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三島由紀夫著『潮騒』を読んだ

三島由紀夫著『潮騒』読み終わった。三島由紀夫作品をずっと読みたいなと思いつつ読めてなかったから、図書館で見つけることができて良かった。大学生のときに読んだ『近代能楽集』以来の作品。すごいおもしろかった。

主には新治、安夫、初江、千代子の4人の関係。
あらすじを見ると、新治と初江の純愛の話というところが押し出されている感があるけど、実際に読んでみると新治の成長物語でもあるんだなと思った。

(以下、ネタバレなど何も考慮せずに感想を書き散らしているのでご了承を、、、)

【恋愛面でおもしろかったところ】
恋をする話とか好きだと思ってから成就するまでの話はだいぶ久しぶりに読んだので、瑞々しくて眩しかった。

特にすごいなと思ったのは、初江と出会って割とすぐの場面。

ひびわれた乾いた唇が触れ合った。それは少し塩辛かった。海藻のようだと新治は思った。その瞬間がすぎると、若者はこの生れてはじめての経験のうしろめたさに駆られ、身を離して立ち上った。

青春の甘酸っぱいレモン味みたいなものは幻で、
あくまで塩辛いとか海藻のようだとか言っていて、すごく現実的で冷静な感じ…というより「今何をしているのか?」を理解していない感じが良かった。あとからハッと気づいて後ろめたくなるところまで合わせてほろ苦くて好きな場面!

恋愛で胸がわくわくすることを「自分にわからないものの存在」で「気味が悪い」と初めは考えていたところから、最終的には初江が好きだ!となるんだから新治の大きな変化を感じられる。


【成長面でおもしろかったところ】
読み終わったとき、ふと「新治は何歳なんだろう?」と気になって改めて読み返すと、18歳らしかった。漁をして家を支える姿とか寡黙な様子から、もっと大人のように感じた。


ただ、外側は寡黙なんだけど、神社でお祈りするときの心の中が賑やかでおもしろかった。ビックリマークが一気に増えて、いろいろ思うところがあるんだなということが伝わった。

神様、どうか海が平穏で、漁量はゆたかに、村はますます栄えてゆきますように!わたくしはまだ少年ですが、いつか一人前の漁師になって、海のこと、魚のこと、舟のこと、天候のこと、何事をも熟知し何事にも熟達した優れた者になれますように!…

一文ごとにビックリマークついてる、すごい


あとは、沖縄の海で台風に見舞われている場面がすごく迫力があった。
「未知」に対して立ち向かって成功し自信がつく、という流れがすごく綺麗だった。話の構成自体はわかりやすいけれども、一つ一つの出来事の中身は一筋縄にはいかないのでそこがおもしろいと思った。

大波の中、船を繋ぐ綱を自力で泳いで結びに行くシーンは、台風で荒れる海の恐ろしさよりも新治が落ち着いて対象に向かっていく様子の方が印象に残った。
「これを乗り越えたら自分に自信が持てるんじゃないか」と新治も何となくわかっていたんじゃないかなあ。

はじめて十吉から初江の身元をきいた日の夕方に、水平線上の夕雲の前を走る一艘の白い貨物船の影を、ふしぎな感動を以て見送ったことを思い出した。あれは「未知」であった。未知を遠くに見ていたあいだ、彼の心には平和があったが、一度未知に乗組んで出帆すると、不安と絶望と混乱と悲歎とが、相携えて押し寄せて来たのである。

歌島の外の海が「未知」だったころのシーン


台風のシーンが終わってからは「海技免状をとって、一等航海士になろうと思っとる」という形で夢のスケールもでっかくなり、新治の「ふしぎな自足感」が伝わってきた。


最後、新治と初江が結ばれ、嬉しい気持ちで終わることができて良かった。ここ1年くらいハッピーエンドに着地する話をあまり読んでこなかったから、一気に爽やかな気持ちになることができた。

梅雨から夏に変わっていく今の季節に、すごくちょうどいい小説だなと思う。

いろんな人と1つの作品に対してそれぞれどんな感想を持ったか、どんな観点で読んだかを語り合いたいなあ。

最後に、1番好きな表現↓

世界が今まで考えもしなかった大きなひろがりを以て、そのかなたから迫って来る。この未知の世界の印象は遠雷のように、遠く轟いて来てまた消え去った。

三島由紀夫作品を他にもたくさん読みたい。「次にこれを読むべき」というおすすめがあれば、ぜひ教えてください!

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