
別れさせ屋?(1)
エックス(旧Twitter)をぼーっと見ていたら、「別れさせ屋」の記事があった。この「別れさせ屋」というキーワードを見て、強烈に思い出すことがある。
それは2008年のこと。なぜ2008年とハッキリ覚えているかはあとで説明する。
その頃、私には好きな人がいた。その人(Aさん)は1つ年下で、転職した元同僚だった。在職中はただの仲のいい同僚だったが、Aさんは新しい会社に馴染めず、電話で相談に乗ったり、休日に食事に行ったりしているうちに、私の方が好きになってしまった、と。
あ、「よくあるパターンですね」と思ったそこのあなた!
まぁ、その通りだ……。
そんな関係が2か月くらい続いたある日、Aさんは「イー○○つくばに行こう!」と言い出した。「イー○○つくば」とは、2008年10月31日にオープンした、北関東最大級のショッピングセンターである。(もはや伏字意味なし)
さらに、こう付け加えた。
「友達も連れて行っていい?」
と。
私は何も考えずに、「いいよ」と言ったんだが……。
Aさんの友人(Sさん)は、金髪とまではいかないが、かなり明るめの髪色の、少々ギャルっぽい人で、黒髪の和風なAさんとは雰囲気がかなり違っていた。ただ、口調はしっかりしているし、何よりAさんの友人ということで、悪い人ではないのだろうと、あまり気にせずにいた。
オープンしたばかりのイー○○つくばは、それはそれはとんでもない混雑で、買い物どころか普通に歩くことさえ困難な状況だった。しかし、大混雑の中、いつの間にかAさんが後ろ、そしてSさんが私の横を歩くという構図になってしまい、Sさんはしきりに私に話しかけ、私はそのたびに振り返ってAさんにも話を振るという、何とも面倒な展開になった。私は「なんでSさんは俺の真横をキープするんだろう…」と、少しイライラし始めていた。
そして、Aさんがトイレに行き、2人になった途端、Sさんは私に体をピッタリと寄せてきて、こう言った。
「なんか、Aちゃんの前の彼氏とはずいぶんタイプが違いますね」
――きたか。
私もバカではない。何となく予想はできていた。私は平然と「そうですか」と言う。
「もうAちゃんとは寝たんですか?」
「いや、今のところそういう関係じゃないんで」
「中学生じゃあるまいし。誘ったらAちゃん、きっと喜んでノッてきますよ」
私は無視したが、さすがに不愉快極まりないので、表情には出していたと思う。
「ピアノ弾くんですよね? でも、Aちゃんはピアノなんて全然興味ないですよ?」
これには結構グサッときた。だってAさん、私のピアノの話を熱心に聴いていたから。いや、気を遣ってそうしていただけか?
本当は「うっとうしい」って思われてた?
待て待て、Sさんの嘘だ。騙されるな…。
そのあとも、SさんはAさんを貶めるような話を熱心に続けるが、私は徹底して無視し続けた。女性というのはホントに怖い。私が黙っていると、Sさんは後ろを向いて「あら」と言った。
そこには、鬼のような形相…なのか、悲しそうなのか、どっちとも受け取れるような表情をしたAさんが立っていた。わざとらしく離れるSさん。その顔をニヤついている。
――しまった…。
なんも言えん。ホント、こういう時ってどうしたらいいのかさっぱり分からない。
それからAさんは一切口を開かず、Sさんだけがひたすら私に話しかけるという地獄の時間が続いた。
帰宅し、私はAさんに、一体なんと申し開きをすればいいのかと、頭を抱えた。おかしな話だ。私は何も悪いことをしていない。それに、Aさんは彼女ではないので、そもそも申し開きをする必要はない。でも、今まで築き上げてきた関係が台無しになったのは確かである。
私はSさんの顔を思い浮かべ、とてもここでは書けないような言葉を投げかけた。
その時、「ピコン」とメールが来た。
Sさんから…。
Aさんから私の携帯電話のメールアドレスを教わったのか、それともAさんの携帯を盗み見たのかは分からないが、とにかくSさんからのメールだった。
そこには、日記のような文章が改行なしでズラーっと並んでいた。おそらく当時のガラケーのメールの限界文字数一杯。もちろん全部読んでないし、無視し続けたが、その日記メールは毎日送られてきた。
皆さん、想像してほしい。
当時はガラケーだが、例えばスマートフォンの画面に、改行なしの文字の羅列が、どんなに画面をスクロールしても終わりに辿り着かないほど大量に送られてきたら…。スリラーやサスペンスの巨匠、アルフレッド・ヒッチコック監督もビックリである。
Sさんのメールはさらに上を行く。
今度は文字は一切なしで、自分の目、耳、肩、肘、手の爪、足の爪などのアップの写真が送られてくるようになった。
今まで、「Aさんの友人だから」ということで受信拒否はしなかったが、さすがに限界がきて、
「とても迷惑です。もうメールを送らないでください」
と打って送り、受信拒否した。
そのあと、Aさんからこんなメールがきた。
正確には覚えていないが、
「Sちゃんになんてひどいことするの! 最低!」
みたいな内容だった。
私はAさんに1行だけ別れの文章を打ち、着信拒否と受信拒否にした。
それ以来、AさんとSさんと会うことも、電話をすることも、メールのやり取りをすることもなくなった。
結局、Sさんが何をしたかったのか、その目的は不明だが、私とAさんの仲を引き裂こうとしたのは確かなんじゃないかと思う。
まぁ、そんな話でした。
さて、実はこの話には後日談があります。その後日談とは、次の3つのうちどれでしょう!
Sさんは「富樫との関係を切りたい」というAさんに雇われた本物の別れさせ屋だった。
富樫はSさんと付き合うことになった。
数年後、富樫は偶然Aさんと再会し、誤解が解ける。
正解した方は、真冬のオホーツクで雪かきをする権利をGETできます!
マイナス20℃の中で、一緒に雪かきしようぜ!
こちらもどうぞ。
いいなと思ったら応援しよう!
