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ロウリュとアウフグース。


黒髪に長く伸ばした髪は、天然らしくうねうねしていて、そのワイルドさとは不釣り合いな声色で
「どうぞ、お越しくださいませ」
と、室温57度と表示された「笑の間」の入口付近に男は、スタンバイしていた。
エスニックな柄の、白い薄手の作務衣。
柔らかな笑顔で、会釈をしながら時を待つ。


整理券がわりに、手首に巻いた緑色の紙テープを入室確認とともに外す。

「大判バスタオルのみでお入りください」

知らない世界だった。
かなり人気なようだった。

入室時間にならんで入ると、サウナ室「笑の間」は上中下と段いっぱいになっていた。

「熱さに強い方ほど上へ」
とレコメンドされながら、自由に陣取る。
私と夫はおずおずと下の段へ。

室内には、ビーチを思わせるレゲエ調の音楽が流れ、これから始まる「アウフグースイベント」とやらに、なんとなくお洒落感を期待させた。

「こんにちは、はじめまして。
アウフギーサー
のティモ(仮)です!」

そして、だんだんとその口調は、まるで何かを朗読するかのように、穏やかで静かなものになり、これから焚かれるアロマ水や香木やの効能を語りはじめる。

熱々に熱せられた石に、流れるような手つきで、長い柄杓から高らかにアロマ水を注ぎ、ザブン…ブクブクと、波打ち際のような音に耳をすませている間に、シュワシュワと熱い熱い水蒸気がたちこめていく。徐々に室温が上がっていく。


そして、

アウフギーサーがフワリ、舞い始める。

BGMに合わせて、手に持つ白いバスタオルはまるでピザ生地のように、手先で自在にクルクルと回り、回りながら煽られて、回り回ってギーサーも華麗に回りだし、舞うごとに熱波も漂う。

フワッと、ブワァッと。

大技をキメると拍手が沸き起こる。

あっつい!!

アロマ水はさらに注がれ、汗腺という汗腺から汗が吹き出す。アウフギーサーも穏やかな顔で舞い続けながら、その白いエスニックな薄手の作務衣は汗でスケスケになり、意外と筋肉質な上半身を想像させた。


クルクルとバスタオルが踊る。

煽り煽られ、熱波がおしよせる。

10分と少し、ポタポタと滴る汗を滴らせるだけ滴らせ、最後には「フゥーーー!」と歓声とともに、そこにいるサンドベージュの館内着のサウナーたちは、不思議な一体感を感じながら、拍手喝采で汗まみれのアウフグースイベントを終えたのだった。

べっちゃんこだ。

灼熱のサウナ室の出口では、ティモさんが一人一人にグータッチしながら、

「ナイスファイトでぇーす!」

と爽やかな笑顔で送り出してくれた。



めちゃくちゃ熱かったけれど、なんとも清々しい汗をかき、無料ウォーターサーバーの天然水をごくごく飲みながら、何かしらをやり遂げたような気持ちの良い達成感すら感じていた。

スッキリした。


ところで、
アウフグースと聞いてマングースが出てきた人、
アウフギーサーと聞いてサーターアンダギーが出てきた人はいませんでしょうか?

そんな方は、こちらをどうぞ。


もちろん私は、家に帰って、バスタオルを回してみましたとも。ムズい…。





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