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表現の自由研究「絵画」

どうも、プロレスとか役者さんポートレートを撮っているたかはしです。

6月にして猛暑日を記録し、かなり過ごしにくい夏の予感を感じる7月第一月曜日。
毎月恒例の『大人の自由研究』企画、第4回目でございます。

今回のテーマは「絵画」。
と一口に言っても、その範囲がとても広いものでして…
そこで一ジャンルである「印象派」、そして印象派の大家「クロード・モネ」にフォーカスして話を展開しようと思います。

今回調べて分かったのは、「写真と絵画は地続きである」という結論。
特に印象派の作品は、私の撮影スタンスに取り込みやすそうだなと感じているので、そこらへん含め深堀していきます。

前回記事はこちら。

ハブ記事はこちら。

1.カメラ・オブスクラ

最初に、写真と絵画が地続きである説明をします。
あなたは「カメラ」の語源をご存じでしょうか?

カメラという語のルーツは、絵画の模写用に作られた装置「カメラ・オブスクラ」にあります。
ラテン語で「暗い部屋」の意味。

風景を忠実に描くのなら、像をなぞることが出来れば一番です。
それを実現するのがカメラ・オブスクラ。
風景をスクリーンや壁に投影する装置です。

その歴史は古く、紀元前400年には存在していたとのこと。
時代を経て改良を重ねられ、後述するニエプスの写真機につながります。

2.絵画と写真の関係

絵画において、遠近感の表現は重要なピースでした。
人の目で見た景色の表現、用語的には「消失点」と「透視図法」の発明がそれにあたります。
カメラ・オブスクラは、この消失点や透視図法を、より正確で簡単に使えるようにするツールだったのです。

写真機としてのカメラの誕生は1824年、フランスの発明家ニセフォール・ニエプスが「ヘリオグラフィ」を開発したものがルーツです。
カメラ・オブスクラは投影でしかなかったですが、光で「ユダヤの土瀝青どせきれい」を化学反応させ処理し、印刷原版へ”現像”させました。
風景をそのまま閉じ込めたのです。

1839年にはルイ・ジャック・マンデ・ダゲールが初の実用的写真術「ダゲレオタイプ」を発表します。
これにより、文字通り写実的な風景表現を可能にしました。
その後小型化や露光時間の短縮などの改良を重ね、より手軽な撮影が可能になっていきます。

そうすると、『絵画の存在価値とは』という疑問が沸き上がります。
絵画以上に忠実な描写ができ、かつ手軽に使えるようになってきたとなると、絵画である必要がないのですから。

写真との差別化を図るべく、画家たちは試行錯誤します。
そんな時代の潮流の中で生まれてきたものが、印象派の表現手法でした。

3.印象派の誕生

写真誕生以前の絵画、現代では古典主義と呼ばれるジャンルの絵画では、主に宗教画が書かれていました。
聖書や預言書の内容を理解し、教養を持った人間が描く絵こそが国家に認められる絵画である、そのような時代です。

その反発として、「写実主義」「ロマン主義」「バビルゾン派」といった流派や手法が生まれました。
現実の風景を素朴に描いたり、感情を絵画に落とし込んだり、といった取り組みが生まれることになります。

様々な流派が生まれる中で、一部の人々がグループを作り、彼ら自身で展覧会を開くに至ります。
開催されたグループ展において展示された1枚の絵から、「印象派」という名称がつけられることになります。
クロード・モネ作の『印象・日の出』です。

元々は『日の出』というタイトルだったところに、モネ自信が「印象」を付けたしたそう。
サロンに展示される作品と比較して、あまりに先進的な絵画だったことを受け、批評家は揶揄する意味で「印象派」とモネの作品名から引用した名前を付けました。

しかし皮肉がダメージにならず、本人たちが気に入った使い始めます。
第2回目以降のグループ展は「印象派展」と名前を改めて開かれました。
ここに「印象派」が誕生します。

4.印象派絵画の特徴

印象派絵画の特徴には、以下のようなものがあります。

光の動き、変化の質感をいかに絵画で表現するかに重きを置いている。
荒々しい筆致が多く、絵画中に明確な線が見られない。
・戸外制作
を多く行う。
・色彩はできるだけ混色を避けて並べていく。同時対比の原理により見る人に色をより生き生きと見せる。
・自然光の役割を強調する。対象から対象への色彩の反映に注意を払う。

フリー百科事典Wikipedia「印象派」より
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%B0%E8%B1%A1%E6%B4%BE

絵画に動きや時間軸を込めようとした点、古典主義と比較して抽象的な表現を点、が新しい要素でした。
また色彩にかんしても、自分の印象をもとに絵の具を乗せていくという、写実的な表現とは反対方向へ突き進んでいきました。

「印象」の名の通り、自分が受けた印象を、抽象的に表現してく点が特徴です。
人物の目鼻立ちや、草木の輪郭がボヤっとしているにもかかわらず、人間の認識では対称が何なのか理解できます。
これは写真では難しい、絵画ならではの表現でした。

これらの表現手法は、のちの前衛美術へと影響を与えていきます。

5.クロード・モネ

印象派の代表的な人物として、マネ(本人は印象派と呼ばれることを嫌がった)、ルノワール、ドガなどいます。
モネも印象派の代表的な人物の一人です。

モネは戸外制作を愛し、自然と触れ合いながら描いていました。
そして「印象主義」と呼ばれる、”自分が受けた印象”を絵画に落とし込む手法を取り入れていきます。
それまでの主流である古典主義や新古典主義とは、まったく違った作品でした。

代表作に『印象・日の出』『積みわら』『ラ・ジャポネーズ』などがあります。
ここでは『散歩、日傘をさす女』『睡蓮』について取り上げます。


・『散歩、日傘をさす女』

上述した印象派の特徴通り、筆致が荒々しく、雲や草の輪郭が明確に描かれていません。
また白い服に青の光が回り込んだ様子が描かれており、写真表現でいう「記憶色」のような表現がうかがえます。

日傘の女をモネは3枚書いており、どれも光の向きや空の色合いが違います。
共通しているのは、日傘や人物の影の表現が独特であること、そして雲がいい感じに出ている日であること。
戸外制作を通じて、光の変化や色彩の移ろいを探求した、モネのエッセンスが凝縮されています。

個人的な見解でいえば、ポートレートの定番である逆光、三分割構図、空と人物・草の対比が非常に心地よく、人物と空が一体となった感覚すら覚える表現がとても好きです。
青の表現も、わざとらしからず、控えすぎずの、素敵な色合いで引き込まれます。
人物のふるまいも自然で、抽象的表現ながらも穏やかなシチュエーションが想像できるような描き方に感銘を受けました。


・連作『睡蓮』

戸外制作の集大成として描かれた連作『睡蓮』。
変化してゆく草花や光、色など、モネは連作を通じて時間の移ろいを表現していきました。
『積みわら』『ルーアン大聖堂』などいくつかの連作で同様の表現をしています。

モネは睡蓮を描くために、土地を買い家を建て、池を作っています。
さらには日本風の橋まで架けています。
凄まじい探求心です。

『睡蓮』を一覧で見ると、「全体に広がる光の色味の変化」、「睡蓮の花の変化」、「水面の時間的・期間的変化」を表現していることが分かります。
そのタッチからは、ぼんやりと池を眺めているときの脳内イメージに近いものに感じられます。
同じモチーフに向き合い続け、自分の方法で表現することは、写真にも通ずる大事なことです。

6.絵画から学ぶ写真

YouTubeに、東京カメラ部の動画シリーズ『名画から学ぶ 〜写真の見方、撮り方〜』がアップロードされています。

上でモネの2作品から写真に転用できるような考察をしました。
私は色や雰囲気について主に触れましたが、動画では構図を主に扱っています。

絵画の歴史は、構図研究の歴史でもあります。
上述した遠近感、人物の配置による関係性の提示、光源の設定による陰影、主題副題の明示など、数々の偉人たちが試行錯誤した技術が見て取れます。

絵画は自由に描けますので、美しさを追及した結果がそこに存在します。
一方で写真は現実世界を写しますので、絵画よりも制約が多くなります。
写実的であることとトレードオフの制約の中で、いかに絵画から着想を得た技術を応用できるか、が動画から学べます。

私が印象派絵画を選んだ理由として、写真ではそのままの表現が難しい技法で描かれつつ、現実を映している点があります。
表現が難しい以上抽象化する必要があり、しかし抽象化してしまえば応用はいくらでも効きます。

ほかの写真からテクニックを学ぶのもよいですが、写真の源流から学ぶのも重要です。
構図、色、視線誘導、光の捉え方など、ヒントはいくらでも転がっています。
一度じっくり勉強してみるのも面白いと思います。

7.感想

絵画というテーマを設定したのは、今回の種本「印象派という革命」を古本屋で見つけたからでした。
先のYouTube動画も見ていたこともあって、一度絵画をそれなりに学んでみたいなと思った次第です。

あとは山田五郎さんのYouTubeも刺激になりまして。

美術には疎い私ですが、いろいろ見ていくうちに印象派の絵画に魅力を感じるようになりました。
色使いが私好みだったのと、写真に取り入れられそうなエッセンスが見て取れたのが大きかったです。

しかし勉強していくと、一口に印象派といえど様々なモチーフや技法が存在していて、手を広げようとすると際限がなさそうだとすぐに実感しました。
後期印象派のゴッホとかまで範囲を拡大すると、抽象的すぎるし浅い知識になるし…範囲の設定が難しい回でした。

まだまだ追い切れていない部分が多いものの、絵画を学ぶことで視野が広げられるなと、調べてみて感じられました。
例えばモネの『サン=タドレスのテラス』なんかは、色使いも構図も自分が普段扱っているものに似つつ、風や光の捉え方は学ぶべき点があり、発見の多い1枚に出会えたなと。

https://www.artpedia.asia/impressionism/

写真において写実性、もとい解像感を求めようとすることは、すなわち機材への投資とイコールです。
そこには技術が必須ではないのです。
私が機材に投じられる資金は程度が知れていますから、どちらかといえば表現手法に着目したいのです。

そうすると、印象主義のような色の使い方にヒントが込められていると思うのです。
何を思ってその色を使ったのか、色の対比は何が重要なのか、光と影をどのように取り入れるのか。
そして、どのように世界を見れば、より美しくなるのか。

適度に抽象化された、”すぐ役に立たない”あれこれが、そこにあるのです。
そう、このnoteみたいに。

おわり。

8.参考文献


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