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Ludwig von Bertalanffy "General System Theory"

今年、再読しようと思っていてまだ読めていない本が Bertalanffy (ベルタランフィ)の "General System Theory" だ。1969年に出版された本だが、1940年ごろの論文や1967年ごろのエッセイなどが9つの章にわけてまとめられていて、冒頭にこの版のための introduction と最後に2つの短い Appendix で構成されている。

Amazon の記録によれば私はこの本を2002年に購入して、以来、何度か読んでいる。

購入した当時は、まだ洋書を読むのにかなり四苦八苦していて、単語の意味など細かく書き込んであり苦労して読んだことが伺える。

今なら kindle版 も購入できるようだ。

現代科学への批判として、自然や人間や社会、あるいは文化までも、構成要素に分解して、細分化されたそれぞれの要素を詳細に検討した後に組み立てる、そんな要素還元主義の限界について論じられることが多いと思う。

それに対して、生命現象は、そのような要素還元主義で表すことはできず、生きている姿全体として捉えるべきであるとし、あるいは生命とは、私たちから分離されて外側におかれた分析される対象ではなく、私たちの内側にあって私たちが生きているそういう活動である、そういうものであるからして知性・科学でとらえることができない、というような考え方がある。

ベルクソンの「創造的進化」を、今年の7月から読んでいるわけだが、そのような考え方が知性の働き、その純粋系としての科学・数学について考察されている。

死んだ魚を解剖して研究しても生きている姿を理解することはできまい、とよくいう。あるいは「だから西洋の科学には限界があり、東洋思想も大事なのだ」と主張する人もいる。

しかし、西洋の知恵を侮ってはいけない。彼らは、百数十年も前からそんなことはとうに承知で、システムを全体から見て、時間軸にしたがった発展や安定性・不安定性について広く適用できる一般的な理論を作ろうと知性によって徹底的に追及していく。情緒的に、東洋の知恵が優れている、などと短絡はしない。

生命・生物学といった領域だけではなく、開放系や複雑系、非線形性、自己組織化、制御といった現代の自然科学や工学を理解するうえで大事な考え方の基礎であるし、また、システム・ループ、システムズ・シンキング、シナリオ・シンキングといった考え方の基礎でもあり、射程が広く長い、そんな本だと理解している。

特に科学技術に携わる人、あるいはプロジェクトマネージャのようなコンセプチュアルなスキルが要請される人は、ちょっと触れるだけでも、読んでおいたほうがよい本ではないかと思っている。

理論そのものの重要性もあるが、安易な反知性主義や、安易な科学万能主義、そんな態度を寄せ付けない姿を感じることができるのではないか、と思う。

辞書を引き引き読んでいたことが伺える

いずれ、再読を果たしたら、ちゃんと整理して書いてみたいと思う。


ところで、再読も含めて読もうと思って読めていない本、途中でギブアップしてあきらめた本、読んだのに全然身についていない、憶えがない、そんな本もあるものだ。いったい皆さんはどう整理しているのだろうか。

来月、General System Theory に絡んだ本を一冊読んでみようかと Amazon を検索してみたら、An Introduction to General Systems Thinking という本がひっかかり、「お、来月これ買って読んでみるか」と思ってクリックしようとしたところ、2018年に購入していることがわかり、慌てて手元の Kindle をチェックしてみたら 15%程度のところで挫折したあとがある。

よっぽど面白くなかったのかもしれない、まったく覚えがない。そのうち読んでみようかと思いつつ、たぶん読返すことはないだろうな、とも思う。人生はあまりに短い。

そして、この本の横にKen Wilber著の "A Theory of Everything"が表示されている。あれ?どんな本だったかな、と思い開いてみたらかすかに記憶がある程度である。

大げさなタイトルのわりには「ふーん」という内容だったのに違いない。念のために facebook を検索してみたら、2019年8月19日に読了したということで日本語の比較的長文の感想と、英語で書いたやはり比較的長文の感想と、念がいったことで2本投稿している。本当に、これらは私が書いたのだろうか、と訝りつつ、インテグラル理論、そういえばそんなこと書いてあったな、と思い出した。

読書のまとめはなかなか億劫ではあるけれども、書いておけば書いておくだけのことはあるものだな、と改めて思ったが、読むスピードや書くスピードの改善とともに、読み返しはどうあるべきか、また、読んだことをどう自分に定着させていくべきか、新しいアイディアに結び付けてくにはどうしたらよいのだろうか。

新しい知識の獲得と新しい知識の創造と定着、という生きている全体を俯瞰しながらシステマティックに考え直すべきかもしれない、とも思いながらこの記事を書いていた。



■追記

2019年8月19日 facebookへの投稿に少し加筆訂正して転載:

Ken Wilber著の "A Theory of Everything"を読み終えた。簡単に感想文を記しておく。

著者は、提唱するインテグラル理論に関連して多数の著作を著しているし、最近話題になった「ティール組織」への序文も寄せているので、知っている人も多いであろう。2000年に書かれた本なのでそれほど新しくはないが、最近、一部でちょっと話題になっているようなので読んでみた。

著者は4つの象限の平面と、8つのレベル(あるいはミーム、あるいはウェーブ)の垂直軸を与える。各象限は分野、つまりは空間、レベルは、進化や発展の段階あるいはヒエラルキー、つまりは時間軸ととらえることができる。

4つの象限の平面は、縦軸を精神と物質の二元論、横軸を主観と客観の行き来、とした2軸によって作られ、それぞれの象限は、”自己”、”物体”、”私たち”、”環境”(原文では、"I", "it", "We", "Its")と表わすことができる。

これらの象限は、一つは、自分自身とその意識、二つ目は、脳と身体組織、三つ目は文化と世界、四つ目は社会と自然の領域となる。

そして、それぞれの平面は、8つのステージがあり、著者は色で表している。1段階目として6つのステージ:ベージュ、赤、青、オレンジ、緑、そこから飛躍した2段階目として2つのステージ、黄とターコイズ。

ティール組織とそれにまつわる理論は、組織論を、このインテグラル理論に照らし合わせて整理したものと思われる。私の理解が正しければ、色の階層数とその定義を若干整理して、2段階目をまとめてティール色にしている、と考えられる。

また、重要なキーワードとして、ケストラーが提唱したホロンや、ミーム、スパイラルダイナミクス、KOSMOS (COSMOSではない)、Gaia、など、いろいろあり、何度も言及されはするが、それぞれ言葉で彩っているという感じで、あまり響かなかった。

とはいえ、一面的な見方のみで早急に結論を出すのではなく、いろいろな軸に照らし合わせ、そして、それぞれの軸について、それまでの歴史とこれからの進化といった視点で、分析的にそして批判的に物事を考えて、ものごとの本質をつかむように努力することは非常に大事なことだと、改めて考えさせられた。

そのようなフレームワークの一つとして、インテグラル理論もおおいに役に立つのではないかと思った。



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