【読書感想文】家と庭と犬とねこ
石井桃子さんのエッセイ集です。
私の好きな作家、江國香織さんは石井桃子さんが好きで、エッセイなどでよく彼女の文章のすばらしさを書かれている。私も、幼稚園のころから「ピーターラビット」シリーズを読んで、お正月のたびに買ってもらって、
「びあとりくすぽたーさくいしいももこえ」と一息に言えるほど大切にしていたから、石井桃子さんの文章は、根付いていると言ってもいいと思う。
そんな石井桃子さんの、戦中、若い時分からの日々を綴るエッセイ。
読んでいくと、彼女がなぜあんなにも情緒豊かで、地に足の着いた、ちょっと頑固で、子どものように正直な文章を書かれるのか、ちょっとわかるような、腑に落ちるような気がしてくる。
戦後すぐに彼女は、女ともだち三人で宮城の山の小さな小屋で暮らしていた。畑を耕し、山羊を飼い、朝から晩まで体を使って働いていたという。「ノンちゃん牧場」と近所の人たちの言う〝山〟での生活が、彼女の翻訳や児童文学などに見るリアルな言葉のルーツな気がしてならない。
あぁ、こういう世界にいたからなんだな。
と腑に落ちるのだ。土のかたさ、草のにおい、冬のつめたさ、土間のにおい、ヘトヘトに働いたあとのふかふかの布団は、それを体感してきた人の表現だ。
事細かに説明しなくても、「話のわかる」人だとか、文の区切りや間のとり方とか。
うんうん、「波長」ってあるよなぁ、と読む。え?科学的に証明されていなかったかしら、というくらい確かな感覚で。もうこの時点で、私の波長も合ってきている。
これはずっと覚えておかないといけない、と思った。知ったような顔で、見た目格好よいようでも、実際プツリとちぎれてしまうような〝こより〟では仕方がない。しっかりと縒って、コブコブの〝こより〟を、律儀に、真面目に。こと、仕事をするときには、覚えておこうとおもう。
山での生活と、親友の家とお庭、「デューク*」というコリー犬とキズねこ。時々は、都会に疲れて〝山〟や坂の上のお宿で寝込んだりしながら。
便利で忙しい世の中だけれど、彼女のように、大切なことを忘れないように、自然とつましく生きていきたい。
昨日の夜、運転するフロントガラス越しに、暗くなったまだ新しい夜空に、
スーッとひとつ、流れ星がいった。
見逃さなくてよかった。
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デューク*
江國香織さんの「デューク」という小説がある。石井桃子さん好きな江國さんだから、同じ名前の犬に、何かしら繋がりがあるのかな〜と思った、江國香織さん好きのそこのあなた!一緒にコーヒーでもいかがですか?