奥の細道パロディ日記「寒夜の路」
冴え渡る弦音が的を打つ、極寒の弓稽古。その帰り道、凍てついた内臓を溶かしたのは百三十円のコンポタだったーー
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本当は3月初旬にあった出来事を、季節の整合性をとるために12月ということにしたのはここだけの話。そう、「コンポタ」は冬の季語で間違いありません。
奥の細道パロディ日記「寒夜の路」
師走始めの寒夜、弓稽古す。冴ゆる弦音は的を打てども、矢は安土を穿ちたれば、腸凍るまで涙を落としはべりぬ。稽古終わりてちゃりんこ漕ぐほどに、自販機にコンポタあり。百三十円払いて飲めば、腸溶くる心地す。缶の底に残りたる粒取らんと欲して空を仰げば、棟々の隙に僅かの星弱く光りて置きたり。
コンポタの粒より遠し三の星
賢電話に残しはべりてまた夜闇を漕ぐ。
(現代語訳)
12月始めの寒い夜、弓稽古をする。冴え渡る弦音(矢を放った時に弦が弓を打ち鳴る音)は的の表面を打つが、矢は的に中らず安土(的をかける盛り土)に刺さるので、内臓が凍るくらい泣く。稽古が終わって自転車で帰る道中、自販機にコンポタが売っていた。130円払って飲んだら、凍っていた内臓が溶けていく感じがした。缶の底に残った粒を取ろうとぐいと空を仰ぐと、高い建物の隙間から弱々しく光る星が数個見えた。
コンポタのー(缶の底に残った粒が取れないよう。ビルの隙間に光る星がコーンみたいだなあ)
一句をスマホに書き留め、また自転車を漕ぐ。
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