A⑥妄想の隔離室

 隔離室からは出られない。退院しても殺されるだけだろう。幽閉された気分だった。
 看護師さんは男性も女性もいた。みんな親切。ただし⚪︎⚪︎さんに操られているので、信用するわけにはいかない。
 1日3回薬を渡された。私は病気じゃないから飲むわけがない。薬は口に含んで舌の下に隠し、看護師さんが去るとトイレに吐き捨てた。
 食事も水も毒が入っているようだ。味は変ではないようだが、姑息なことをするものだ。食べるわけがない。ただ水だけは必要だ。赤いコップと青いコップで水が提供された。赤いコップは飲むなのサイン、青いコップは飲めのサインと看護師さんが教えてくれているのだろう。青いコップの水は飲むことにした。
 薬を飲まないからほとんど寝なかった。寝たら最後、殺される気がした。寝ないわけにはいかないので少しは寝たが、隔離室で襲われる悪夢を何回も見た。現実か夢なのかわからなくなった。
 隔離室はノブのないドア、鉄格子、トイレ以外は何もない部屋で、本来はすることがなく暇なのだが、私は⚪︎⚪︎さんの襲撃に備えて、常に頭を使っていた。直接手を下さないから厄介な相手だ。
 全然休めないまま年末に入ろうとしていた。(A⑦に続く)

今回の一言
形成された妄想は訂正するのが難しい。

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