級者まで幅広く楽しめるような性能を意識した。
「色々できる」とはこういう意味である(きみ本当にヒーラー?)。
回復技が強すぎると戦闘に緊張感が無くなってしまうため、回復量やCT(WT)の調整には難儀した。サブスキルより多めの回復量とやや長いCTを設けることで性能の差別化を図っている。
実のところ、初期は純粋なヒーラーにするつもりだったのだが、ストーリーが重くなったせいで攻撃的なスキルが増えた。
ストーリーがキャラ性能に影響する、というわかりやすい事例。
オスカー(騎士枠)
かっちょいい鎧マンがつくりたくてデザインしたキャラ。
当初は寡黙だが頼れる兄貴のようなイメージだったが、作中では色んな女性に振り回されている苦労人。こいつの周りの女やべーやつしかいねえな。
設定上の戦闘力は高いはずなのだが、作中はイマイチ見せ場がなかったり台詞回しがポエマー臭かったり、妙なキャラ立ちになってしまった。すまない
鎧のデザインの資料集めや元のグラフィックがでかすぎて画像サイズを調整する羽目になったりと、作者的には色んな意味で手間をかけさせられた奴。
グラフィック規格は大きめに作ったほうがいいという教訓を彼から得た。
コンセプト:タンク役
見た目通り持久戦に特化したキャラ。
HPと防御が高いので、オスカーだけ生き残っていたなんてのもザラ。彼が居ると戦闘の安定感がまるで違うので、苦戦している人は彼を採用してあげてください。
耐久力を活かした盾役の役割が主だが、攻撃デバフや睡眠攻撃による妨害、防御力を武器にした攻撃など、いぶし銀な活躍ができる漢。
制作初期は耐久力が高すぎて終盤の調整作業では一番ナーフがかかっている。特にアースウォール(状態異常/能力低下無効)はWTが無しという恐ろしい性能だった。
ナーフしても相変わらず硬かったので、オスカー殺しみたいな技を使ってくる敵が増えた。許せ。
実は彼のスキル「鎧打ち」は防御依存ダメージなのでイリスのスキル「フェアリィダスト」の脱力効果(攻撃80%低下)を無視して攻撃できます。自力で気付いた人はえらい。
ユエ(盗賊枠)
盗賊といえばアサシンだ! アサシンといえばメイドだ! というノリで作ったキャラ。
掴みどころが無さすぎる性格のせいで、何を考えて喋っているのか作者自身もよくわかっていない。
平時と戦闘時のギャップが激しいのは本人が仕事モードのオンオフを切り替えてるからです(本人も楽しんでるフシがある)。
グラムとはキリングマシーンという共通点はあるものの、そのあり方の違いはあらゆる意味で対照的。追想ラストの彼らの結末はなんとも因果なものである。
コンセプト:スピード系アタッカー
攻撃は最大の防御が基本スタイル。スピードキャラの例に漏れず耐久性は低いが、終盤に習得する回避スキルで多少補える。
本作における敏捷の重要度は高く、攻撃・妨害・サブスキルを使用した補助など、その運用は多岐にわたる。
高い敏捷と補助の優秀さを引き換えに、他のアタッカーよりやや火力を下げた。ゆえに戦術を意識した運用を求められるので、やや上級者向けの性能となっている。
全体攻撃デバフの氷恋華が便利すぎたので、敵にカウンター技を実装するきっかけとなったキャラ。
強力なスキルを作ってから敵の性能を見直すという手法は、尖った部分を残しつつバランスを取れるので、なかなか悪くないと思う。
ハイン(魔法使い枠)
いつも上から目線で第一印象最悪だけど、実はいい人…みたいなツンデレキャラが欲しいよね…! という感じで出来上がったキャラ。
初期はもっと嫌な奴になる予定だったが、師匠設定ができてから普通にいい人っぽくなった。
世捨て人な割にはほぼすべてのキャラに何らかの形で関わってるので、けっこうおいしい役割を貰っている。なんだかんだ裏で仕事してる人なのです。
エルフィとの関係が作者的にはけっこう気に入っていたりするのだが、本編中の会話が全く無いせいで、設定をあまり活かせなかったのがやや心残り。
コンセプト:デバフ特化キャラ
魔法使いといえば多彩な属性攻撃を行う後衛ポジションが一般的と思われるが、本ゲームに属性は存在しないので、デバフと状態異常に特化したキャラクターとなった。
世界樹の迷宮シリーズ(※)でいう所のカースメーカーに近い。
※アトラス社開発のダンジョンRPG。本作に強い影響を与えている
敵の攻撃が激しいこのゲームにおいて、全体状態異常を付与できる彼の重要度は非常に高い…のだが、実際に使ってみないと彼の真価が分かりにくい。
敏捷の高さ、ロス・ニゲル(全体敏捷低下)、ベリアルアイ(全体恐怖付与)の強さに気づくかがポイント。長く付き合わないと彼の良さがわかりにくいのは本人の性格と同様である。
攻撃力もそこそこあるため、様々な役割を担うことが出来る。クセの強さと戦術の多様性は、ユエよりも上級者向けの性能であるといえよう。
リンドリント(自由枠)
かわいい。ほぼ趣味だけでつくったキャラ。
こういう趣味全開のキャラを作ると創作のモチベーションを上げることができるので、ゲームを作ろうとしている方には是非ともオススメしたい。
ゲーム全体の雰囲気がダークなので、一人くらいゆるいキャラ(?)が欲しかったのでこういう性格に。でも本編中に暴れまくったおかげで、勇者パーティに討伐されてしまいました。ごめんね。
彼女の設定は本編中でもよくわからない扱いになっているが、作者もよくわかってないのであまり気にしないほうがよいです。
コンセプト:重量級アタッカー
最大ダメージの追及は浪漫である。つまりロマン砲を撃ちたい人向けのキャラ。
ほぼ全てのスキルにCT/WTが設けられている代わりに一発のダメージが重い。スロースターターな性能は、ユエと真逆のコンセプトとなっている。
火力で敵を蹂躙する楽しさや、文字通り桁違いのダメージを叩き出せるので、他のアタッカーにはない魅力があったかと思う。
制作終盤の調整で獄炎槌アグニの性能を少し変え、使用するたびに威力が上昇する性能になったので、より対ボス性能・ロマン性が上がった。
威力は最大6倍まで上昇するのだが、大抵その前に相手が消し炭になっているのが悩み。
弱点はダントツの敏捷の低さ。装備でカバーするか、もしくは行動順の遅さを利用して立ち回るか、プレイヤーの腕が試される。
やや力を持て余しぎみな子ので、うまく手綱を握ってあげよう。
イリス(主人公)
最初に6枠と言ったがあれは嘘だ。
キャラクターをたくさん考えたけど、プレイヤーの分身となる存在がいないじゃん…と思って最後につくったキャラ。
主人公が最後に作られるってどうなんだ、という意見はごもっともですが、本作のシナリオが各キャラのバックストーリーを軸にして語る、という特殊なお話なのでこういう作り方もできるのです。
作り方としては邪道な気がするのでもうやりません(たぶん)。
ちなみに一番最後に作ったキャラなので、ツクール(ゲームエディタ)のデータベース上も一番後ろだったりする。
普段はのほほんとしているが、戦闘中は雰囲気がだいぶ変わったりスキルがけっこう物騒だったりと、二面性が強そうなのが伺える。
彼女の正体が判明するのはゲーム終盤。だが察しの良い人なら仲間キャラクターとの会話でなんとなく気付いたかもしれない。
コンセプト:サポート兼アタッカー
仲間の入れ替えが可能なゲームにおいて、固定キャラの調整を行うのは難しい。既存のキャラと役割が被らず、他を活かすような性能を考えた結果、サポート役をこなせるアタッカーという形に落ち着いた。
ステータスこそ平均的だが、主人公らしく劣勢で真価を発揮する性能を持っている。
攻撃スキルは特定の条件下で威力が上昇する性能が多く目立つ。
これは戦闘が単調にならないようにするための工夫であり、本作を特徴である「パズルチックな戦闘」を印象づけたかったからである。
サポートスキルは強力な反面、デメリットを設けている。リスクを背負いつつも起死回生の一手となる切り札、という主人公らしい性能を意識した。
独自の強みを持つが、本作を象徴する状態異常・デバフ技を一切習得しない。彼女の性能を十分に発揮するためには、仲間との連携が重要である。
まあ、すました顔してるけど、たぶんロクな性格じゃないと思います。
おまけ
ゲーム中では上半身しか表示できてませんでしたが、いちおう全身イラストを描いていました。もったいないので、この場に載せておきます。