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デザインとプロダクトライフサイクル
製品が市場に投入され衰退するまでのサイクルと利益回収との関係を表すプロダクトライフサイクル(以降PLC)。利益のお話しは他に譲るとしてデザインに関わるお話しを綴りたいと思います。
プロダクトライフサイクル
PLCには「導入→成長→成熟→衰退」という段階があります。導入期に投入されるイノベーティブなプロダクトには、さほどデザインは重要ではありません。
理由は簡単で、「出来ないことができる様になった」だけで商品価値が十分にあるからです。そしてデザインが重要視されるようになるのは、成長期以降です。
導入期の後、競合他社が研究を重ね同様の機能を提供するようになると市場が活性化しはじめます。そして成熟期になると機能価値に大差が無い状態になりブランドによる選択基準を除くと何を選べば良いか生活者は判断に困り始めます。
この様な段階では、生活者に選んでもらう為に他社よりも有効であることをアピールする必要がありデザインの役割も重要になります。
機能的価値で勝負する導入期
もし花粉症が完治するクスリが発明されたらと妄想してみましょう。
花粉症は苦しいですよね。もしも今そのクスリが発売されたとしたら、先のPLCで言うと導入期にあたるでしょう。
「花粉症が治せる世界初のクスリ○○製薬」なんてコピーがつくかもしれません。もし私がこのクスリのプロデューサーであれば、このタイミングで認知拡大の為のコストはさておき、パッケージを含む様々なデザインには必要最低限の工数しか投入しません。クスリとしての信頼感を損なわない程度のデザインであれば合格です。
つまりデザインで感情を呼び起こす必要は無い=重要ではないという事になります。生活者目線では、花粉症が治れば良いのですから。伝えるべき価値のほとんどはクスリが効くことです。
情緒的価値で勝負しなければならなくなるタイミング
しかし競合が同様のクスリを開発し売り始めたらどうなるでしょう。PLCでは成長期から成熟期へ向かう段階です。数社が市場に参入している状態を想像しましょう。店頭には同じ効能をうたう製品が並びます。
この段階では、花粉症に効くことが当たり前になり、効くことは価値ではなくスペックに成り下がります。(???の場合は以下もご覧ください)
情報伝達の仕組み
では何を価値として提供すれば良いのでしょうか?
当然このクスリの商品企画会議では、差別的優位性を持たせるための議論が沸騰していることでしょう。付加価値となる成分を加えようとか、容器の構造を工夫して服用しやすくしようとか、キャッチコピーをもっと生活者目線で考えようとか、ま〜商品企画のセオリー通りに進んでゆきます。
当然、今までとは異なるアプローチをする為の調査等が必要になり、デザインの開発コストはグッと増えるようになります。
つまりデザインが重要になるタイミングです。そして競合各社は本来の機能以外の価値を手を変え品を変えデザインで訴求するようになり、生活者の選択基準の比重が機能から情緒的な価値へと移ってゆきます。
デザインは花粉症が治ること以上に情緒的な価値を伝えなければならないわけですから今までとは別次元の高難度になります。(???の場合は以下もご覧ください)
言語化しづらい情緒的な表現
花粉症に対処する際のUXを見直し不便さを取り払おうとか、持ち歩いてもかわいい(又は恥ずかしくない)とか本来の効果効能とは異なる価値を形成しデザインで伝えることになります。
しかししばらくしてPLCの成熟期から衰退期に入る頃、競合同士がキャッチアップしあい、同じような付加価値で勝負するようになります。そうなると再び生活者は判断基準を失うので製品の販売価格が判断基準になり価格競争が激化します。表現の拠り所を失ったデザインは差別性のみを追求するようになりますが実際には、ほとんど兄弟かと思えるほど均質化し始めます。この段階が企画者にとってもデザイナーにとっても答えが見えない苦しい時期です。
繰り返すPLC
衰退期に向かうと当然売り上げの向上は見込まれず、一部の企業は撤退を余儀なくされ、体力の続く企業は、技術的な付加価値を模索し戦い方を変えながら新しい土俵で導入期としてスタートしようとします。
うまく新たな価値を提供していると市場が認めてくれるとPLCは再び導入期から衰退期までのサイクルを繰り返すようになります。
PLCが繰り返せない
しかし最近ではいろいろな業界での技術革新が停滞しており、成熟期から衰退期のサイクルから抜け出せず、人が感じるモノの価値はどんどん下がっています(人の期待>モノの価値)。
モノが不要になったわけではなく、モノに魅力を感じなくなったためそこに必要以上のお金をかけなくなったと言う事。これがモノよりコトと言われる正体です。
持続的イノベーションと破壊的イノベーション
PLCに関係して理解しておくべき持続的イノベーションと破壊的イノベーションについてこのまま説明を続けようと思いましたが、長くなってしまったので別の投稿で説明したいと思います。