ツナ缶のツナはおいしく食べよう

コウタはは怒っていた
サラダの最後の仕上げ
ツナ缶のツナがきれいに出てこないのだ

コウタの家では日曜日の朝ごはんの用意は
当番制になっている
今日の当番は長男のコウタ小学5年生

ちぎったレタスを敷いた上に
スライサーで千切りにした
大根ときゅうり
仕上げに
油を切らないツナを
丸く缶の形のまま
きれいにのせたら完成
・・・のはずだった

それなのに
コウタがツナ缶を逆さまにして
軽くゆすると
ツナ缶はもろもろに崩れて
野菜の上に散らばり
缶の内側のフチにも
へばりついている
「なんだよこれ」
コウタが缶を力任せに振ろうとしたとき
「ツナ缶からツナが出なくてもこの世の終わりではない」

え?
コウタはふと我に返り
缶の内側を見つめた
まとめてもひと口分もないくらいのツナが
ただじっとしているだけ
爪楊枝を持ってきて
ゆっくりこそげとった

朝食後、コウタがネットで
「ツナ缶　きれいに出せない」
で検索したら
専用のグッズがあるらしい
あれ？
見たことある？
キッチンの引き出しを開けると
ネットと同じグッズが入っていた
ママもオレみたいにイライラしたのかな
それにしても
なんだか変なことを言う声がしたけど
もしかして異世界転生するところだった？！

変な声の主、フリーの守護天使ろくおは、怒り出しそうな人の背後から6秒間話しかけるのが仕事です。