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100年の孤独/放哉に想う〈Vol.42〉

だれも居らぬ部屋に電気がついた

尾崎放哉全句集より

日が暮れて、だれもいない家に帰るのは淋しい……電球のスイッチをパチンとひねると、目を刺す光の下に自分の影が落ちている――。
この句が詠まれたのは、ロウソクやランプに代わって徐々に電気が普及し始めた、近代の波が寄せ来る時代でした。

ときに人は人間関係で煩わしさを覚えたり、感情のもつれから諍いを起こしたりすことがしばしばあります。とはいえ、「ひとりぼっち」のままがいいとは、けっして思わないようにできている……そんな気がします。そう。「淋しい」という感情は、おそらく原初的に、生存することと深くかかわっている心理なんだと思います。

2018年、イギリスのメイ元首相は「孤独は現代の公衆衛生上、最も大きな課題の一つ」と位置づけ、孤独問題担当大臣を任命しました。その後、日本でも孤独の問題を担当する大臣を任命しています。「孤独」をめぐる問題は、いまや国が取り組む課題となってきています。

淋しさを紛らわす道具は世の中たくさんあります。でも、心を満たすものはどうでしょうか。放哉の句は問いかけています。






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