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こぼした水は拭くしかない

マキコは怒っていた
💢

4歳の一人息子のタロウと帰宅したマキコ
何はともあれシャワータイム
湯船にお湯を入れるのは土日だけ
平日はシャワーが精一杯
コロナ以降
帰宅後のシャワーは欠かしたことがない

マキコが服を脱ぎかけたところで
インターフォンが鳴った
「今日は骨無し冷凍サバが届く日だった」
冷凍品を置き配にもできず
時間指定でこの時間にしたのを忘れていた

服を脱ぐ前で良かった
「たっくんここで待ってて」
マキコはタロウにそう言いつけると
急いで玄関で荷物を受け取った
箱は玄関においたまま
中身のサバだけ持ってキッチンへ
冷凍庫に入れてホッとしたところで思い出した

「あ、タロウを1人にしちゃった」
マキコは急いで洗面所へ向かうと
そこにタロウの姿はなく
なぜかバスルームの扉が半開きで
洗面所の床がびしょびしょ

「たっくん?」
マキコが声をかけると
「ママー」
と嬉しそうにシャワーの水をマキコへ向けた
「待っててっていったでしょ!」
「たっくんひとりでシャワーできるよ」

なにやってるのおおー
とマキコが怒鳴ろうとした瞬間
背後から聞き覚えのないおじさんの声が聞こえた
「覆水盆に返らずですよ。シャワーを止めて、このバスタオルで床を拭きましょう。」

床に落ちたバスタオルと水浸しの床を見て
マキコは慌ててシャワーを止めて
床の水を拭き取った

気がつくと
タロウがニコニコとマキコを見ていた
「ママ、たっくんひとりでシャワーできたよ」

「たっくんすごいね
でも床が濡れちゃうからシャワーのときはバスルームのドアを閉めようね」

さっきの変な声は誰だったんだろう。変なの。

変な声の主、フリーの守護天使ろくおは、怒り出しそうな人の背後から6秒間話しかけるのが仕事です。




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