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自分の羅針盤を持とう 2:Clayton M. Christensen, James Allworth & Karen Dillon "How Will You Measure Your Life"

"The Innovator’s Dilemma" (邦訳「イノベーションのジレンマ」)で有名な、クレイトン ・M・クリステンセンの "How Will Measure Your Life" を読了した。

ハーバード・ビジネス・スクールで厳しい勉強をこなしMBAをとって卒業して世に出ても、もちろん、全員が成功するとは限らない。人生は仕事だけではないし、家族、社会、さまざまな側面で失意や挫折を味わったり、場合によっては粉飾決算といった犯罪に手を染めてしまうことだってある。クリステンセンが卒業生に贈る、人生を誠実にしっかりと生きようというメッセージの詰まった一冊。そして、ノウハウや小手先のハウツーではなく、むしろ、幸せに生きていくために立ち返るべき法則、あるいは原理原則というか、理念、というべきかもしれない、を暖かく説く一冊だ。

本書の最後で、著者はこう書いている。

I have written this book with my wonderful and capable coauthors to help you to be successful and happy in your career. We hope that it will help you find deep happiness in the intimate and loving relationships with members of your family and friend. ...... We hope that this book will also bolster your resolve to conduct your life with integrity.

私の拙い訳では、以下のような感じだろうか。

私は素晴らしい共著者とともに、あなたが成功を収め幸せにキャリアを築ける一助になったらよいと願ってこの本を書いた。また、この本が、親密で愛すべき家族や友人との関係の中で、あなたが深い幸せを得られる助けになることを願う。(略)また、この本によって、あなたが誠実で一貫した人生を送る決心の支えになればと願う。

そして、この文のあとに、次のように続けて、本書が締めくくられる。

But most of all, we hope that in the end. we all will be judged a success by the metric that matters most.
How will you measure your life?
とはいえ、最終的には、私たちは皆、自分自身にとって一番重要な指標をもって、何をなしとげたのか判断することになる、そのことを私たちは切に願う。
あなた自身の人生の指標はなんだろうか?

さて、クリステンセンは、幸せな人生を送るための基本的な項目は3点あると説く。

Priority (優先順位づけ), Process (実行手段・能力), Resource (時間とお金、体力、など、持っている資源の割り当て) である。

1. Priority
まずは、自分がやりたいこと、人生の目的がなんであるか。そして、自分のおかれた現在の状況を理解する必要がある。安定して未来が見通せる状況なのか、それとも、変化が激しく一寸先がやみなのか。そして、自分のやりたいことを念頭におきながら、機会に応じるか、脅威に対応するのか、バランスをとった計画を立てて、優先順位を明確にすること。
2. Process
実行能力と手段を持たなければ、計画は成り立たない。持っていなければ、自分で獲得するか、それともアウトソース(外部調達)するしかない。しかし、アウトソースは注意が必要だ。本質的なところを外部に出してはいけない。
3. Resources
そして、お題目だけ唱えていても仕方ない。設定した優先順位に応じて、時間・お金といった自分が持っている資源を適切に割り当てることが特に重要。

本書の内容をおおざっぱに紹介しておこう。

最初のパートでは、ノウハウやハウツーやすぐに効く処方箋ではなく、原理原則が大事であることが強調されている。簡単明瞭でわかりやすい解決策を安易に他人に求めてもあなたの問題はたいてい解決しない。それよりも、原理原則を理解してそれを適用することで、より効果的な解決への道を自分で見つけることができる、と説く。

そして、Section I で、キャリアを築くという文脈で、上記の3点について、それぞれ解説している。

Section II で、これらの3点を軸にしつつ、家族や友人との関係構築という文脈で説いていく。特に、自分の家族が、そして組織が、それぞれ「優先順位、能力・手段、資源の割り当て」を自律的に正しく判断できるためには、家族や組織の文化をじっくりと時間をかけて辛抱づよく醸成することが大事だ、と強調されている。

最後の Section III は短いが、章題は "Staying Out of Jail" - 要するに「牢屋に入らないようにするには」 - である。最初の「まぁ、ちょっとこのくらいなら」という意識から犯罪への道につながっていくからして、自分の道徳や決め事にはいっさい妥協しないことが肝心だ、と説いている。


それにしても、ビジネスでの成功を夢見て頑張りすぎて、勉強に、仕事に、家庭に、疲れてしまって「私は、これまで、いったい何してきたんだろう?」「幸せな人生っていったい何?」「私のこれまでの人生は間違っていたのだろうか?」と悩み苦しむ人は多いのだろう。この手の本は多い。

有名なスティーブン・R・コビーの「七つの習慣」を思い出す人も多いと思う。30周年記念改訂版が出版されたらしい。

https://www.amazon.co.jp/Habits-Highly-Effective-People-Powerful-ebook/dp/B07WF972WK/

また、本書はハーバードだが、以前に紹介した "The Highest Goal"はスタンフォードだ。

人生は、よく、航海にもたとえられる。そして、その航海は、あなたが主人公の物語でもある。

航海には自分の羅針盤を持とう。

さて、これで今年の洋書は10冊目読了、今年の前半は、時間の割り当てがうまくいかず、1冊ビハインドとなっている。年末までにあと2冊読めば年間12冊の目標は達成できるが、どうだろうか。年末年始の休暇を長くとろう、という全国的な方針があるし、この様子だと、年末はどこにも行かずに静かにひたすら読書、というのが良いかもしれない。

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