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【イリスのゲーム・制作記録⑤】振り返り編

これまでの記事を振り返ってみると、さも当然のようにスムーズな制作進行を行ってきたかのように見えますが、実際はそうではありません(※)。

※ゲームを作ったことがある方には言うまでもないですが…

今回は本作がどのような過程(迷走)を経て制作を行ってきたかをテーマにして語っていきたいと思います。

わりと本作のシナリオに関するネタバレがあります。

黎明期

当初はノンフィールド系RPGを作る予定でゲーム制作を進めていたのだが、中々おもしろいシステムが作れず悩んでいた時期。

気分転換に「ローグライクゲーム風な敵の挙動ってどうやったら作れるかな〜」となんとなく思って作ったのがこの頃。

1時間程度でこしらえたものだが、思いの外面白い挙動をしてくれたので「おっ これゲームになりそうじゃん?」という手応えを得た。

作者はあまりRPGに反射神経を使う要素を入れたくないタイプなので、敵の挙動に注意しながら慎重に行動する、というゲーム性は自分の好みにもマッチしていた。

こうしてノンフィールドRPGはいったん諦め、ローグライク風なダンジョンを攻略するRPGを作っていこう、と路線変更をしたのである。

この方針転換は自分にとってかなり良い影響を与え、制作スピード・モチベーションが段違いに上がった。

(この時のツイートの投稿時期から分かるが、ここからゲーム公開までおよそ1年弱かかっている。つまりここから迷走期に入ることが伺える)

開拓期

ダンジョン部分の方針が固まったので、今度は戦闘システムの制作に入っていった(戦闘システム制作の流れについては、前記事で語り尽くしたのでここでは割愛する)。

この時点ではキャラクターやストーリーなどは一切考えず、ゲーム部分(戦闘システム・ダンジョン)のみ作っていった。

ストーリーを無視してゲーム部分を作った理由は、まだこの時点ではゲームを面白くできる自信が無かったからである。

最低限、ゲーム部分さえ面白ければ十分遊んでもらえるだろうし、なんだったらストーリーはオマケみたいな扱いにしてしまってもいい。
とにかくまずは「ゲーム部分の芯をしっかりと作ろう」という考えのもとに制作を行っていた。

こうしてゲームの基礎システム+ダンジョン50階層+ラスボス戦(仮)まで一気に作っていったのである。なお、この時点では敵のパラメータから味方の性能などはかなり雑に作っており、ゲームバランスもへったくれもない状況である。

しかし、制作初期の段階からゲーム全体のボリューム感を決められたのは、次の工程であるバランス調整のやりやすさという観点でとても良かったと思う。

けっこうムチャな作り方をしてそうな印象を受けるかもしれませんが、この「最小限の部分を作ってから肉付けする」やり方はゲーム制作者SmokingWOLFさんの『ゲームを完成させる作り方』の記事を参考にしています。ゲーム制作の知見が詰まっていて非常におすすめです。

迷走期

「よっしゃ、(ゲームバランスとか一切度外視だけど)ラスボス戦まで出来たぞ〜」という段階まで来たころにはゲームシステムの基礎が完成し、これはゲームとしても面白くなりそうだな、という手応えを感じていた。

ここからようやくストーリー部分の着手に入る。

だが「せっかくここまでシステムを作ったので、ストーリーやキャラクターもしっかり作っていきたいな〜」と思い始めてから迷走が始まった。

「そもそもなんでダンジョン潜ってんだよ」みたいな所から疑問点は始まり、なかなかアイデアが進まない。いくらストーリーを適当にしてもいいと考えて作っていたとはいえ、ゲームの目的をしっかり与えないとプレイヤーに投げられる。

舞台を現代にしてダンジョンは異形化した異空間にするか… いっそ学園モノにしてしまうか…(※)みたいな感じでかなりストーリー部分は迷走していた。

※冗談っぽいけどわりと本気で作ろうとしていた

色々悩んだ末、あまり奇をてらった設定を作るのは自分にはムリだと判断。王道ファンタジー的な世界観でもう一度考え直してみよう、とキャラクター作りからやり直すことにした。

仲間キャラクターの数はこの時点で決めたので、ストーリーに登場するキャラもほぼ絞られていった。

なんとなく一緒に戦っていた仲間たちの関係や各層のボスの正体がシナリオを通して徐々に明らかになってく過程は、なかなか面白い体験だったかと思う。

【余談:なんでこんなシナリオになったの?】
(長いので飛ばしてもOKです)

作者は素人なのでシナリオ技法的な事をここで書くつもりはありませんが、どのような考えから本作のストーリーが出来上がったか、軽く触れたいと思います。

話の作り方のベースとなっている考え方は「結末から考える」です。
話のオチから過程を考えていく、というやり方はわりとメジャーだと思いますが、本作のストーリーはすべてこの発想から作られています。

まず初めに、本作は王道ファンタジー的な世界観にすることを決めたので、とりあえずシナリオは魔王を倒す、という体裁を取ることにしました。
うん、超わかりやすい!

ゲーム中はモブキャラを出したくなかったので、登場するキャラは仲間のみに限定しようと考えました(理由はつくるのがめんどうくさい)。
その結果、拠点となる場所は必然的に閉じた環境になるため、やや特殊な異空間になりました。

仲間たちは各々魔王城に挑む理由があるため、彼らには何らかの事情を抱えながらこの場に居る、という背景が必要になります。

男女6人、密室、魔王城、何も起きなかったはずもなく…

「じゃあ全員、魔王城に挑んで死んだことにしよう」

こうして結末からストーリーを作っていきました。
設定やシナリオを考える際は、実際に人物相関図を作成しながら行っていました。キャラ同士の直接的・間接的繋がりを考える際、この人物相関図が非常に役に立ちました。

キャラクターも最初に決めた肩書から設定を膨らませました。
例えばユエ・オスカーはメイド&騎士なので「じゃあ仕える主人が必要だな」、グラムなら「勇者となった経緯が必要だな」という具合でキャラの肩書から周囲の設定を固め、ストーリーを練っていきました。

過渡期

各キャラクターのバックボーンを作っていくことで、ゲームのシナリオはかなり固まっていった。

ゲーム部分・ストーリーを完全に別ラインで作成したことにより、結果としてテンポの良いゲーム性になったのは大きい。

シナリオ作成と並行し、各キャラクターの性能も詰めていった。

キャラ性能でキャラクターのフレーバーを表現できるのはゲームならではの面白さだと考えているので、このあたりは特に楽しい作業でもあった。

なお、イラストの作成はシナリオを書いた後に行っている。
これは作者自身があまりイラスト作成が得意ではないという自覚があったため、制作進行に大きな影響を及ぼすと考えたからである。

(イラスト作業は結構不安定で、時間が経つと画風も変わったりするのでなるべく一気に行いたい、という考えがあった)

調整期

「ゲーム部分」「ストーリー」「イラスト」と3つの核が出来たところでゲーム全体の完成度を高めることができた。

この時点ではかなり大味なバランスなのだが、まずは客観的な意見が欲しい。なにより制作のモチベーションがかなり下がっていたので、フィードバックを得たいと考えていた。

という事で、思い切ってテストプレイを友人へ依頼。

中編ボリュームのRPGを作ったのは初だったので不安もあったが、システム部分は好評価を得たのでかなりの手応えを感じた。

その後、ゲームの不備や難易度について色々意見を貰い、最終バランス調整を行っていった。

フィードバックを得るというのは客観的な意見を得られるだけでなく、ゲーム制作のモチベーションに大きく影響するので、やはりテストプレイは大事だと断言します。

※なおテストプレイヤーは戦闘民族ばかりだったので、ここから狂バランスのゲームが出来上がっていく…

そして終焉へ…(終わってない)

終盤の調整作業によって、ザコ敵の性能は大幅に変わっていった。悪名高い各層ボスのギミックもここで作り上げている。

ザコ敵の性能変更に伴い、味方キャラクターの見直しも行っている。
そのエリアで出現するザコ敵に対して有効なスキルをタイミングよく習得させるなど、ゲーム攻略のバランスを考えて調整を行った。

本作の特徴にも書いた「パズルチックでスリリングな戦闘」はここで完成したと言ってもいい。

この調整作業におよそ1ヶ月程度費やし、細かいバグなどを修正してゲームを公開した。

高難易度ゲーがどこまで受け入れられるか不安もあったが、フリゲ界隈は魔窟であるという認識はあったので、刺さる人には刺さると信じて公開に踏み切った。

結果として、目標であった1000ダウンロードも達成できたのは本当に嬉しく思う。ゲームを遊んでくださった方、本当にありがとうございます。

※厳密にはリリース後も頻繁にバランス調整を行ったのだが、それはまた別の機会に…

さいごに

これまでの内容からわかる通り、本作のシナリオは完全なる後付で作っていました。

このやり方の良し悪しを議論するつもりはありませんが、ゲーム中に出てくる要素をシナリオに絡めるのは面白い作業だったので「なんとなく作ったモノの設定を深堀りしていく」という手法自体は悪くないと思っています。

たまたまこういう作り方が自分にマッチしていた、という話でした。

後付設定バンザイ!

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