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真夜中の和歌

※写真は真夜中のじゃがいもです。


 殊勝にも9時頃眠りについた晩、真夜中にふと目が覚め、何時かな、とスマホを開くと「しし座流星群」の文字が飛び込んで来ました。すぐにベッドの脇の窓を開け、横たわったまま夜空を眺めました。よく晴れているようで、星がたくさん見えました、都会にしては。

 流れないかなー、と、待つこと数十分。脳内には、二首の和歌が浮かんでいました。

長き夜の遠の眠りのみな目覚め
波乗り舟の音の良きかな

(意訳)
真夜中、人々が深い眠りから目覚める。
遠くから、ちゃぷんちゃぷんと、舟の音が心地よく響いてくる。


 我が家の周りに水辺はなく、聞こえてくるのは遠くのサイレン。この歌にふさわしいひと時だったかと言えば、それはちょっと脚色です。

 でもでも、夜空はたしか海の比喩だから合ってるもん…。と、半分眠ったままの頭で謎理論。

天の海に雲の波立ち
月の船星の林に漕ぎ隠る見ゆ
(『万葉集』巻七・1068・柿本人麻呂)

(意訳)
天空に、雲の波が押し寄せ
月の船が、星の林に漕ぎ隠れて行くよ。


 その日の空は、きれいな下弦の月は舟と見るに文句なしだったけれど、都会にしてはまあまあ見える程度の星数と雲ひとつない快晴でした。だからこれもちょっと嘘。

 ちょっと嘘だけれど、流星群を見るために、たくさんの人が同じように目を覚まして夜空を見上げているかもしれない。この広い空は、一艘の月舟が漕ぎ進む大海原かもしれない。そう思ったら、なんだかいい気分になりました。


 二首の和歌と流星群のおかげで、夢見心地のいい眠れない夜でした。

 流れ星は見えなかったけど。

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