【学び⑳冊目】嫌われる勇気 岸見一郎 古賀史健
この本を手にした理由
もともと心理学関連の本には興味があったのですが、アドラー心理学というものには、今まで触れたこともなく、フライトなどの心理学に比べて知名度が低いにもかかわらず、この本の表紙にもあるように「自己啓発の源流」とまでされている所以はどこにあるのか、興味がありました。また、この本の存在については随分前から既に知ってはいたものの、率直にいうと、直感的な嫌悪感がありました。なぜなら、単純に「嫌われたい人などどこにも居ないはずなのに、なんてことを言っているんだ」と思ったからです。一方で、誰からも嫌われない人生などなし得ない、ということも既に承知していました。なので、この本では「嫌われること」について、具体的にどういうマインドセットを持って対処することを勧めているのか、気になり本を手にするに至りました。
学び①目的論
引きこもりになってしまった人の背景は、学校でのいじめ、人間関係、また恵まれない家庭環境などと様々なものがあるでしょう。このような説明の仕方はフロイト的「原因論」の説明で、アドラーの「目的論」はこれを明確に否定します。体調が悪くて医者にかかった時に、症状の原因の分析だけをされて、具体的な解決策の提示や薬の処方をしてくれない医者がもしいたら、とんでもないですよね。原因論に立ってしまうと、「これから」について何もフォーカスしておらず、原因がこうであるため、こうだ、ということで片付けてしまっている、変化を嫌う考え方になってしまうのです。一方のアドラーの考え方は、まずは先に目的が来るのです。例えば、料理が下手で、どうせ上手く作れないから、料理をしないのではなく、料理を学ぶという「変わる」プロセスが面倒であり、このままコンフォートゾーンにいる方が遥かに自分にとって心地がいいため、「料理をしないでおこう」という目的が先に来ており、料理が下手という事実は後づけでしか無いのです。(自分のことです笑)なので、変わりたいけど変われないと思うことがあるのであれば、原因論的な考え方に立つのではなく、目的論を理解し、意識を改革していくことが大事なのではないかと感じました。
学び②課題の分離
アドラーの心理学では、人間の全ての悩みは人間関係によるものだとしています。そして、多くの人が社会に生きる限り複雑に絡み合う人間関係の中をもがきながら生きていくことが人生であると信じていますが、アドラーはこれを否定し、人生は至ってシンプルなもので、複雑にしてしまっているのは自分自身である、としています。その例示として、他者の課題を自分自身の課題としてとらえてしまうことが挙げられています。人が変わるための手助けは、出来ても、人を変える事はできず、最終的に変わるかどうかは、自分ではなく本人の課題なのです。この他者の課題を自分の課題のように捉えてしまうことが人間関係を複雑に捉えてしまう大きな原因なのです。また、自分のことを嫌いな誰かがいたとしても、それは自分の課題ではなく、自分のことを嫌っている彼、彼女の問題なのです。なるほど、タイトルの真意がここに隠されていたわけです。人は他人の期待を満たすために生きているのでは無いのです。もちろん、本書内でもあえて嫌われる生き方をしろと言っているわけではありません。自分らしく生きていたら全員に好かれることなんて出来ないし、それでもいい、ということを言っているのです。
今まで、嫌われる→自分に非があるがため嫌われるという考え方を持っていたため、自分が嫌われることにより負うことになる傷を考えると、誰にでも好かれる生き方こそが、もっとも悩みの少ない生き方であると強く信じていました。そのような、生き方は自分ではなく他人の人生を生きていることになります。「自分らしく生きていて、嫌われたっていい」自分だけでなく、現代を生きる多くの人に響くメッセージなのではないでしょうか。
学び③他者への貢献の思い
自分が帰属している共同体といえば、身近な家族、職場、学校などが思い浮かぶかもしれません。ですが、それらだけではなく、組合、自治体、国、地球、とまで、さらに大きな枠の共同体にも同時に属しているのです。そして、それらのより大きな共同体への帰属意識を持つことで、「幸せ」になることができるのです。他者を敵、競争相手と捉えることで、自分の人生をより複雑にしているのだとすれば、この帰属意識により他者を仲間と捉えることができ、本書の言葉を借りれば、「世界はよりシンプルな姿を取り戻すのです。
そして、その帰属している共同体のメンバーへの貢献心を忘れてはいけません。実際に相手が貢献されていると感じているかどうかは、学び②にあるように、相手の課題なので、自分には操作することはできません。ですが、常に自分が相手への貢献心に基づいていきることで、人は自分の価値を実感することが出来ます。
学び②のように、自分の人生を生きるべきでありながら、自己中心的に生きてはいけないのです。
まとめ、感想
冒頭で挙げた、この本が出た当初から抱いていた疑念が、ページをめくればめくるほど解消していきました。複雑な人間関係の中でもがき苦しみながら生きていくのも、その人生を最後に物語として振り返った時には素晴らしいかもしれませんが、誰しも生きているのは今、この瞬間なのであり、今この瞬間に幸せであることが出来るのであれば、それに越したことはありません。「心持ちのあり方、一つだけで、こんなにもラクになるのか」と一読し終わっただけでも、心持ちの軽やかさを既に感じています。とはいえ、理論としては理解できても、感覚としてはまだ腑に落ちていない部分もあります。人間関係の心理学は、やはり直ぐに実践するのは簡単ではありません。少しずつでも実践していきながら、感覚に落とし込めるように引き続き、この本と、アドラー心理学に触れ続けていたいと思います。