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水ぶくれ


私は風呂場で自分の足先を見つめる。
親指にできた水ぶくれを、じっと見つめている。

指先がじんわり冷え始めてきた。

この水ぶくれは、不注意で火傷をした証。

靴や靴下が触れると痛い。
自分の身体の末端を久しぶりに感じている。

お風呂では、湯船に足を入れるのを躊躇った。

なんだか痛みが増すような気がして。
また不注意でぶつけてしまわぬように。
水ぶくれが破れないように細心の注意を払って。

細心の注意を、払って。

丁重に扱う。人様の物のように扱う。

そこではたと、気付くのだ。
自分の一部を丁重に扱うことが久々だということに。

日々目に触れているはずなのに。

日々血潮を巡らせているのに。

それなのに、私は人様のことばかり、丁重に扱ってきたのか。

つんと、込み上げてくるそれは全身に伝う。
気付かれないように、私はそっと水ぶくれにお湯をかけて温めた。


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