【人間の非論理性】を一枚で図解化|人生の1秒1秒を決めるもの
本や知識の全体像を構造化することでその本質 =「骨組み」を見出し、視覚思考を活かして整理した図解ツールを紹介します。
皆さんには、図解ツールを活用して本を読み、ご自身でこの骨組みに「肉付け」することで、より深い理解へとつなげていただければ幸いです。また皆さんの周りの仲間と議論する際の、「論点の地図」として活用していただけるとうれしいです。
テーマ概要
我々人間は、「自分は誤ることはない」と無意識に信じながらも、人生における苦しみや避けられない葛藤を抱え続けています。
なぜ、論理的に考えることができるはずの人間が、そのような感情に苛まれるのでしょうか。それは、人間が無意識の領域によって多くの行動や感情をコントロールされているからです。
今回は、この人間の非論理性について深掘りし、その構造と影響を探っていきたいと思います
参考
しあわせ仮説(古代の知恵と現代科学の知恵)※第1,2,3,4,8章、ジョナサン・ハイト、新曜社
本編
それではまず図解をお見せしましょう。
ぜひ、テーマに関連する書籍を読むときは、この図解を手元に置いて解釈を深めてください。
図の分解紙芝居
一枚の図だけでは伝えきれない部分を、それぞれのパーツごとに分解し、詳しく解釈しながら説明していきましょう。
テーマ説明全14枚
人と動物との違いは、論理的に考えられる生物であることが1つの側面だと言われています。
しかし、人は相手の言動や周りの環境に対して「考えてから反応する」ことはほとんどありません。心や脳は情動的に、直感や道徳心、信念によって瞬間的にポジティブまたはネガティブな感情を引き起こします。
人は比較することが好きな生き物です。相手より良いのか悪いのか、昨日の自分と比べてどうかなど、常に差を意識し、それが快・不快の感情を生みます。行動経済学で語られる「希少性」や「権威」に基づく反応も、広義には比較による情動と捉えることができます。
そういった感情が言動につながり、その表れが「性格」として観測されます。また、人は無意識に自分中心の世界を生きており、自分は正しく他者は間違っていると暗黙的に認識しています。
この情動的反応と言動が、人間社会を形作っています。「返報性」の原理により、人は良いことをされたらポジティブに応じ、悪いことをされたらネガティブに応じます。特にネガティブな反応は人が原始時代から生き延びるために重要なものでした。現代ではこの返報性の特性が企業の営業やマーケティングにも応用され、私たち消費者は無意識のうちに影響を受けているのです。
では、人間の論理的思考は何のためにあるのでしょうか。それは自らの直感や信念を肯定し、合理化するためです。例えば、ダイエット中にシュークリームを食べた理由を「今日は仕事で疲れたから」「割引されていたから」とストーリーを作り上げます。アンガーマネジメントで言われる「怒りそうになったら6秒待ってみる」、というのもこの情動的反応と論理的思考のタイムラグを意味しています。
しかし、感情や行動に意味づけがずれると葛藤が生じます。「疲れて仕事をしたくない」と「締め切りのために頑張らなければならない」の間でストレスが生まれるのです。
情動的反応や直感は「利己心」と成長過程で形成される「人格」によって動かされます。人格は「知恵」「勇気」「人間性」「正義」「節制」「超越性(自分よりも大きな何かとつながりを形成する力)」の6つの徳によって構成されます。
人格は個人の経験や体験、所属するコミュニティのイデオロギーや宗教によって形作られます。コミュニティには国や地域だけでなく、企業や組織も含まれます。
知識を得ただけでは人の行動は変わりません。「トロッコ問題」などの道徳的ジレンマも、道徳的推論の訓練に過ぎないのです。
紛争や対立が絶えないのも、人は自分たちの信念とは異なる集団を否定し続けるからです。論理的には紛争が悪いと理解していても、それをやめることは難しいのです。
だからこそ自己理解が重要です。自分の感情や行動を振り返り、無意識の領域を見つめ直すことで、自分の人格にフィードバックすることができます。瞑想や認知療法はその一助となります。
現代に生きる私たちは、意識的に自己理解を深め、他者への奉仕を通じて社会に良い循環を生み出す努力が求められているのかもしれません。
結論として、人間は論理的思考を持ちながらも、無意識の情動的反応に大きく影響されて行動しています。この原理を理解し、自分自身や他者を冷静にメタ認知することで、より豊かな人間関係や社会の構築が可能になるでしょう。
今回の内容、いかがでしたか?
テーマに関連する書籍を読むときは、図解ツールを手元に置いて解釈を深めたり、
また皆さんの周りの仲間と「社会」について議論する際の、「論点の地図」として活用していただけるとうれしいです。
皆さんの感想や気づきも教えていただけるとさらに嬉しいです。
感想
今回の「非論理性」について理解を深めることで、人間の本質的な部分に触れたような気がし、素人ながらも深く納得しました。これまでいくつか人間心理について図解してきましたが、その根幹にも通じる要素があると感じます。
そして改めて図解ツールの有用性も、このテーマから説明できるのではないかと思いました。仕事の現場でも、私自身や周囲のメンバーを見ていると、つい口頭だけで議論が進んでしまい、結果として感情のぶつけ合いになってしまった…という会議は少なくありません。
しかし、そんなときに図解ツールを使ってお互いの意識を整理し、共通の認識に立つことで、より建設的な議論ができるのではないかと改めて感じました。
その裏付けとして、つい先日も隣の席でかみ合わない議論をしていた同僚二人に「内発的動機」の図解を見せました。
「業務へのアサインの異論からいきなり業務へのアサインの是非を会議のアジェンダにしようとしているように聞こえる。けどその異論はそもそもその業務の目標や課題がよくわかっていないからではないの?だからこそそれらをまず関係者で明確化することが次の会議のアジェンダになるのではない?」とアドバイスしたところ、議論が整理され、うまく収束しました。この経験は、図解ツールの有用性を再確認する良い機会となりました。
ぜひこのnoteを読んでくださった皆さんにも、図解ツールを普段の仕事や生活の中で活用していただければ嬉しいです。
「知識の骨組み」シリーズ
この他にもさまざまなテーマについて図解していますので、ご興味があればぜひお読みください。