【読書感想文】ミルク・アンド・ハニー
553頁の長編、なんだかとっても濃かった…。
主人公の高遠奈津と私は、ほとんど同年代なのだけれど、こうも性に貪欲なものなのかと恐れ入りながら読んでいた。
官能的なシーンも多く、三連休の真昼間、家族のいるリビングで、オイルマッサージを受けながらそのまま最後まで致してしまう男女の様子を読んでいる私はいかがなものか…。しかしながら、そういうシーンに限って、頁が捗ってしまうのだから、どうしようもないな。素知らぬ顔で頁を捲りながら、脳内にはその文章から浮かび上がるめくるめくシーンが再現されているのだから、下腹部に熱を帯びないわけにはいかなくなり、困ったものだな、まったく。
というような状況になりながら繰り広げられていく男女の愛憎を読み進めていたのだけれど、最後の最後には、ジワッと涙したりした。
結局、大林の言う
「恋愛の究極は〈死〉にきまってるでしょ」
というのは、あながち間違いではなかったのかもしれない。まぁ極論ではあるかもしれないけれど。
しかしながら、私が読んでいて一番「おわっ…」となったのは、編集者の岡島杏子との、このやりとり。
言葉を持ってる人。そういえば、キリン先輩こと岩井良介の言うセリフにもハッとしたんだった。
自分の性欲の強さや、性癖について、ちゃんと考えたことはなかったけれど、こうもありありと書かれていると考えてしまう。
自分はどんな想像をすると興奮するのか、どんなセックスが好きで、人と比べたらそれは強いほうなのか…。女同士で酔って話すうち、若いころはあけすけに話して、もうオープンすぎて逆に爽やかとさえ思ってしまうほどだったけれど、この歳になってそういった話題に触れることもなくなってしまった。当時は性欲もきっと強い方だったのだけれど、今ではだいぶ落ち着いている、と思う。比べようがないのだけれども。
性癖で言えばたぶん私も、言葉を持つ人や、想像で導かれるのは、実際に触れられるよりも好きなんだと思う。想像力の豊かさゆえ…。
そういえば長女の友達が、
「このまま今の彼氏と結婚してもいいけど、そうしたら一生この人としかセックスできないってことになるでしょ?私、寝〇ックされるのが好きなんだけど、彼のが届かなくてだめなんだよね。」
と、言っていた。そういう好みもあるのね。
確かに、楽しめるうちに楽しむのもいいのかもしれないね、といたってシンプルに思ってしまったりした。
私は、自分の性的指向がどうも変わってきているから、夫に「女として見られたい」という欲求はなくなってしまった。彼は彼で、そこまで欲求が強い方ではないようだから、今では老夫婦のように穏やかな夜を過ごしている。
リビングで大相撲を観ている夫の隣で、私がこんな内容の本を読み耽って、自分の性欲や性癖について考えているという、とある休日の我が家は、意外とビターでブラックなのかもしれない。
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