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【パーティー&まとめ編】open summerキゾンバフェスティバル

前年の嬉し涙から勢いで参加を決めた、ポルトガル・Albfeiraでのキゾンバというペアダンスのフェスティバル、「open summer キゾンバフェスティバル」についての記事を書き進めている。

フェスティバル参加へのいきさつや、フェティバルの貴重な情報についての【プロローグ,準備、生活編】

腹十二分になる贅沢なラインナップのレッスンと受け方のコツ、そこで起きたエピソードについて触れた【レッスン編】

2記事を経ての最後は、自分なりに悟りも開け、五感で感動や様々な感情を感じられた素晴らしいパーティーについて、キゾンバ全体のまとめも含めて書き残したいと思う。

会場

パーティー会場は、レッスンで使われた3つのホールだった。
レッスンと同じように「アーバンキゾンバルーム」「キゾンバルーム」「それ以外(サルサやバチャータ)ルーム」に分かれている。
どの部屋も、とにかく広い。
そして、特にアーバンキゾンバルームの人は異常に多く、仲間を見つけるだけでも一苦労だ。
待ち合わせするなら、おおよその場所を確認しておくことは必須だろう。
エレベーターが到着して各パーティールームに行く途中の所にはバーカウンターがあり、ドリンクが飲める。
バーカウンターはお洒落な雰囲気だし、そこから階段を上がってテラスに出て、カクテルを飲んだり、語らいながら休憩するのも、素晴らしい思い出になるだろう!

リーダーとフォロワーの割合と対策

前回のスペインのフェスティバルでは、リーダー1対フォロワー2くらいの印象だった。さて、世界最大のフェスティバルの1つと言われる、このフェスティバルの比率は?

リーダー(男性が多い)対フォロワー(女性が多い)比は、1:5 くらいだった。
「ひどすぎる!」
というブーイングが、フォロワー達から聞こえて来そうだ(苦笑)。

でも、落胆しないでほしい。
日本人は、見かけが違うから目立って踊ってもらいやすいようで、幸いこの比率でも踊りを楽しめ切れたから、あなたが日本人やアジア人なら心配しないでほしい!
反対に欧米人で上級者フォロワーの友人は、数時間ずっとフロアを歩いてリーダーを探し、時たま誘われるほど、踊れる頻度が少なかったと嘆いていた。

このひどい比率にひるんだ人や、しかめっ面でフロアを行きしている人は、そのパーティーは「踊っている人を見て勉強する」 時間になる。

もしあなたがフォロワーで、「ダンスを見るのではなく踊りたい」なら、どうするか?

まず、レッスンで「踊れる子だな」と認識されていることも、メリットになると思う。
その上、レッスン中やパーティー中に少しでもお話していたら、クラスメイトやパーティーのみ参加のダンサーも、フロアのどこかーでそのフォロワーを見つけると、どんどん誘ってくる。

また、パーティー会場に入ったらまずは、お気に入りの仲間と思い切り踊り明かすのも良いと思う。
気心の知れた素敵な友人とは一日の内に一回は必ず踊りたいだろうし、それなら最初に踊っておくのだ。
そこで魅力的な友人と美しく踊り明かしていたら、座って休憩している上手なリーダーたちのやる気にも火をつけるようで、その後の誘いは続けざまにやってきたりする。

そのエリアの素敵な人達とは踊り切ったと思った場合は、ここまで広く何百人とダンサーがいる会場では、別のエリアまで歩くのもお勧めだ。

例えば、先生やタクシーダンサー率が高いまん中からスタート→入って1番奥のコーナー→手前真ん中→ ドア側の角→そして、入り口でfinish、という感じ。

アジア人は希少な存在として良い意味で目立ち、より踊りたい気持ちを持たれるようだから、何の心配もいらない。
「ここでも、自分を探してくれている人がいるのかな?」
とワクワクしながら、会場内の移動散歩も楽しもう!

反対に、あなたがリーダーだった場合は?
これは、反対に最高のシチュエーションになる!
約5人のフォロワーが1人のリーダーと踊る状況だから、一番気に入ったフォロワーから順にノンストップで踊れる環境が整っている。
リーダーは、この最高の条件を生前に活かすしかないだろう!

Saidとのキゾンバ:甦った感情

お目当てのインストラクターと踊りたいなら、早い内に挑戦した方がいいだろう。
最終日になればなるほどインストラクターも人間らしさが加速し、特定の人と魂の踊りを長時間楽しむようになるから、そうなるまでに踊れるようにしたい。

私は、このフェスティバルで数人のインストラクターに踊ってもらえた!
どのインストラクターとのキゾンバも最高の思い出になったが、SaidとAzzedinは、特に印象的だった。

Saidは初日に奇跡的に誘われ、4曲ほど踊ってもらえた。

最初は、踊ってもらえた感動でテンションがマックスになっていて、フォローすることに必死だった気がする(笑)。

Saidはタンゴ要素の強いリードが出て来たのが、嬉しい驚きだった。
レッスンではアップテンポな曲やベース音が顕著な曲でタラーショやアーバンを教えてくれていた。
それがパーティーではたまたま踊った曲がゆったりした曲調だったからか、レッスンの時のシャープでスピーディーな踊り、ユニークで楽しい雰囲気とは全く違う、柔らかいリードだった。

華やかなリフトをする訳ではないのだが、それは異常に惹き込まれるリードだ。
去年のFredも少し思い出すような、月のようなイメージか。
音遊びーゆっくりの音の扱い方が独特で、私は最初の曲では無我夢中でフォローした。

なぜだろう。
この世のものではないような神秘的な間奏でのSaidのリードは、いつの間にか私に、8ヶ月前のスペインフェスティバルでの感情をも思い出させた。

無理やり抑え込んで、忘れ込ませたはずの感情が、久しぶりに現れた。
あの頃の感謝や色々な感情が8ヶ月の時を経て、ここヨーロッパでSaidにより、再び出て来たのだ。
Saidの絶妙なリードと、心に何かを語りかけて来るような音楽によって、私の足先や手先は、当時の喜びや感動、そのあとの悲しみを、私の頭が何かを考える前に表現していた。
私の目は、それらを見た。

間奏の雰囲気が、8ヶ月前のものと似ていたからかもしれない。
そんな間奏を経て始まった、楽園のような優しげな曲では、喜びや感動を。
別のミステリアスで短調の曲では、悲しみが放出された。
Saidは、それをとても優しく、指と身体と心で受けとめてくれた。
曲と曲の間奏までも、なんと相手の感情に寄り添って踊ってくれるダンサーなのだろう……舞い上がっていた始めの自分は影を潜め、魂からSaidの踊りに入ることが出来た。

私の魂はキゾンバを踊りながら、喜び、感動に浸り、そして泣いたのだった。
どうして、このダンスはこれだけ様々な感情を私にわき起こせるのだろう。

Saidの絶妙なリードと吹きあれるAlbfeiraの風によって、私はやっと、再びわき起こった感情と向き合うことができた。

経験しなくていいなら、しない方が楽かもしれない。
でも、例え後に悲しみが待ち受けていたとしても、あれ程の感動が体感できるなら、導かれて良かったんだと、Saidとの素晴らしいキゾンバで私は思うことが出来た。

Azzedineとのキゾンバ:彼の王国への飛翔

翌日のパーティーで、前日とはまた違ったメイクをして、香水をつけてパーティーに参上するのも、ヨーロピアン・キゾンバパーティーの楽しみの一つ!
フランスの仲間が、そんなドレスコードにも気づいて声をかけてくれた。

「タンツ!今日は無事会えたね!」
「A!会えて良かった、これまたすごい人だね。“ドレスコード:ルクシス“にばっちり合ったトップス、素敵!」
「君も、ドレスコードに合わせてワンピースも光ってるじゃない(笑)もう踊れる状態?」
「うん、ちょうど靴も履き替えた所!」
「いいね。昨日会えなかったリベンジで、踊ろう!」

フランス仲間は、明らかパワーアップしていた。
コネクションはより柔らかくなり、懐かしく、そして気持ちのいいリードで、すごくリラックスして、互いに気持ちを入れて踊り明かせた。
懐かしさと再会の喜びに浸り、仲間と深く感謝のハグをして目を開けると、視界のすぐ先では、Azzedineが踊っているではないか!
ハグをした後、仲間は耳元で聞いた。
「タンツ、前回のスペインと同じで、今回も先生とも踊りたいの?」
「もちろん!」
「俺、きっとチャンスを作ったよ。ファイト!」
「A……!あなた、なんて神行動!」

フランスの仲間は、いつの間にか素晴らしい場所で踊ってくれていた。
私が知らない間にもはや、アセディンへのアプローチとしか思えない場所、つまりアセディンの隣で常に踊っていたのだ。

そして、到着して30分もたたない内に。
フランス仲間と踊り終えて5分もしない所で、Azzedineはその時の相手と踊り終えると、私に優しく手を差し出して踊りに誘ってくれた。
なんとも、奇跡的だ!

何十人もの女性が待っている中、時間が遅くなり一曲しか踊ってもらえなかった人、全然参加者達にチャンスが回ってこない最終日のような日もあったという中、私はAzzedineと4曲踊れて本当にラッキーだった。
良い行いは日々心がけてはいたが、今回も神が味方してくれたことに感謝したい。

Azzedineのリードは身体が溶けそうな滑らかさがあり、それでいてダイナミックさも持ち合わせていた。
アップテンポながら、メロディーラインは美しいタイプのアーバンキゾンバ音楽が魅惑的に流れる。その音楽の中でAzzedineは、羽がついた王子のようだった。
飛ぶように、私をどこかに連れ去るようなリードで、私を導く。

なんて、気持ち良さそうに踊るのだろう。
なんて、滑らかの中にもキレがあるのだろう。
その上、私がアルゼンチンタンゴもやっていることを踊りながら感じてくれたのか、タンゴの表現もできるようなリードまで入れてくれる。
世界の頂点にいるAzzedin王のダンスに、私は酔いしれた。

その日のAzzedineのレッスンテーマは、オープンポジション(ペアが向き合わずに横向きに広がって踊る)のやり方だったが、
「レッスンの内容が出来るかそれもやってみよう」
と言ってくれているかのように、その日教えてくれた技も優しくかけてくれた。

無事成功した時、満面の笑みでアセディンを見てしまったが、アセディンは「出来てるよ」というように、とても魅力的で優しい笑顔で頷き返してくれた。
お人柄の素晴らしさはレッスン編で既に触れた通りだが、言葉がないダンスでも、優しさや相手(それも、私のような無名の素人)へのリスペクトを、各所で伝えてくれる。

終わりのハグまでも、それは続いた。
口に手を当て喜びを隠し切れなかった所はばっちり仲間達に見られていたようで、翌日仲間達にネタにされて、真似までされてしまった(笑)
フランス仲間、Aの偉業にも、感謝と感動が残った。

ホットなダンサー達と:歓喜のキゾンバ

このように、いきなりやって来たAzzedinとのキゾンバに感動し、視点も定まっていない所(笑)、前夜も踊り明かしたイタリアの魅惑的なタクシーダンサーがこの日も手を差し伸べてくれた。

良い行いは、積んでおくものだ!

ある程度インストラクター(先生)と踊り明かせたら、素敵なタクシーダンサーや参加者達と思い切り踊り切ろう!

初日から一曲きちんとフォローしたり、音をおもしろく表現したり、他のダンスの要素も表現していると、彼らは覚えてくれ、連日踊ってくれたりする。

様々な曲で呼吸を合わせて踊った、このイタリアタクシーダンサーは、振れ幅のある踊りがとても魅力的だった。
スローな曲では繊細なリードで、お互いを感じソフトに踊り切ることができた。
早い曲になると感じをガラッと変えてきて、表情も別人のようで、私を女優のような気分にさせてくれた。
「イタリアの劇俳優からキゾンバダンサーに転向したのかな?」
などと、踊りながら色々な想像を掻き立てられる!

ラッキーは続き、次はパーティーにだけ参加しているというフランスダンサーと踊った。

狭い所でも、生まれて初めて体験するようなリフトやスライドを、まるでサイーダをするかのように自然に入れて来るのに驚愕しながらも、私はそれらのリードに着いて行けた。
「わ、この数日で私、上手くなってる!」
と実感を感じられた。
もちろんそれは、素晴らしいリーダー達が、実力の100倍ほど上手に感じるように踊らせてくれているからなのだが……(笑)

楽しそうに夢中で踊っている私をどこかで見ていたらしいスペインダンサーが、フランスダンサーと踊り終えると同時に私を誘って来れる。
ドレスコードに合わせタキシード風の服を着た、このエレガントなスペインダンサーとは、1時間ほど踊り明かしたけれど、タラーショはじめ、音当てや全てがとにかく面白く、様々なキャラクターを共に楽しんだ!GuiuやNunoが指導しているからか、スペイン人は踊りのキレやリズムの取り方に見惚れる人も多いが、彼も一人で踊っていても絵になる程、踊りそのものが魅力的だった。

タラショでは、12月に地方でのSho-tan先生レッスン、そして3月にBiina&Jessica先生とKathikが開催してくれた東京でのJah J’aのレッスンが本当に役に立ち、パーティーでも、クラブで踊ってる時のように動物的に踊り狂うのではなく、ちゃんとコネクションを意識してフォローができた。
相手の即興技を待ったり、自身の即興技も表現できた所は、前年のスペインからの成長を感じられた所で嬉しい。
海外フェスティバルに行く場合は確実に入ってくる、タラーショ。
海外遠征をする場合は、東京のタラーショイベントでタラーショにも慣れておいたらより楽しめる。あの貴重な2回のレッスンにも、改めて感謝した。

タクシーダンサーはスペインフェスティバルの時のように、いつもど真ん中にいるとは限らない。
入って真ん中手前、手前の奥にも絶妙に混じっていた。
だからこそ、踊っている内に場所が移動して来ていたら、その自然な移動に身を委ねるのが吉かと思う。

そこから先が、またもやミラクル続きだった。
ズーク、タンゴ、色んな要素が混じったダンスをしてくれた、ポルトガルのタクシーダンサー、そしてレッスンで仲良くなった上手なダンサー達とタイミングよく会え、次々と魂が喜ぶダンスを展開してくれる。
テンションは、またもや激上がりである!

彼らはレッスンの時の練習から、与えられたステップ以上の技を入れ、既にフォロワーを驚かせ喜ばせてくれていたが、パーティーはよりエネルギッシュな技や美しい技、されたこともない技をどんどん入れてくれるのだ。
「ちょっと待って……最高!」
心は飛び跳ねるように喜び、時間も忘れ夢中で楽しく踊り倒す自分がいた。

この辺りのテンションは異常で、日が昇って来ているというのに、眠くないという……キゾンバの、このフェスティバルのすごい魔力を感じた。

レッスンでJPが言ってくれた言葉が、脳裏で思い出された。
「お互いを感じて、お互いダンスをしよう。お互いのダンスを見せ合おう。ただ、リードとフォローをするのではなく」
それがまさに出来るダンサーが溢れるようにいる、このオープンサマーフェスティバルのパーティー。
あなたの心も歓喜と狂気でいっぱいになることは、間違いないだろう!

午後〜夕方:テラス&プールパーティー

夜中行われるパーティーに加え、キゾンバフェスティバルではレッスンの時間と並行して、午後や夕方にもパーティーが楽しめる。
だから、レッスンは全く参加せずパーティーだけを楽しむ人の割合も、他のダンスより多かったかと思う。

金曜のテラスパーティーは、5階レッスン会場と同じ階のテラスで行われた。
たくさんのヤシの木を見下ろしながら踊っていると、アフリカのジャングルを見ながら、ヘリコプターの上で踊っているような感覚にもなる。

ドイツさんなど、初めて踊る人達のレベルの高さにも喜んだが、スペインのキゾンバフェスティバルで踊り狂ったダンサーと再会ダンスを楽しめたのも、とても思い出に残っている。
「Hey!久しぶり!」
「Wow!あなた、スペインのカルガフェスティバルにいたよね?」
「うん、帰りのバスも一緒だったよ!僕のこと、覚えてる?」
「もちろん!バルセロナのAでしょ?私のことこそ、覚えてる?」
「忘れる訳ないだろう!日本の、タラショが最高に楽しかったタンツ!」
このスペインAとの再会ダンスも、またもやタラーショだった。(笑)

土曜、日曜は、1階にてプールパーティーが行われた。

1日目の土曜日は輪の中に入って、とにかくはしゃいだ。
はしゃいでいる人達や熱気に包まれた雰囲気、そこにどっぷりと浸かった自分達も、たくさん携帯のカメラに収めた。

最初は夜のパーティーと同じくペアで踊りを楽しむけれど、終盤はアフロ系、センバ系の曲が数フレーズごとにミックスして流れ、人々は雄叫びをあげたり、皆で同じ振り付けで踊ったり、子供のように1つの列車になり、プールの周りをを一周したりする。

もはや子供、というか動物のノリといった所か!
童心に戻って、わんぱく子坊のように周りにいる仲間とはしゃぎまわるのは、それはそれですごく楽しかった!
狂ったようにアップテンポの曲に合わせてペアで、グループで踊り明かしたり叫んだりすることで、久しぶりに真面目な社会人であることを、しばし放棄出来た気がした(笑)。

2日目の日曜日は写真撮影よりも、その場の雰囲気を五感でしっかり記録した。

前日心を通じ合わせて踊り明かした人がたまたまやって来て、サンセットが近いプール周りを散歩したり踊ったりした。
列車ごっこや輪のダンスが始まると、そんな彼らをプールサイドから愉快に眺めたりした。
翌日には日本に帰らないといけない事実が、私を感傷的にしていた。

キゾンバやダンスの魅力ついて、人生で残したいものについてなどを語り合うのに、盛り上がりが止まらないセンバやアフロの音楽は少しミスマッチだったかもしれない(笑)
それでも、いよいよサンセットにかかって来たプールパーティーの雰囲気、そして開放的なアルブフェイラの風は十分に堪能できた。

「明日なんて、来なければいいのに」
という在り来たりな言葉がとても似合う場所、シチュエーション、時期は、訪れるべきタイミングでふとやって来たりする。
このフェスティバルは、そのようなロケーションが見事に出来上がっていた。

今回のフェスティバルではまた、夕方のパーティーも夜のパーティーも、スペインのそれとは全然雰囲気か違ったのも印象的だ。
同じ、イベリア半島なのに。

スペイン・カルガフェスティバルは、夕方、夜ともに、最後の30分~1時間はドゥサーで静まって行くのに対し、ここAlbfeiraのフェスティバルは、最後に向けてテンポアップして盛り上がった。

私はどちらかというと、終わりはドゥサーでしっとりしめくくるスペイン・カルガの締めくくり方が、夕暮れや夜明けとよりリンクする気がして、より好きだ。

仲間の中で相当ダンスが上手な人に限って、
「テラスやプールパーティーは、行かない」
と言い切る人もいた。
床がダンス用ではないから、シューズや足が痛みやすいという。

でも、テラスやプールサイドでの景色は開放的かつ、サンセットはとてもロマンティックだから、個人的には普段のシューズに履き替えてでも、ほんの少しでも参加し、そのエネルギーを体感してほしい。

天からの導きでたまたま出会う人と、そこで散歩したり語り合ったり、そして踊ったりすることは、その場所でしかない景色と共に良い思い出、そしてドラマになると思う。

最終日:パーティー開始時間0時の驚き

日曜日のみ、私はアメリカの仲間と序盤からパーティーに参加した。
朝まで居れないのだから、少しでも長く踊りたかった。
「ドレスコード:トロピカル」を意識したワンピース、アクセサリー、香水をつけて、私達はワクワク会場へと向かった。

「明日、というか今日の9時には、もうここを出発してるなんてね……」
「一気に夢から覚めちゃうね。本当にあなた、もうキゾンバを踊らないの?私、半年も経たない内に我慢できなくて、アメリカからヨーロッパに戻ってくる予定だけれど(笑)」
「いいなぁ!私は、もうキゾンバでは戻って来れないと思う。今夜が人生最後のヨーロッパ・キゾンバだと思う」
「人生最後のキゾンバ……!それで午前2時半に帰って来ることなんて、あなた、出来るの?」
「もちろん。まだ荷造りも完了してないんだから、9時に出発できるために戻って来なきゃ(笑)」

アメリカの仲間が車を運転出来たおかでで、私達は9時に宿泊していたAir Bnbを出発し、互いの午後のフライトのチェックインに間に合うようにポルトガルへとドライブする予定だった。
これは誤算だったと、当時の私はまだ気づいていない。

「早く帰らないといけない分も、序盤から爆発させて行こう!」
「いいね!私もタンツを見習って、今夜は遅くても2時位まではステイしてみるわ!AやCは、もう到着してるかな?」
私達は、意気揚々とパーティーが開始したばかりの会場へと入って、他の仲間を探した。
スペイン・カルガフェスティバルでは、直前のレッスンに参加していた人達がそのままパーティーで踊り、ある程度の人が既にいたのだから、今回も30〜40人位からのスタートかと思っていた。

しかし!
会場に入ると、まだパーティー用の関節照明も完成していない。
既に開始時間から10分は過ぎているのに、準備中の雰囲気満載で、パーティーに来ているのは3人だけだ。
私達はなんと、4、5番目の貴重な訪問者になった。

「どんだけ夜型なの、ポルトガル人(笑)!!!」
「というか、このフェスの運営の人と参加者が、よね。ポルトガル人は、実質50分の1位じゃない?(笑)」
他の国の仲間達もまだ参上しておらず、私達はトップバッターで踊り始めた!

30分が過ぎた頃、やっとポツポツと人が数人やって来る。

「そろそろ人が来たし、それぞれ弾けよっか」
「タンツ、あなたは人生最後のキゾンバになるなら、思い切り弾けておいで。今日こそ踊りたいと言ってたJPとも、無事踊れるように応援してるよ」

トップバッターで踊っていたことが功を奏したのか、アメリカ仲間とハグをして、踊り終えた途端に誘われたスペインのタクシーダンサーが、タラーショもアーバンも素晴らしい世界を持っていた!いきなり、1時間近く踊り明かした。

これで、1時頃にやって来て「今夜は踊ろう」と約束してくれた、世界的インストラクター・JPと一番に踊るチャンスを逃してしまったけれど、それだけ集中して踊り明かせるほどスペインタクシーダンサーは独特のリズム感、雰囲気があった!

最終日ならではの盛り上がり

最終日はインストラクターは既に帰ってしまったり、心に決めた人や先生同士でずっと踊っていたりして難しくても、タクシーダンサーや参加者と最後にもう一度踊り明かせる big chanceだ。そして、まだ踊れていないダンサーとの最終チャンスも、そこには潜んでいた。

このように最終日にして初めて、私は独特の世界観を持ったスペインタクシーダンサーと踊ることが出来たのだから!まだまだ後ろ髪をひかれながらも、私はまだ踊っていない人気インストラクター、JPと踊るという目標を達成するために、感謝の深いハグをした。

「彼、最高だったなぁ……!さあ、今からJPと踊る目標を達成するために、先生達が集まるど真ん中DJブース前で戦うぞ!」

意気揚々と真ん中のエリアに行きJPの近くで待っていると、この日は最終日ということだからか、明らか先生争奪戦に参加しているフォロワーにも、リーダーは遠慮なく、立て続けに誘って来た。

緩急のつけ方が上手で華やかなリーダー、クラスで共に成長し共に踊った、素敵なリーダー達、プールパーティーでも特別な思い出が出来たスペインダンサーと、とにかくJPを待つ時間はなかなか与えられない。

日本でもよくかかっていた「Stop!」と一時停止が時々入る曲も、タイミングよくかかる。
私があまりにも完璧にStop!の所で止まったらしく、
「君、曲知ってるの?すごい!僕、知らないから一時停止場所、分からないよ〜!」
と、スペインダンサーは感動してくれた。
最初はそんな風に言いながらも、踊りのセンスが抜群の彼はすぐにタイミングを覚え、途中から二人で見事に止まり、ナルシスト風に止まる互いを見て、止まるごとに笑い合った。
太陽のようなこのスペインダンサーとの思い出も、このフェスティバルがくれた宝物。
再会を誓い合った。

「危ない!もう2時じゃん!帰る前に、今度こそJPと踊ってもらえるチャンスを掴みに行かないと!」
スペインダンサーを中心に一時間以上踊っていた間、JPはずっと、同じダンサーと一時間以上も踊っている。
誰とも踊らずJPを待っているらしいフォロワーさんは沸点の直前に来ているようで、
「これ、どういうことなのかしら……。“今夜こそ“って彼、私に約束してくれたのに……」
と唇を噛んでいる。

「その言葉、私もクローズドレッスンで言ってもらって喜んでたけどなぁ……(苦笑)」
と心で思ったが、彼女がより落胆しそうだったから、そのことは言わないでおいた。

そうして彼女達とJPを凝視(?!笑)していると、今度はリフトとスライドのマジシャンであり、連日フォロワー達に大人気だったタクシーダンサーが誘ってくれた。
ダイナミックに行ったり来たりするスライドやどこまでも高いリフトの数々に、テンションはもちろん上がる!
女子達はこのダンサーと踊りたくて必死になっているようだったから、そんな彼の方から誘って来てくれて踊ってもらえたことも、とても光栄だったと思う。

人気の先生、JP探しの先にあったもの

この素晴らしいダンサーと踊り明かした後、次こそJPと思いきや、なんとJPが消えている……。
もう一人踊れていない先生・サンジェイも、まだ現れていない。

時計を見ると、2時半所か3時近くなっていた。
「2時半位に帰る予定にしてたのに、全然帰れてないじゃん!急いで帰らなきゃ」
と、さすがに帰るモードが発動した。

このように、最終日も異常な盛り上がりがあることを前回で分かっていたのに、帰る日のフライトを午後にしてしまったことは、間違った判断だった。
これからヨーロッパのフェスティバルに行く方は、フライトは最終日の翌日の夕位以降だと、最終日の朝まで踊れてベストかと思う。

「JP、消えちゃったのかな。いないし.....。サンジェイもまだいないし。まぁ、人生最後のキゾンバになっても、これだけやり切ったから、いっか......」

JPやSanJがいないのを確認し、私はふうと息を吐き、ど真ん中の出口側のカベの凹みにもたれかけ、最後にほんの少しだけ、会場の熱気を肌で感じた。
人生最後になるかもしれない、世界最大級のキゾンバフェスティバルの熱気を、五感の記憶に残しておきたかった。

その時。
お洒落なトロピカルなシャツを着た誰かが、どこからとなくこちらにやってきて、手を差しのべてきた。
私はその手に反射的に自らの手をのせ、再びダンスゾーンへと導かれた。
「誰......?」
期待と恐れでまだ顔を見れていなかった。
その手の主の顔を見上げる。それは。
私が密かに踊りたいと思っていた人だった。

濃く塗った自身のルージュの唇が、思わず嬉しそうに微笑んでいるのが分かった。
私の魂は、喜んでいた。
広い会場で私はJ Pやサンジェイを見つけられなかったが、その人はどこからか、私を見つけてくれた。
その人も、レッスンでの微笑みよりもずっと深く、嬉しそうな笑顔だった。

私達は、互いの喜びをキゾンバにぶつけた。
時計の針は、この辺りから私の意識からなくなった。

誰もが、その場所でのフェスティバルだから、その日のパーティーだから、その人だったから起こり得るダンスと思い出を経験する。

流れるようなキゾンバ寄りのアーバン、爆発的なテンションを持ったアーバン、ビートを効かせたタラーショ、アンビエントなドゥサーなど色々な曲を、一人ではなく二人で操る楽しみを満喫する。

手を繋ぐと、それはそれは色々な種類の手がある。
その人の手はレッスンの時は違い、序盤から汗ばみ熱かった。
パーティーでコネクションを組むと、特にヨーロッパでは色々なタイプの香水の香りを楽しめるが、その人は爽やかな身なりとは対象的な香水で自身を印象づけていた。

ダンスでは魂が、自分が意識する前に何かを相手に伝え、そして相手も何かを表現して来るタイプだと相手からも色々伝わって来るものだが、その人からは興奮、胸の高まりが伝わってきた。
レッスンでは結構冷静かつ優雅に技をこなしていたイメージがあったが、この時はとても情熱的だった。

情熱的に踊っても重心がバウンドすることは決してなく、2人で宙に浮いて踊っているような気分にもなれた。

踊りで通じ合えたリーダーと踊っていると、肩にかかる息遣いもより感じる。
お互い連日、腹十二分目の溢れんばかりのレッスンを受けたから、早速その音楽性や表現、ステップをしてみようとするその人の気持ちが、私も分かり、共に楽しめた。

繋ぎの部分で水が滴り落ちるようなメロディーが流れると、それまで火のように激しく踊っている人も違う一面を見せてきたりする。
その人の心も、少し落ち着いたようだった。
Said がその日のレッスンで、
「早い所でやると、それは音楽性や勢いを崩してしまうけれど、ゆっくりの所はタンゴのようなスタイリングもどんどん入れたらいいよ」
と言ってくれたことを思い出し、間奏では自身の足を好きにもて遊んでみた。
そのタンゴのようなムーブメントをその人も気に入ってくれたのか、その後何度も、このような自由時間を与えてくれた。

時々、その人はコネクション(ペアの組み方)を浅くして、私の顔を見てきた。
私はそれに気付くと微笑み、彼も微笑み返してきた。
優しげな流れのある曲ではそのようなフェイスコンタクトだったが、それがとても悲しげで異常に美しい曲になると、笑顔や微笑みという仮面すら互いから剥がれて来た。

魂の奥底の感情が、そのまま表情になって現れているのが分かった。
相手は、鏡だ。
私も、その人が感じている踊りと音楽に入った。

5曲から7曲位まではなんとなく曲や踊りも意識していたが、その後も何曲踊っても、コネクション(ペアを組んだハグ)は解かれない。
明らか一時間以上踊っているような気がしたら、よほどじゃない限り一度は腕時計の時間を見たりするものだが、最終日の最終ダンス。
時計を見ることも、忘れていた。
もはやJPが消えたのか、サンジェイがやって来たのかは、頭から完全に消えていた。

互いが息切れするまで、その時間は続いた。
その人は、それまで見たことのない感極まった表情で笑い、
「ありがとう」
と深くハグをした後、私に何かを言った。

音楽が激しく鳴り響いていて、聞こえない。
「何?もう一度言ってくれる?」

その人がそこで、感情的に耳元で叫んで来た言葉は、私を思わず微笑ませた。
この言葉は、忘れないだろう。苦しくなった時にも思い出したい、その言葉を。

夜。特に夜中は、全ての人間を詩人に、そしてアーティストにする。
その夜も、色々なダンスや物語が、このホテル会場のあちらこちらで展開されただろう。

こうして、ダンス小説というものは完成するのだろう。

最終日の夜というものが、ここにいる者達をより人間らしく展開させる。
私達がAIではなく生物だということを、五感が訴えて来る。

もらった、甘いカクテル
ヨーロッパにいた頃大好きだったそのカクテルは、昔愛した味のままだった
導かれてテラスに出ると、風が髪を、唇を、足を揺らし、吹き抜けて行く
その瞬間には、私が魂の奥底で実は欲しかった全てがあった

意味ありげに、荒々しく揺れる風
その風が揺らす世界
眼下で情熱的に揺れるヤシの木群
対照的に沈まりかえった、すべり台

そこに静かに響く、自分達の声
ワンピースから香る、交じり合った香水
肌寒い風がふく中、その香りと感触はどこまでも温かい

これらの全てが私のキゾンバ、ダンス、そしてこのフェスバルの思い出になり、宝物になった。

まとめ:キゾンバの不思議な魔力

どのダンスのフェスティバルのパーティーにも、楽しく感動的な踊りと物語がある。
4つのダンスのフェスティバルのレッスンとパーティーで、「忘れられないダンス」と様々な感情をもらえたことは、私のこれからの人生に不思議な彩りを加えてくれるだろう。

その中でも、どうしてヨーロッパでのキゾンバのフェスティバルでは、ここまで毎回何かが、そして感情が動くのだろう。
それは、魅力というよりも、もはや魔力のようなものだ。

会場の雰囲気?
ダンスや音楽との相性?
ちょうど3年踊って来たという、年月?
天からの導きによって、出会った人?
きっと、全てだろう。

とりわけキゾンバは、流れる音楽の幅がすごく広いのも、より“何か“が動きやすい要因かと思う。

Alborが教えてくれたように、炎のように燃え上がるアーバンキゾンバがある一方、水のように流れるような優美なアーバンキゾンバだってある。ラクダやロバに乗ってスーク(市場)を翻弄しているかのような、神秘的なアーバンキゾンバも。火山の真ん中、パリのエッフェルタワーの最上階、マラケシュやチュニジアなど、北アフリカの一角など、色々な場所へと旅できる。

同じパーティー内で、一曲タンゴが踊れてしまうような美しいメロディーのゆったりとしたキゾンバも、流れる。長調と短調で、また全く違うものを感じ、表現することが出来る。虹が何重にも広がる壮大な滝の前、静けさが逆に魅力的な、このアルブフェイラのテラスやプールサイドのような場所を感じさせる。

歌うかのように、優美にその曲に2人で入っていたかと思うと、稲妻のごとくいきなり効果音が耳をつくタラーショの音楽が突如として現れたりする。
天使が、いきなり悪魔へと変貌する感じだろうか。サンジェイの言葉も、思い出す。
真夜中に墓場から出て来たガイコツのごとく、隠し持っている感情を爆発させたり、リズムを好き放題感じたりして楽しむ。

リズムをもて遊んで踊り狂っていたら、天国からの招集かと思うような、撫でるようなドゥサーが私達の感情を鎮め、癒しにやって来る。
美しい海辺や神秘的な森で囁き合うかのように、呼吸を合わせ、そして癒し合う。

これら4種が主にかかるパーティーやイベントではあまりかからないかもしれないが、ここに、明るく楽しい雰囲気を炸裂させたようなセンバ、メレンゲをよりゆったりさせ、官能的にしたようなコンパというダンスもあり、このキゾンバの幅は本当に広い。

世界的なインストラクターを集結させているようなフェスティバルでは、これだけ幅広い種の踊りと音楽を、それぞれにとってベストな相手と共に表現し合えるはずだ。

私はヨーロッパのキゾンバフェティバルに参加できたこと、これだけ幅広いキゾンバの魅力に触れられたことに感謝している。
このダンスは例えプロになれなくとも、趣味として軽く楽しむだけでも、奥深い喜びを必ず与えてくれるだろう。

そして現実から完全に解放され、より人間的に過ごせる旅先でこそ、互いにより人間的で感情的になった状態で出来上がるキゾンバ、そして物語があると思う。
ヨーロッパは特に、レベル、シチュエーションの両方から私の魂を魅了してくれた。

3年という短く浅い期間だったけれど、キゾンバと出会わせてくれたHさんから始まり、私のキゾンバ物語に偶然に関わって下さり、支えて下さった全ての人達のおかげで、こんな体験が出来たことに、心からの「ありがとう」を言いたい。

まだまだ宣伝力や文才に長けておらず、私が溢れんばかりのキゾンバへの気持ちを伝えても、あまりキゾンバを始める友人はいなかった(笑)。

でも年月が経って、この長すぎる記事のどこかだけでも、誰かの役に経ったり、誰かの心に留まったり、もしくはキゾンバを始めるきっかけになってくれたら。
私は嬉しい。

出来たら、記事には書けなかった色々なエピソードも含めて魅力的に編集して、いつかダンス小説にしたい。
それは夢として、まだ持ち続けていこうと思う。

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