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分散する影響力:"The End Of Power" と「国家」そして「中東政治入門」

今年5冊目の洋書、Moises Naim の "The End of Power" は思うように捗らず、5月末に読了したいところだったが、まだ 51%だ。

The More, Mobility, Mentality revolutions の3点の大きな変革によって影響力が分散化していく現代。あらゆる分野で、誰もが何に対しても決定的な影響力を持てなくなった現代。そして誰もが決して無視できない影響力を持てるようになった現代。それはなぜか。なんとなく当たり前ぽい視点と内容だが、とはいえ、とても面白い。

"More Revolution" とは、年々、物質的に豊かになりモノがあふれていくとともに、情報があふれ広がり、それが加速していく状況のことだ。”Mobility Revolution” とは、飛行機や高速鉄道、自動車など、移動手段の発達とともに、物理的・地理的な移動にかかる費用や時間がどんどん短縮されていることとともに、社会の様々な分野で物理的・心理的な参入障壁がどんどん低くなっている状況を言う。そして権利や多様性・差別、環境や持続性といったことに対する人々の考え方や意識が大きく変わってきていることを "Mentality Revolution" としている。

これらは、もちろんインターネットや移動体通信の発達、アルゴリズム・ソフトウエアの進化によるコミュニケーション革命によるものである。そして、この本では触れられていないが、ことに半導体技術の発達・プロセスの微細化がこれらの革命のバックにある。

ページ数は322ページ程度なのに、ページあたりに文字がぎっしりつまっている感じだ。格別難しい単語が並んでいるわけではないのだが、普段見慣れない単語が多く、なんとなく読みにくい。文章もそれほど複雑なものではないが、頭にすっと入ってこない感じで、あんな事例もある、こんな事例もある、という具合で少しだれ気味だ。読んでも読んでも進まない感じがあって「今日こそしっかりと読むぞ」と本を開きつつ、その気合が持続しない。

そういう本は、たまにある。それで内容がイマイチだと早々にギブアップして次の本に進むほうがよいのだが、この本は面白いけれども、ちょっと微妙な線だ。やはり大事なテーマだと思うのでまだ粘ってみようと思う。まだ3週間くらいはかかりそうだ。

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プラトンの「国家」は読了した。イデア論などひととおり知っているつもりではいたけれど、やはり読んでよかった。

国家や人間のあるべき姿、そして現実の姿とその性質、その中で正義とは、知を真実を愛するとはどういうことか。私達はどう生きるべきか。2週間前にも書いたけれど、ほんとに約2400年前に書かれたものか、と茫然とした読後感。一部、本質的ではない部分で難解なところがあり、理解しないまま文字を追うだけで飛ばしたところもあるが、そこは拘る必要はないだろう。これからゆっくりと消化するつもり。

食べ物でも飲物でもそうだが、たくさん食べてたくさん飲めば栄養がついて骨が頑丈になり筋肉もつき、持久力も瞬発力も即座に高まるというものでもない。まず、それに見合った消化能力と消化時間が必要で、もちろん強靭な消化器官をもつことが必要であることは言うまでもない。

食事の量と質、消化吸収能力、瞬発力と持久力そして制御を伸ばすトレーニング、そして試合での遂行能力、すべての面でバランスよく螺旋を描くように伸ばしていかないとうまくいかない。脳みそだって同じである。インプットの量と質も、分析・演繹・推論・写像・比喩・結合・総合といった消化・吸収プロセス、それらが知となり肉となって初めてアウトプットができるわけだ。

さて「国家とは何か」「影響力が分散する世界」を考えつつ、末近浩太著「中東政治入門」を読み始めた。あまりちゃんと計画をしていないのだが、今年のキーワードは「世界を知ろう、まずは入門」といったところだが、アメリカ、中国と入口を少し開けて覗いてみたので、次は中東だ。

ついこの間イスラエルとガザの衝突があったし、シリアの内戦、イランやイラクの情勢など気になることも多い。そして、日本にとってはとりわけ経済・産業活動で深いかかわりがあるので、中東の歴史と政治について知見を持つことは欠かせない。

言うまでもなく、中東も、アメリカや中国に負けず、地理・資源・気候・歴史・民族・宗教など複雑な世界だ。そして、欧州による植民地支配の歴史やアメリカやロシアも加えた権益争いなど、近現代の世界史とつなげて学ぶことが必要であろう。今どうであるかを知るだけでなく、なぜ、今このようになっているのか理解したいと思っている。読み始めた感触は非常に良好だ。また、わかった気になってしまうのが問題になるだろう。

世界中の紛争が早く解決しますように。


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