ヘッドトラッキング
私の上で、胸を反らせ、リズミカルに跳ねる彼女の背中を支えるように手をまわす。
突き出て固くなった片方を口に含み、舌で転がすと、彼女は、自分の手の甲を齧りながら顔を逸らせ、漏れる吐息を抑えようとする。
もっとだ。甘噛み、撫で上げる。
彼女は溢れながら締めつけ、もう片方を自らの手で掴み、いっそう激しく跳ねはじめる。
腰を抱き、突き上げると、とうとう啼いた。
そう、この声。
慌てて私は、赤い録音ボタンを押す。
奏でさせる、自由に、もっとこの啼声を───。
🎧
「ワイヤレスイヤホン?」
「そう、ポチったの。」
「そんなのいつ使うの?」
「いつでも。散歩のときとか、掃除しながらとか、いつでも。」
「ふぅーん。音楽とか?」
「ね。」
パーソナライズされた空間オーディオ、ノイズキャンセリング搭載、ヘッドトラッキング機能でまるでコンサート会場にいるような臨場感あるサウンドを体感できます、と謳われたイヤホン。
片方ずつ、耳にはめ込みながら、
鼓動が速まり、
私は
体温があがるのを感じる───。