【イリスのゲーム・制作記録⑥】各システムについて語る+反省編
いつの間にやらこの制作記録も⑥まできてしまいました。
これまではバトルを中心に語っていきましたが、他のシステムについても語っていきたいと思います。
本作は戦闘がメインのRPGですが、それはあくまでゲームの一要素でしかなく、様々なシステムの組み合わせによってこのゲームは成り立っています。
RPGの華といえばバトル…ですが、その影に隠れてしまいがちな他のシステムにスポットを当てよう、というのが今回のテーマの趣旨です。
各々のシステムについて語りながら反省点をまとめつつ、この制作記録を締めくくろうと思います。
補足:本ゲームはVer 1.00公開(2020/04/18)から大幅にバランス調整を行っており、その際の修正・改善点についても触れていく。
ダンジョンの探索
本作はダンジョン探索(+戦闘)と拠点でのキャラ強化を交互に行っていくのが基本的な流れである。
ダンジョンではシンプルに階段を降りるだけなので、ゲームの進行においてプレイヤーが迷うことはまず無い。
全滅しやすいゲームなので、探索にかかる時間はコンパクトにしたほうがいいと考え、15~30分程度に収まるよう意識して作った。
この辺のプレイサイクルの考え方は世界樹の迷宮シリーズの影響が強い。
【エネミーシンボル】
普段はランダムに行動するが、一定距離まで近づくとプレイヤーを執拗に追いかけてくる。
一度捕捉されるとしばらく離れてくれないので、挟まれたりするとエンカウントの回避は困難。戦闘メインのゲームにするため、ザコ戦が回避しにくいのは意図的にそうしている。
1マップのエンカウントは0〜2回程度に収まるよう調整したつもりだが、運が悪いと頻繁にエンカウントが発生するため辛いと感じるプレイヤーも多かったようだ。
エネミーシンボルが配置される位置は完全ランダムなため、ある程度は仕方ないと割り切った。
【マップ構造】
ダンジョンには障害物が所々配置されており、それを利用することでエネミーシンボルを避けやすくしている。
マップ自体は自動生成ではなく、固定化したマップをランダムに出しているだけなので、そこまでランダム性は無い。
ローグライクっぽさを出すだけなら、わざわざマップの自動生成機能を付ける必要はないだろうと考えそのような仕様とした(ただの横着)。
初期版だと障害物の数が少なく、行き止まり構造のマップが多いことによりエンカウント回避がしにくかったため、バージョンアップでマップ構造の見直しを行っている。
※作者目線だとエネミーを避けるコツはある程度分かっており、こういう部分になかなか気づきにくい
【ドロップアイテム】
ダンジョンを歩いていてなんか寂しいなーと思って最初に実装した機能。
これは実装してから気付いたのだが、アイテムの内容よりアイテムそのものを拾うだけでもなんか嬉しいと感じるので、報酬は細かく区切ってちびちび与えるのも悪くないな…と後になって思った。
【ヒールスポットとポータル】
敵の攻撃が激しいゲームなので、パーティ半壊で戦闘終了することも珍しくない。本作のデスペナルティは軽くないので、ヒールスポットを探すかそれともポータルで撤退するかの意思決定をプレイヤーに迫らせている。
当初ヒールスポットを破壊するという選択肢は無かったのだが、HP満タン時に見つけても嬉しくないよなーと思い、ブチ壊してManaを得るという機能を追加した。
クリア報告を見ると大勢の方が破壊行為に及んでいたので、実装してよかったと感じている。
【転移陣】
ボスフロアにワープできる機能。
テストプレイ版だとボスを倒さないとワープできない仕様だったのだが、難易度の上昇に伴い、ボスフロアに到達した時点でワープ可能な仕様にした。
さらにバージョンアップ後、未起動の転移陣はフキダシで目立つようにしている。これは作者が転移陣を未起動のまま拠点マップへ帰還するという大ポカを何度かやらかしたためである。
作者がやらかすミスは、プレイヤーもやらかすと思われるので、親切機能はあるに越したことはない。
【敵のレベル上昇】
ダンジョンの探索が進むにつれ、敵のパラメータが強化されていくシステム。HP自然回復を狙ってウロウロする、という選択肢を取りにくくさせると共に、探索中の緊張感を高める狙いがある。
敵のパラメータが上昇する事で、1発で倒せていた敵がギリギリ倒せなくなるケースが頻繁に発生する。そのためプレイヤーは常に戦術の最適化を行っていく必要があり、作業ゲーにさせない設計を強く意識している。
キャラクターの強化要素
ここでいう強化要素とは単なるキャラクターのレベルアップだけでなく、装備やスキルを含めた総合的な戦闘力を指す。
【レベルアップとスキル習得】
実は一番ここが悩んだ部分。
キャラクターの強化にはレベルという概念は必ずしも必要ではなく、装備品だけでも実現はできる。
ローグライク風なダンジョンを攻略するスタイルはハクスラタイプのゲームと相性が良く、ダンジョン中に入手した装備アイテムから、キャラクターを強化していくゲームにしても問題は無い。
しかし本作は戦術を重視するゲームであるため、装備アイテムを集めてキャラを強化するハクスラゲーとは少しコンセプトが異なる。装備アイテムを集める事をゲームの中心としてしまうと、ゲームの軸がブレかねない。
色々悩んだが、キャラの強化は「スキルの習得≒戦術の幅を広げる」ことに重きを置くことにし、キャラクターのレベルアップと共にスキルを習得するというシンプルな方式を取った。
(スキルツリー方式も考えたが、プレイヤーに育成方針を立ててもらう負荷が増えてしまうと思ったのでやめた)
とはいえ敵を倒した時の報酬が経験値(Mana)だけでは戦闘のメリットが薄くなってしまうため、敵のドロップアイテムから装備品やサブスキルの習得が出来るようにした。
あまり素材集めに奔走しなくてもいいよう、スキルや装備品に必要な素材数もかなり少なめに設定している。
結果としてハクスラゲーの体裁を取りつつも、パラメータ強化幅が少ないゲームになってしまい、少々ちぐはぐな印象を受ける作りになってしまった。
キャラ強化をプレイヤー側で制御しやすくしつつゲームバランスを取った結果このようなシステムとなったのだが、本音を言うともう少しスマートなやり方があったんじゃないかなーとは思っている。
【習得スキルの可視化】
レベルアップで習得するスキルは事前に見えたほうが育成方針が立てやすくなるだろうと思い、制作終盤に実装した機能。
「このエリアにはXXが弱点の敵が居るからこのスキルを覚えさせよう」といった戦略的な部分だけでなく、「この技は面白そうだから覚えさせたいな」といったキャラクターを育成する楽しみも与えられたかと思う。
ストーリー部分
本作のストーリーはほぼ追憶の間に集約している。
このストーリーを閲覧するタイミングはプレイヤー任意であり、ゲームをクリアするだけならこれらを見る必要は全くない。あまり頻繁にイベントを挟むとゲームのテンポが悪くなるためこのような仕様とした。
作者的にはストーリーもしっかり見てもらいたいという思いはあるのだが、人によってはストーリーに全く興味が無い方も居ると思われるので、ある程度割り切った上で作った。
(あれだけシナリオを書いといてそりゃねーだろとツッコまれそうだが、押し付けがましいとプレイヤーはうんざりしてしまうのだ…)
個人的な意見ですが、ゲームのシナリオは見せつけられるのではなく、プレイヤー自身で情報を掴んでいく方が面白いと思っています。ゲームという媒体を用いる以上、ゲームだからこそできる表現を活かしていきたいですね。
意図的に削ったもの
制作の過程で作られたシステムもあれば削られたシステムもある。
本作はそのような要素が数多くあり、独自性のある作品に仕上げている。そんな日の目を見なかったシステムたちについて触れていく。
・MP
CT/WTの概念を導入したのでいらなくなった。
・アイテム
つくるのがめんどくさいのでいらない。
・通常攻撃
使わないのでいらない。
・「逃走」コマンド
逃走スキルのエスケープとは似て非なるもの。
逃走コマンドを実装してしまうと探索中の緊張感が皆無になるため、ハナから導入する気はゼロだった。
ただピンチになったときの緊急脱出手段としてスキル側に実装するのはアリかなと考えたので、サブスキルとして実装した。
当然すぐ逃げられるようにしてしまっては意味がないので、WTを2ターンとしている。
(おかげでライトゲーマーにはたいへん不評だった)
・属性
最初に戦闘システムを作ったとき、状態異常だけでパズル的な戦闘は実現できるという感触はあったため、本作では実装しなかった。
昨今のゲームでは属性耐性パズルはよく見られるので、類似のゲームにしたくないという思いもあった。
属性の概念がなくなったことで魔力・魔法防御の概念が不要となり、キャラの能力値がシンプルになったのはうれしい点。
・命中率、回避率、クリティカルヒット
本作はパズル的な戦闘を売りにしたゲームなので、乱数が絡む要素を入れてしまうとプレイヤーの戦術が成り立たなくなってしまう。よってこれらの要素は削除した。
乱数が悪とまで言うつもりはないが、ゲームが面白い方向に作用しないのであれば基本的には入れないほうがいいというのが個人的な意見。
・武器
省いた…というより、武器という体裁を取らなかっただけ。
通常攻撃が無いので武器を装備して攻撃するというシチュエーションがそもそも無い。
そのため攻撃力が上昇する装備もひっくるめて防具という形をとった。
実装するか悩んだシステム
何でも実装すればいいってモノじゃないのはそうなのだが、全く検討をしないのは面白さの幅を狭めてしまう可能性がある。
導入しなかった理由は様々だが、そのようなシステムについて触れていく。
・ダンジョン中のトラップ
RPGというより、ローグライクゲームによくある要素。
探索のメリハリをつけるために実装するのもありか…と少し考えたが、戦闘バランスがシビアなゲームでトラップなんてものが発生したらどう考えてもストレスでしかない。
トラップを実装する場合、プレイヤーに回避手段(解除用アイテムとか)を用意するのが鉄板だが、そうなると本作の設計方針である「余計な要素は省く」から外れてしまうため、あまりそういう類のアイテムは実装したくなかった。
本作はローグライク風とうたってはいるが、あくまで挙動がそれっぽいというだけで実際は戦闘がメインなので、そこは区別した。
・報酬システム
特定の条件(エネミー撃破数XX回とか戦闘回数XX回とか)によって、報酬を得られるシステム。実績システムと呼んだほうが伝わりやすいだろうか。
目標と報酬を設定することでプレイヤーにモチベーションを与えることができるのは大きなメリット。
システムの発想自体は悪くないと思うのだが、いかんせんシンプルなシステムにしてしまったが為に、報酬にするモノ(アイテムや装備品)が設定しにくくなってしまった。
もうちょっと煮詰めれば上手いやり方があったかもしれないが、実装する労力とその効果が見合ってない気がしたのでやめた。
・イベントスチル
ストーリーを演出するために使用する一枚絵。
イラストは宣伝効果が高いので本音を言うとやりたかったが、作業リソースが足りなくてやめた(妥協)。
次はこういうビジュアル面もがんばれるといいですね。
ゲーム公開後の対応
ゲーム公開(2020/04/18)から機能追加・修正した内容。バランス調整もここに含まれる。作者にとっては大いに反省すべき部分でもある。
【エネミー図鑑】
敵のステータスや状態異常耐性などを閲覧できる機能。
この機能自体は初期からあったが、バージョンアップに伴い戦闘中でも閲覧できるようにした。
メニュー画面から開けるので戦闘中は無くてもいいか…とも考えていたが、耐性を調べるのが苦痛なプレイヤーも結構多かったので、戦闘中でも閲覧できる仕様とした。
この手の親切機能はゲームの遊び易さに直結するので、特にコダワリが無ければ入れるのがベター。
【レベルアップアイテム】
キャラクターのレベルを一定まで上昇させることが出来るアイテム。各層のボス撃破後に入手可能。
元々ボス撃破後の経験値(Mana)はスタメン以外のキャラにも回せられるよう多めに設定していたが、ほとんどのプレイヤーは最初に選んだキャラに経験値を回してしまっていたため本アイテムを実装した。
新規加入のキャラに経験値を回す心理的なハードルをもう少し考慮するべきだったな…と反省している。
【難易度設定】
本作本来の難易度はADVANCEであり、バージョンアップ後に低難易度のBASICを実装している。
ライトゲーマー向けに作るつもりはハナから無かったので、難易度設定は無くてもいいやーぐらいに考えていたが、ストーリー部分が面白いと評価してくれた方が結構居たので、気軽に楽しめるモードもあったほうがいいかなと思い直し追加した。
ところがどっこい、戦闘難易度を下げてしまったがためにBASICはザコ戦が単調でダンジョン部分がイマイチという感想がきてしまった。
じゃあ難易度ADVANCEをやれよ! という話をしたいのではなく、ゲームの面白さをバトルに全振りしてしまったがため、ダンジョン探索がマンネリ化しやすいという問題が浮き彫りになってしまっただけである。
メリハリのあるゲームにするためにも、もう少しプレイヤーが楽しめるようなギミックがダンジョンにあっても良かったと考えている(例えば敵が追ってこなくなるアイテムを配置する、とか)。
【バランス調整】
これが一番デカイ修正内容。
ゲーム公開後もなんだかんだで1ヶ月くらいは調整作業(スキルの性能や敵のパラメータ・AIの見直し)を行っていた。
特に初期版では一部のボスの攻撃が激しすぎて、かなり戦い方を詰めないと厳しいバランスになっていた。こうなってしまったのは、製作期間が長期化しゲームバランスに対する感覚が麻痺しまったのが原因。
※言い訳がましいが、公開当時は世間が色々とデリケートな時期だったので作者の精神状態もあまりよろしくなかった
ゲーム公開後にバランスに対する意見を聞き「あ、これはマズい」とようやく気づき、大幅なバランス調整に踏み切った次第である。
(それでも数名クリア報告があったので、最後までプレイしてくださった方には本当に感謝しかない)
Q. 今のバージョンでもラスボス戦キツすぎるんですが?
A. そうですね
さいごに
ゲーム公開後に大きなバランス調整・システム改修などが入ってしまったのは反省点であり、テストプレイヤー(他者)からのフィードバックが重要だと痛感しています。
初期Verと後発Verでゲーム性がだいぶ変わってしまったのは痛いですが、なんとか自分が理想とするゲームを提供することが出来たので、ここまでやり遂げて良かったと思っています。
この記事もかなり長丁場になってしまいましたが、こうして記録を残すことでゲーム制作に区切りをつけられたな…と感じています。
記事を読んでくださった方もここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。
〜 おわり 〜