【プロローグ&生活編】桜タンゴフェスティバル
一生に一度は、「ダンスフェスティバル」へ!
ペアダンスには、週末を使って一気にレベルアップできる、全国規模の「ダンスフェスティバル」が、どのダンスにもある。
レベルアップができると同時に、短時間で不思議な絆が生まれたり、知らない自分に気づける貴重な経験ももたらしてくれる。
そんな「ダンスフェスティバル」は、私がしていた4つのダンスでも全て開催されている。
ヨーロッパでは月1以上開催されている贅沢な状況だが、日本でも世界レベルのアーティストを招いて、年に一回フェスティバルは開催され、全国各地から様々なレベルの老若男女が集結する。
さて、福岡で行われる、日本で一番大きいタンゴのフェスティバル『桜タンゴフェスティバル』は、日本のキゾンバフェスティバル、ヨーロッパのズークフェスティバルのフルパス(通し券)の倍以上の値段がする。
どうしても2分の1の値段で行ける「キゾンバフェスティバル」の方が魅力を感じ、唯一、細々でも5年ほど続けているタンゴなのに、フェスティバルには、これまで一度も行っていなかった。
しかし、ライフチェンジが間近に迫り、数ヶ月後にはフェスティバルに自由に参加できるかどうかも不明になって来た。
「いくラテンダンス界では断トツに値段が高いフェスティバルでも、一度も行かないでタンゴが出来なくなっちゃったら悲しすぎる……。これは今年、日本最大級の“桜タンゴフェスティバル“に行くしかない!」
こうして私は5年ほどの月日を経て、ついにタンゴフェスティバルに初参加した。
準備なしでの上陸ー欲張りには気をつけて
始めたばかりでランバダ・ズークフェス(アクシデントではあったが)、数ヶ月でWCSのオープン(フェスティバル)とキゾンバフェスティバルに参加した私にしたら、5年という数字はそれだけで準備万端に思えた。
でも、他の3つのダンスとの両立が全くうまく行かず、こんな時に限って仕事も思いがけない受注が入り、このタンゴフェスティバルはほぼ何の準備もできずだった。
もはや、タンゴのミロンガには顔を出す暇もほとんどなくなり、時々受けられる、貴重なShinji&Natsune先生のレッスンで、少しでも踊りを思いだすのが関の山だった。
燃えたぎる炎のように、万全に準備を積み重ねて行かれている方々の投稿を見ながら、
「皆さんこんなに頑張ってるのに、ここまで準備不足で行って、得るものあるのかな?」
と、両立がうまく行かない自分がとても情けなくなった。
でも、今回を逃したら一生いけない可能性があるなら……?
行くしかない!
こうして私は、日々に脳が忙殺されたまま福岡に上陸した。
桜ではなく、雪フェスティバル?!
早朝のフライトに間に合うために4時に起きると、外はなんと雪だった。
「桜フェスティバルじゃなくて、これじゃ雪フェスティバルじゃない!うそっ、電車止まってるし!どうなっちゃうの……?」
いきなりピンチ到来だったが、救世主が現れ空港まで送ってくれた。
持つべきものは、救世主である!
こうして雪の中、救世主の車は無事空港に到着し、分厚いコートを着たまま搭乗した私は、福岡まで無事運ばれたのだった。
よみがえる“懐かしの“福岡
晴れて福岡空港に着いたら、小さい頃、家族で空港から祖父母の家へと向かった楽しい時間を思い出した。
今、あの祖父母はもう二人ともいないのだと思うと、切なくなった。
それでも福岡は、私にとって「思い出のある都市」なのだということを、実際に空気を吸い歩いていると、こうして思い出してくる。
昔はいつも年末年始に訪れていた福岡に、社会人になり、またこうやって来れたんだと感傷に浸りながら地下鉄に乗ると、あっという間にフェスティバル会場の最寄り駅、天神駅に到着した。
ある程度の都市になると、都市中心部から空港までにかなりの時間がいり、それも焦ったくなったりするが、ここ福岡は空港と天神・博多などの中心部が30分もかからず、アクセス面でも最高だった。福岡。住むのにも便利で楽しそうな街である!
“二本立て“の桜タンゴフェスティバル
桜タンゴフェスティバルは二本立てになっており、「レッスン」と「ミロンガ(踊るパーティー&アーティスト達のショー)」で構成されている。
値段も、レッスンのフルパス、ミロンガのフルパス、と完全に分けられているから、どちらかに趣きを置いて参加したい参加者には有難い設定だろう。
私は個人的にレッスンとミロンガ両方で生み出される不思議で美しい「相乗効果」をスペインのズーク&キゾンバフェスティバルで体感していたから、どちらもフルパスに参加した。
九州グルメは堪能すべし
全てがコンパクトにまとまっている、便利な街・福岡。
地方の趣味友さん達は、フェスティバルの間はほぼご近所さんとなり、同じホテルの隣人になった趣味友さんも多い。
恩人Lucius様や同じ地方の趣味友さん達も全員見事に隣人になり(笑)、彼らが家族のように私を名店に連れ出して下さったおかげで、滞在中にはたくさんの九州グルメを楽しむことが出来た。
どれも私の地方で食べる味とはまた違い、そして全てのレストランのレベルが高かった。
特に、お寿司屋さんで食べた寿司は、年始に祖父母や親戚といった新年会を思い出し、そこで話されいる九州弁は、親戚たちが話していた温かみある福岡弁と全く同じで、すごく、すごく懐かしかった。
まさか、こんな懐かしさ、食の喜びまで味わるなんて、行く前は忙しすぎて全く予想もしていなかった。Lucius様をはじめ、たくさんの恩人さん達に感謝そのものである!
Sinji&Natsune familyの温かさと思い出
これからレッスン記事とミロンガ記事で書いていく予定だが、イベント中は普段接することの出来ないダンサーと交流したく、できるだけ全国各地、世界各地の人と踊ることを心がけていた。
一方このフェスティバルは「オールインクルーシブ(食事や宿泊、全てが含まれているタイプのフェスティバル)」ではないから、レッスンからミロンガ(パーティー)までの時間はフリータイムで、そういう時は地方の仲間で交流を深める時間になっていた。
最終日の夜食時は、生憎の雨だった。美しいドレスやタキシードを身にまといながら皆でワイワイ雨の中をさまよい、美味しい焼き鳥店をLucius様が発見して下さった時は、全員で大喜びした!
Lucius様の嗅覚は素晴らしく、出てくるものは全てアクセントが効いた美味しさがあり、お店の雰囲気もとても良い。
「ミロンガ中に先生と踊ること」が、タンゴはキゾンバやズークと捉え方が違って少し疑問を感じたが、実際にアーティストで参加しているNatsune先生とのお喋りですごく納得ができたり、DJとしても大活躍しているShinji先生のおかげで、ミロンガ中にかかっている音楽について造詣を深めることが出来たり……。
アーティストとしてフェスティバルに参加していたら、来る本番に向けて気は抜けないだろうに、こうして私達地元の仲間と行動を共にしてくれる先生達の優しさ、親密さも嬉しく、先生達を改めて誇りに思った。
素敵な先生には、素敵な生徒さん・仲間が集まる。
この仲間の皆さんが、とても温かい。
近頃は全くタンゴばかりに行けていなかった私は、先生の仲間の中ではイレギュラーメンバーだったと思うが、初対面の方もとてもフレンドリーに接して下さり、気付いたらとても開放的で愉快な気分を味わえた。
タンゴの技術、芸術性も優れていて、それでいてお人柄も素晴らしい先生のもとでダンスを深めたら、フェスティバルの時、そこに集まる仲間=家族とも楽しめる。
先生達の所でタンゴを続けていて良かったと思った、温かい時間だった。
書き始めて、いきなりダンス以外のことからスタートしてしまったけれど、次回の記事からいよいよ、ダンスそのものの「本編」に進めて行こう!