【学び54冊目】経営戦略全史
【ケイパビリティ派とポジショニング派】
戦略には、二通りの学派があります。ポジショニング派は、外部環境をベースに戦略を策定するもので、マーケットにおいて相対的な優位性のある戦略であればよしとします。一方で、ケイパビリティ派は、外部環境をベースに考えるのではなく、組織の能力に重きを置き、経営資源の充足であったり、内部の統制などができていない限り、どんなに市場においてのポジショニングが上手くいっていたとしても、バリューを提供することがうまく出来ないと考えます。
両者ともに利点があり、掛け合わせていくことが重要だ、という意見は真新しくありません。
ですが、どちらも並行して実行していこうとすると、どちらも上手くいきません。
両社はトレードオフだからです。トレードオフの戦略が一度に同時に存在することはあり得ません。
企業の成長をフェーズでとらえて、フェーズに合った方の戦略をとるのです。
SECIモデルを使って説明すると、IとSの段階が外堀、EとCが年輪です。どのタイミングで、どちらの戦略をとるかの見極めとても重要ですが、基本的にはらせん状に、それぞれ周期的に行っておくべきなのです。企業のライフサイクルの曲線の角度を高くするために外堀経営があり、年輪経営は高くした角度を、右肩下がりにしないように固めるために行います。周期的にどちらも行うことが重要なのです。
【コンセプトの実践】
ドラッカーのMBO の目標管理のコンセプトは、驚くことにその当時は、あまり実践的ではないという声を浴びせられていたと言います。ですが、これはドラッカーの責ではありません。この本の利点は、戦略の移り変わりを時代とともに、追うことができる点にあります。時代という大きなパラダイムで見た時、ドラッカーの役割もアンゾフの役割も、コンセプトを考案する所までであり、実行部隊は我々なのです。その意味で言うと、会社の組織で見れば、社長の仕事は意思決定であり、社員が実行部隊ですが、時代の流れで改めて考えると、ドラッカーやアンゾフが作り上げたコンセプトを活用し、経営戦略を立てていくという意味では、経営者も含め、働く全てのモノが実行部隊なのです。何もないところから新しいコンセプトは絶対生まれません。新しいコンセプトは、型を守り続けることから生まれるのです。ドラッカーですら、シュンペーターに影響を受けています。何ともない所から、何かが生まれることはないので、コンセプトを実践していくことがまずは求められます。