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「なんとなく」の声を。
芳しい風が、少し開けた窓から入る。
日が差して、穏やかな日曜の昼間。
何にもしたくなくて。
残っていた仕事を片付けた後、こたつにコロンと寝転がっていた。
お風呂でも入ろっかな。
お風呂屋さんにいくほど気合いはなくて、シャワーよりももっとゆっくりじんわりしたかった。入浴剤でもあれば…と探したけれど、一つもなくて、りんごの皮を入れたネットを、ぷかりと浮かべる。
小窓から明るい日が差して、いつも入らない時間帯のお風呂は(まして自分一人用にわかしたお風呂は)、贅沢だ。
そういえば、私の好きな作家の江國香織さんは、毎日二時間以上お風呂に入ると何かで読んだ気がする。明るいうちに入るお風呂が、癖になるというのもわからなくないかも。
身体はきっと元気だけれど(どこにも痛いところはないのだし)、何にもしたくなくなるようなこんな時は、やっぱり心がパワーダウンしているような気がする。
なんとなく、そう、なんとなく。
私はきっと、根っから〝陽〟というわけじゃないんだな、と思う。賑やかに、社交的に振る舞うこともできるし、その時をとても楽しんでいるのだけれど、そうした後は、誰にも会わず、静かに一人でいたくなるのだ。
チャプ、チャプ。
ほのかに香るリンゴ。
裸ん坊の肌に、気泡をまとい、顎まで浸かる。手の平もシワシワになって、ホカホカと頬が赤らんでいるのがわかる。
もう少し、このまま。
「ただいま」
とゴルフの打ちっぱなしに行っていた夫が帰ってきて、磨りガラス越しに不思議がる。
「え?風呂?なんで?」
そろそろ出ようかな、と思ってたけれど、
もう少しだけ入っていることにしよう。
お風呂に入りたかったのも、一人でいたかったのも、「なんで?」なんて聞かないで。
「なんとなく」
としか答えようがないんだから。
理由なんてなくて、
説明のつかないことの方を、
いつも私は、どうしても信じてしまう。
♨
お風呂好きな方へ。