舌は忘れない:山羊のロースト
私が初めて山羊肉を食べたのは20年以上前のこと。私のイタリアの‟家族”で父であるパパ:アンジェロの末弟、ジオ・ペッペ(10人兄弟のパパは6番目、Zio Peppeは10番目)の長女ロサンジェラの結婚式が、カンパニア州の東端にあるMontesano sulla Marcellana:通称モンテサノという、ゴツゴツした岩山の合間にある小さな村で行われたのです。ウェディング・パーティーのメイン料理が山羊肉のグリルでした。
モンテサノはカルディナーレ家の故郷で、今でもパパとママの兄弟姉妹、親戚筋が暮らしています。多くの方がイメージする華やかでモードなイタリアとはちょっと(かなり?)遠い、リアルなイタリア人の生活を体感できる場所。半分以上は自給自足という、昔ながらの生活様式を続けている村です。
初めてロサンジェラに会った時、彼女はまだ中学生。ひょろひょろっと細くて幼い美少女という印象がずっとあったので、結婚式の招待状が届いた時には驚きました。20歳を前に結婚を決めた彼女、夫となったフランチェスコはロサンジェラのひとつ上と、とても若いカップル。両親のジオ・ペッペ&ジア・ロザマリアも若くして結婚していたこと、またモンテサノというあまり開かれていない地方の村ということもあってか、特に反対も無かった様子。当時、ローマやミラノなど大都市部では、日本同様に晩婚化が進んでいたので、都会暮らしの親戚たちは、私同様驚いていましたけれど。
初めての花嫁の父ということで、ジオ・ペッペの力の入れようは凄かった!モンテサノからひとつ山を越えた村にある遠い親戚が経営するホテルを貸し切り、ゲストは100人以上。カルディナーレ家と新郎ファミリーの親戚筋が勢揃いした様は、圧巻でした。
イタリアで‟正式な”フルコースを食べたのも、この時が初めて。1皿目は、ソフトボール大のモッツァレッラがひとりに1つデデーンと。そこから延々と、全15皿もサーブされるとは知らず、美味しい美味しいとガンガン食べていたら、3皿目(まだ前菜)で既に満腹に。もう食べられないよ~と胃をさすっていたら、ジオ・ペッペがやって来てひと言。
『今日のために山羊を28匹買ったんだよ!だからいっぱい食べておくれよ!』花嫁の父が自ら仕入れて来た山羊たちが、ホテルの厨房でローストされている最中とのこと。
日本で都心部に住んでいると、そうそう山羊肉と出会う機会がなかったので(今でこそメニューにあるレストランも増えましたが、20年前はまだチーズなど乳製品などを扱うくらいでしたよね)、イメージだと羊よりも臭いがキツそうだなぁと、満腹なのを言い訳に味見程度で済ませようと思っていたのですが・・・。サーブされた山羊肉は、新鮮だからか全く獣臭もなく、脂も少な目でサッパリ。丸ごとローストされたからでしょうか、すごく柔らかくて美味しかった!
とは言え、前菜からかなり飛ばして食べてしまっていたため、2切れが限界。この時ほど、胃の小ささが残念だったことは無いかもしれません。驚いたのは、パパ・ママを始め、パパのお兄さんお姉さんたち(長兄はパパよりひと回り上、この時すでに80代後半だったはず)は、平気な顔で次々とサーブされる料理を楽しんでいたのです。恐るべし健啖家揃い。カルディナーレ家は長寿の家系なのですが、そりゃぁ長生きするわよねーと納得。やはり、食は大事なのですよ、人間にとって。食欲は生命力と直結しているのですよ。
その後何度か、ヨーロッパ各地で山羊肉を食べるチャンスに恵まれましたが、あの時の美味しさと感動には及ばず。新鮮なお肉で、シンプルなローストだったから、余計に美味しかったのだと思います。いつかまた、絶品の山羊肉に出会いたいと願い続けております。
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