知識の骨組み|【アドラー心理学】|ビジュアルシンカーの図解ツール
本や知識の全体像を構造化することでその本質 =「骨組み」を見出し、視覚思考を活かして整理した図解ツールを紹介します。皆さんには、図解ツールを活用して本を読み、ご自身でこの「骨組み」に肉付けすることで、より深い理解へとつなげていただければ幸いです。
テーマ概要
今回は、アドラー心理学の名著『嫌われる勇気』に焦点を当てます。多くの書籍で「今に集中しろ」「行動しろ」と指南されていますが、これらはすべて、アドラーが語ったマインドセットをさまざまな表現で繰り返しているものです。あがり症やアンガーマネジメントも結局、同じマインドセットに行き着くのです。この名著は、そのマインドセットをストーリー形式でわかりやすく伝え、多くの人に親しまれています。
では、アドラーが示したマインドセットとは、具体的にどのような心の構造なのでしょうか?今回はその心の構造を図解し、多くの書籍が語っているアドラー心理学を、一般化して解説します。
参考
嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え, 岸見 一郎 (著), 古賀 史健 (著), ダイヤモンド社
7つの習慣 人格主義の回復(書籍中の「第1の習慣」の章), スティーブン・R・コヴィー(著), キングベアー出版
本編
それではまず図解をお見せしましょう。
ぜひ、テーマに関連する書籍を読むときは、この図解を手元に置いて解釈を深めてください。
図の分解紙芝居
一枚の図だけでは伝えきれない部分を、それぞれのパーツごとに分解し、詳しく解釈しながら説明していきましょう。
テーマ説明全27枚
人は誰でも、自分自身について悩む時があります。その時、どう考え、どう捉えるかで、行動できるか、悩み続けるかが変わります。
まずは「原因論」の考え方を見てみましょう。人は自分の人生を生きている以上、自分中心に考えるのは当然のことです。だからこそ、自分が特別だと思い込みやすくなります。
その思い込みを持って他人と接すると、無意識のうちに「この人は自分より優れている」「この人は自分より劣っている」と振り分けてしまいます。友人やさらには自分の子どもに対しても、です。
そのように振り分けた世界で生きると、常に「劣等感」と「優越感」を感じながら過ごすことになります。
劣等感を感じる相手、つまり自分より優れていると思う人に対して、「認められたい」「期待されたい」と願うようになります。そしてそのために「成果を出さなければならない」「結果を出さなければならない」と考えるようになります。
逆に、優越感を感じる相手、つまり自分より劣っていると思う人には、自分の期待する結果を要求しようとします。
しかし、他人の期待や承認、他人の結果は、実際には自分ではコントロールできないものです。たとえ他人から期待されたとしても、それは相手が自分自身のために結果を得たいからであり、こちらに対しての無責任な期待に過ぎません。さらに、こちらが相手のためを思った期待通りたとえ他人が成果を出しても、その成果を享受するのは他人自身であり、自分には直接関係しないのです。
それでも、自分ではコントロールできない他人の課題を無理やりコントロールしようとします。少しでも自分の思い通りになる確率を上げ、それが安心感につながると信じてしまうのです。この「確実性」を求める姿勢が、「完璧でなければならない」「ミスはできない」という完璧主義に結びつき、やがて他人にもそれを押し付けてしまうようになります。
この完璧主義の考えを抱えたまま、自分を見返すと何が起こるでしょうか?
過去を振り返ると、「もっと努力するべきだった」「自分が評価されるには成果を出すべきだった」という後悔にとらわれます。
未来を考えるとき、結果の確実性が気になり「完璧を目指すべきだ(完璧にできるか不安)」「今に集中すべきだ(集中できるか不安))といった不安が生まれます。
この後悔や不安が「言い訳」や「緊張」を生み、今の自分を縛りつけてしまいます。
こうして、過去と未来にとらわれ、今の自分を動けなくさせてしまうのです。
ここまで説明してきた「原因論」の精神構造を、この図で振り返りましょう。人が原因論にとらわれると、他人との比較から生まれる劣等感や優越感、承認欲求が、行動を縛る根本的原因となります。そしてその中では完璧主義を目指す過程で、過去や未来への執着が不安や後悔を生み出しているのです。この図を通じて、原因論にとらわれた人の心の動きを整理してみてください。
次に「目的論」の考え方を見てみましょう。すべての人が歴史に名を残すわけではなく、ほとんどの人は名も残さずに死んでいきます。だからこそ、自分は特別ではなく、一人の「普通の存在」であるという認識から始まるのです。
その認識を持つことで、私たちは日々の小さな支え合いや、周りの人々への感謝や信頼を意識するようになります。
そして、「自分は普通の一人の人間だ」ということを受け止められることこそ、大きな気づきにつながるのです。
その気づきを持って今の「できていない自分」を見返すとどうなるでしょうか。原因論者も目的論者も、直面している状況や持っているものは同じです。
しかし、普通であることを受け止めた目的論者は、「小さな自分でも、今できることは何だろうか?」と考えるようになります。
そして「自分が今できること」に気づくことで、行動を起こすことができるのです。
その「できること」に集中して行動し続けると、最終的に何らかの結果を得られます。それが成功であろうと失敗であろうと、結果を得ること自体が重要なのです。
その結果が他者への貢献につながることで、自分の存在が社会にとって小さくても価値があることを実感できるようになります。
このように「目的論」では、自分は一人の「普通の人間」であることを受け入れ、他者への貢献を通じて社会の一員として信頼関係を築くことが大切です。その心の循環を回していくことで、心の成長が生まれます。
自分の人生は多くの人にとってはちっぽけで無意味かもしれません。しかし、他者への貢献を実感することで、自分自身でその人生に意味を与えることができるのです。
そして、自分の行動がもたらす結果が、未来の自分にとっての過去の経験として積み重なり、さらなる成長の基盤となります。
ここまで説明してきた「目的論」の精神構造を、この図で振り返りましょう。自分が「普通の人間」であることを受け入れると、今できることに集中し、行動を通じて結果を得ることができるようになります。この図を通して、目的論に基づいて行動する人の心の動きを整理してみてください。
最後に、原因論者と目的論者の心の動きを比較してみましょう。同じ状況でも、物事の捉え方で結果は変わります。どんなに立派に見える人でも、心は常に目的論的に動いているわけではなく、2つの間を揺れ動いています。心が弱くなり原因論に陥ったとき、この2つのマインドモデルを見直すことで、「今できること」に気づき、行動を始めるきっかけにしてください。
最後にアドラーの名言を1つ。
今回の内容、いかがでしたか?ぜひ、テーマに関連する書籍を読むときは、この図解を手元に置いて解釈を深めてください。皆さんの感想や気づきもぜひコメントで教えていただけると嬉しいです!
「知識の骨組み」シリーズ
この他にもさまざまなテーマについて図解していますので、ご興味があればぜひお読みください。