見出し画像

ちゃんと見ていて。

激しく求められたかった。

私なしでは生きられないと、骨抜きにしたかった。あなたの幸せ、なんてしらない。


今夜どうしても、

今このときに、

その瞬間だけが信じられる気がしたから。

そうでしょう?それは本物でしょ?


明日になれば嘘になるかもしれないし、なかったことにも、体のいいあやまちとでも言えるから。

私はギュッと力を込める。

「どうかこのまま」


お互いの息、力加減も荒々しく、ただ夢中にさせてほしい。ただただ、求め合うだけの、線香花火みたいなセックスがしたい。女なんだと、わからしめてくれればいい。

「やけになってる?」
「好きにして」


線路の上にふくらんでいく大きな風船。
針のついた機関車が、シュッシュポッポと近づいてくる。

お願い、ちゃんと見ていて。
割れないように、油断しないで。


「君はいつも、ずいぶんと排他的で刹那的だな」


さもなくば私、


あの人を思い出してしまうよ。

いいなと思ったら応援しよう!