肉食男児
「ダメっ、これはボクの!」
守るように鉄板を引き寄せる五歳息子。
危ないぞ、まだ熱い。
「ごめん。お腹いっぱいなのかと思って」
出しかけた手を引っ込め、ママは平謝り。
そう、息子は残りのお肉とご飯をペース配分して食べていた。
平日夜のフードコート。
家族三人で外食に出かけた。
こどもの日に行けなかった穴埋め。
何が食べたい? と聞けば「肉!」
近所のモールに最近出来たステーキのお店があった。
ただキッズプレートにはハンバーグしかない。
再び問うと「おとなのでも平気!」
念のため私が少なめのプレートにして様子を見たら……
食べるわ食べる。私のガーリックライスまで貪った。
シェア好きのママ(←自分はスンドゥブ)が、最後の一切れに手を出したのが息子の逆鱗に触れた。
「考えて食べてるの!」
この時の息子はライオンの目をしていたな。
全て平らげ大満足の肉食獣。
ゆっくり歩いて凱旋帰宅。
時折の夜風に、彼から肉の匂いが漂った。
鉄板の香を連れ歩く夕薄暑
(てっぱんのかをつれあるくゆうはくしょ)
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