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女性アスリートの体調とパフォーマンスに深刻な影響を及ぼす、女性アスリートの三主徴って何??

「女性アスリートの三主徴(female athlete triad)」は、女性の競技者に見られる健康上の問題で、利用可能エネルギー不足、視床下部性無月経、骨粗鬆症の三つの主要な症状からなる症候群です。
この症候群は、競技活動と食事摂取の不均衡によって引き起こされ、女性アスリートの体調とパフォーマンスに深刻な影響を及ぼす可能性があります。以下で、女性アスリートの三主徴について詳細に説明します。

どのような競技に多いのか

女性アスリートの三主徴は、特に体重管理が重要視される競技や外見が影響を与える競技に参加する選手に多く見られます。以下はこれらの競技の例です。

  • 審美系競技:新体操、フィギアスケートなど体重制限が一般的で、点数評価をする競技です。

  • 持久系競技:陸上競技、特に長距離ランニングや競歩、ノルディックスキーなどの競技です。

  • 体重‒階級制競技:柔道、レスリング、重量上げなどが挙げられます。

定義

女性アスリートの三主徴は、以下の三つの主要な要素から構成されます。

  1. 利用可能エネルギー不足(Low Energy Availability):競技者のエネルギー摂取が運動に必要なエネルギー消費を満たさない状態です。これは食事不足や食事制限、過度なトレーニングによって引き起こされます。

  2. 視床下部性無月経(Functional Hypothalamic Amenorrhea):生理周期の停止や不規則な周期です。この状態は、女性の生殖機能に影響を及ぼし、月経が途絶えたり不規則になることを指します。

  3. 骨粗鬆症(Osteoporosis):骨密度の低下により骨が脆くなる状態。これは長期間にわたり骨への負荷が不足することによって発生し、骨折のリスクが増加します。

症状

女性アスリートの三主徴には、以下のような症状が含まれます。

  • 利用可能エネルギー不足:体重減少、筋肉の減少、疲労感、パフォーマンスの低下、生理周期の不規則さなどがあります。

  • 視床下部性無月経:月経の停止または不規則な周期、生殖機能の低下、ホルモンバランスの異常などが見られます。

  • 骨粗鬆症:骨折のリスクが増加し、骨密度の低下により骨が脆くなることで、骨折が発生しやすくなります。

リスクの高い人

  • 疲労骨折 2 回以上または 1 回の治りにくい疲労骨折になったことがある

  • 骨量減少

  • 摂食障害になったことがある

  • BMI 17.5 kg/m2 以下

  • 予想体重の 85%未満もしくは 1 カ月内での 10%以 上の体重減少

  • 初経 16 歳以上

  • 月経 1 年間に 6 回未満
    を挙げています。

スクリーニングについて

下記のスクリーニング項目があります。スクリーニングやリスクが高い人に当てはまる場合は、産婦人科や内科など病院を受診することが推奨されています。
『1) 月経は規則的にきていますか? 2) 初経は何歳でしたか? 3) 最終月経日はいつですか? 4) 最近 12 カ月で何回月経がありましたか? 5) ホルモン剤(エストロゲン,プロゲステロン,ピル) を服用していますか? 6) 体重が気になりますか? 7) 誰かに減量を勧められていますか? 8) 特別な減量方法,または食べない食品や食品グルー プがありますか? 9) 摂食障害になったことがありますか? 10) 疲労骨折を起こしたことがありますか? 11) 骨密度が低いと指摘されたことがありますか?』

他には、競技のパフォーマンス低下、月経が止まっている、月経トラブル(月経前症候群、過多月経など)を相談したい状態になっている、疲労骨折など骨折を起こした、などの症状がある場合は病院を受診を検討することが推奨されます。

対応策

女性アスリートの三主徴に対処するためには、以下の対応策が重要です。
疑われる場合は病院をまず受診し、早期の鑑別と対応が重要です。

  1. 多職種対応:背景にメンタルヘルスの問題があることも多く、産婦人科・精神科・整形外科・プライマリケア医・栄養士・心理士・競技指導者・保護者など多職種での対応が必要です

  2. 栄養の最適化: 選手に適切な栄養指導を提供し、エネルギー不足を解消するためにバランスの取れた食事を促します。

  3. トレーニングの調整: 過度なトレーニングを避け、適切な休息を確保するためのトレーニングプランを策定します。

  4. ホルモンバランスの管理: 生殖ホルモンのバランスを保つために、適切な医療的支援を提供します。

  5. 内科的評価:甲状腺や糖尿病、貧血などの疾患が隠れてないかの評価をします。

  6. 骨密度のモニタリング: 骨密度の低下を予防するために、定期的な骨密度測定を行い、必要な場合は適切な治療を提供します。

  7. 心理的サポート: 選手の心理的な健康をサポートし、過度の体重管理やパフォーマンスへのプレッシャーに対処できるように支援します。

女性アスリートの三主徴についてお話ししてきました。
競技のパフォーマンスが低下するだけでなく、さまざまな影響が考えられます。
可能性がある場合は早めに医療機関へ受診すること、知識を指導者や競技者、保護者、医療関係者も持っておくことが重要です。

Clin J Sport Med 2014 ; 24(2) : 96-119.
https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/Portals/0/resources/jiss/column/woman/seichoki_handobook_5.pdf
日大医誌 80 (2): 67–70 (2021)

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