入社1年目に起きた、人生最悪の思い出【※トラウマ注意】
【飲み会で実際に心に傷を負ったことがある人はうっかり読んでフラッシュバックを起こす可能性があるので、気をつけてご覧ください】
これから飲み会が増えるシーズンになる。
春の陽気を肌に感じると、数年前のトラウマが蘇る。
入社してすぐ、同じ部署の先輩2人と同期1人の合計4人で歓迎会がひらかれた。女は私ひとりだった。
憧れの会社に入社できた高揚感と、新入社員だからしっかりしないとという焦りがあり、注がれたお酒は飲み干すようにした。
ワインを2瓶空けたくらいで頭がくらくらしてきた。
終電を理由に退席させていただくことにしたら、隣に座っていた同期(同い年の男性)も一緒に帰ることになった。
酔っていたので座ってポカリを飲みたかった。アルコールには強いけど、いつも飲まないワインを飲んだせいか変な酔い方をしてしまったので、気持ち悪かった。
同期の男はコンビニに立ち寄らせてもくれず、なぜか遠いほうの駅へ引きずるように歩いていった。彼は私の目を見ないで、ひたすら前ばかり見ていた。色々と私は話しかけたが、ひたすら無視されたと記憶している。
千鳥足になっている私の肩を雑に押さえながら、同期はずんずんと足をすすめていった。次第に彼は、「汗ばんでいるね」「興奮してきた」など言ってきて、着ている紺色のカッターシャツの下に手を潜り込ませ、ブラのアンダーラインと腰の間のあたりを直接触ってきた。
私はちょっと朦朧としていたけど、「気持ち悪い」というゾッとした気持ちがわいた。
「これは犯される」と思ったし、「明日からも会うかもしれないんだよな」と冷静にもなった。結果、へらへらと「え〜帰るね!」と曖昧な拒絶をした。彼の鼻息が荒くなっていて、目が潤んで変な熱を帯びていた。「酒を飲んで、こいつおかしくなってる」と恐怖心を抱いた。強く拒否して逆上でもされたら勝てない性差を呪った。
私は逃げるように走り、駅に入り、ちょうど到着していた行き先もわからない電車に乗り込んだ。
酔った体で全力疾走してクラクラし、車内で吐き気をもよおした。次の駅で少し汚してしまい、結局駅員さんのお世話になった。終電も終わってたので家族に向かいに来てもらった。(あまりの惨状で、本当に申し訳なかった)
次の日から会社に行くのが嫌になった。
自分の至らない点が悔しくなり、なかったことにしたいと考えていたが、数年経ってからは証拠を残しておけばいいと思った。たぶん「今日は電車に乗っちゃったけど、本当はどうしたかったの?(*´ω`*)」とか送ったら、白状したと思うから。
そのXデーからしばらくは、頭の中がぐちゃぐちゃになって、恋人への申し訳なさも感じていた。数ヶ月経って、やっと何が起こったか話せるようになってから、人事部の若い女性社員に相談をした。話を聞いてもらった後、「研修時代からあなたと同期は仲が良かったもんね」「直接ホテルに誘われたわけではないからね」と言われた。男女のプライベートまでに口を挟めない、というようなことを言われた。それだけだった。
仕方なく、私は働き続けた。彼は何事もなかったように振る舞っていた。同じ空間にいるたびに吐き気がしたし、視界にも入れたくなかった。冷静になって思うと「彼と別の部署に移動させて欲しい」と頼めば良かったと後悔しているが、その当時はせっかく希望通りの配属が叶って、社会人生活もこれからだというのに、仕事もほとんどしていない私が揉め事を起こすのが嫌だったから耐えた。
私はマイルールができた。男性と2人で飲みにいかない。誘われたら、断るか、ランチにしてもらう。飲み会がある日は、「○時までに連絡がなかったら電話して」と家族に言う。男性ばかりの飲み会には参加しない。薬指にシンプルな指輪をつけていく……
最近では、コロナを理由に飲み会が減った。誘われても「コロナが怖いから」を理由に断ることができるので、少しホッとしている。
伊藤詩織さんの「Black Box」を読んで、身の毛がよだつ気持ちだった。あまりにも生々しかったからだ。
伊藤さんはこの本で、レイプされたら1、緊急外来にいく 2、警察にいく ことを勧めており、それらはなるべく早く、できれば24時間以内にした方がいいと書いている。私の場合はレイプもされていないし、未遂に終わっているが、あの彼から触られた肌の感触と、彼の耳元でささやいた声の気色悪さは自分の胸の中にずっとあってすごく苦しい。でも、実際にもっと苦しい思いをしている人はいるだろうし、この前も榊英雄監督のニュースをみてボロボロ涙が出て止まらなかった。布団で横になりながら涙を垂れ流し続けた。胸の深くに沈めて蓋をしていた、あの同期との10分にも足らない問答を思い出して、また泣いた。体の大きな監督にしゃぶれと言われたら、なんと怖いんだろうと。断ったら次の日からの仕事に影響が出る人だったら?憧れの上司だったら?強い抵抗ができないと、あの日の経験で知ってしまったから辛いんだ。
Black Boxとは「中身がわからない不気味なもの」が語義だ。私が同期とふたりきりで起こったことも、同期が「向こうが誘惑した」とか「飲み会で嬉々として猥談をしていた」とかいってきたら私はそうだと見なされるのだろう。
今の私にできることは、自分を守るために、「何かが起こりそうだと予期できる環境」から距離を置くことだけである。それしかできないのが忍びない。
数年前のトラウマから、自分が変わったことがある。
路上や電車で飲み過ぎて体調が悪そうな女性がいたら、近くの自販機でポカリを買って手渡すことにしている。その際、「大丈夫ですか?」「帰れますか?」と聞いている。余計なお世話かもしれないけど、私は幸いにも善良そうな女性市民という外見なので、できる限りのことはやりたいなと思っている。