【自社製品紹介】『集中ナビ MRCLE』実証実験レポート
こんにちは。犬好きのリンコです。
今回は、私も開発を担当している、弊社製品のWebアプリケーション、「集中ナビMRCLE(ミラクル)」を使って行われた実証実験についてご紹介したいと思います!
※本記事は、2024年1月30日に開催された「これからの教育データ利活用を考える研究会」久喜シンポジウムにて、実証実験を行った鷲宮中学校の青木真一前校長による発表資料の内容を参考に作成しています。
MRCLEがどのようなシステムなのかについては、以下をご参照ください。
実証実験の概要
実証対象:埼玉県久喜市鷲宮中学校の1クラスの生徒 31名
実証期間:2023年4月~2024年1月(今年度は実施していません)
実験背景:一斉指導の授業から、個別最適な授業への移行にあたり、
授業中の集中度の変化を可視化したい。
実証目的:生徒の意欲や学びに対する個別最適な学びに繋げるとともに、
教育の質向上を図る。
近年、GIGAスクール構想により、全国の小中学校で一人一台端末が導入されるようになりました。
GIGAスクール構想とは、教師・児童生徒の力を最大限に引き出すべく、2019年に文部科学省より打ち出されたもので、個別最適な学びを目指す教育改革を指します。
教育現場のICT環境を整備することで、生徒たちの何かを調べ議論する力や、良識のある情報発信を行える力を養っていくものです。
本実証実験でもこちらを導入した、個別最適な授業を行うにあたり、「従来の一斉指導の授業と比べ、より集中して学習に取り組めるのではないか」という仮説が立てられました。
つまりこの仮説を検証するツールとして、集中状態を可視化するMRCLEが活用された、というわけなのです。
また上記の実証目的を達成するため、次のような取り組みが行われました。
MRCLEのリストバンドから得られた学習時の脈拍から、「学びの集中度・心理状態」を可視化して教師に提供する。
教師は、従来の経験や勘といった「力量」に加え、MRCLEから得られる客観的データをもとに、エビデンスを持った授業改善につなげる。
生徒は、自らのデータを振り返ることで自分に合った学習の姿勢を身に着けていけるよう、学びの自己調整力向上につなげる。
結果
ではこの実証実験によって、どのような結果が得られたのでしょうか。
ここからは、一斉指導の授業を行っていた1学期と、個別最適な授業に移行した2学期、3学期との変化を、実際のグラフとともにご紹介していきます。
結果の前に、まずはMRCLEのグラフの見方について簡単にご説明します。
グラフのオレンジ線は集中指数と呼ばれるもので、脈拍から算出した1分間隔の集中状態の値をプロットしています。
一方オレンジの点は集中度傾向を表しており、集中指数の累計値が描画されています。
一斉授業の場合
まずは、一斉授業における生徒さんたちの集中状態について見ていきましょう。
この授業では、3人とも少し退屈傾向であったことがわかります。
これに対し青木前校長は、「”説明を聞かなくても分かるので退屈な人”と、”授業がわからなすぎて退屈”な人が混在している」と述べられています。
一方こちらは、同じ授業内容でもMRCLEのグラフはバラバラで、緊張傾向にある人と退屈傾向にある人が混在していることがわかります。
また上記は、授業の経過時間に応じた全体の集中状況を示すプログレスバーです。
この授業では、終盤になると退屈や眠気状態の生徒の割合が増えていることがわかります。
青木前校長先生によると、「生徒全員に同じ課題を与えると、早く終えた人は退屈になってしまう」ため、このような集中状況になっていたのではないかと推測されます。
では授業形態を変えた際に、集中状態にどのような変化が生まれるのでしょうか。
個別最適な授業の場合
2学期からの授業では、一人一台端末で課題に挑戦するようになりました。
課題はオンラインで配布され、「自分のペースで、自分で選んで、学ぶ・学びあう・教えあう」ことが可能になったと言います。
以下は個別最適な授業に移行後のMRCLEのグラフです。
上記2つの授業から、いずれも、極端な緊張や眠気を抱えた人はいなくなり、授業全体を通して適度な集中状態を維持できている人が増えていることがわかります。
個別最適な学びを取り入れた授業への移行によって、自分のペースで学ぶことが可能となり、生徒さん達の学びに対する意欲が向上したと言えるのではないでしょうか。
実際の声
ここからは、MRCLEを使ってみて出てきた、実際の声をご紹介していきたいと思います。
教師の声
口数が少ない子に対して、教員が集中状態の変化をグラフで確認し、生徒に声をかけることができた。
ストレスを抱えている生徒のサポートに活用できた。
MRCLEを使うことで自分のペースをつかめるようになったのか、導入前よりも集中している生徒が増えた印象があった。
シンポジウムの中で、青木前校長はMRCLEについて、「管理ツール・評価ツールのどちらでもなく、教師が自分の授業を改善するための、教師が生徒を支援するためのツールの1つである」と述べられていました。
生徒の声
集中状態をコントロールしようと、意識して行動するようになった。
苦手な科目はあまり集中できていないことが分かった。
自分がこんなに緊張していたとは思わず、グラフを見て驚いた。
「リラックス」や「眠気」になっているグラフが大体同じ授業で、とても驚いた。
自分では集中していると思っていても、グラフを見てみる集中指数が低めだったので、もっと集中して授業に取り組んでいこうと思った。
実際に生徒さんから出た声を見ても、MRCLEによって「自分を知る」ことで、学びに向かう意識変容に繋がっていることがわかります。
実証実験中の開発の様子
最後に、実証実験を行っていた間の開発の様子についてお伝えできればと思います。
実はこの実証実験中の裏では、いくつかの機能が開発されていました。
実証実験が始まったころのMRCLEでは、授業中・授業後ともに、以下のようなグラフと一覧のみが確認できる仕様だったのですが、
ある時学校側から、
「授業中にあまりグラフを確認できない」
「授業中パッと見て状況がわかる機能があれば…」
という声をいただく機会があったのです。
それを聞いた開発チームでは、さっそく新機能作成に着手しました。
確認しやすく、一目見て生徒さん達の状況が把握できる機能について、あれやこれやとチームメンバーで意見を出し合い、そして生まれたのがこちらです!
この全生徒の集中状態画面は、授業中にリアルタイムで確認することができる画面です。
ユーザの集中状態に該当するアイコンと背景色から成るラベルが全員分表示されており、どれくらいの人が集中できているのか、はたまた眠気/ストレスを抱えているのかが、シンプルにビジュアライズされています。
実際に全生徒の集中状態画面を見た先生方から、画面の見やすさ・きれいさについてお褒めの言葉をいただき、大変嬉しかったことを覚えています。
一方で、「授業中だけでなく、先生方が過去の授業を振り返る際も、全体の状態を確認できる機能があった方が良いのでは」という意見が開発チーム内で上がりました。
そこで新たに開発されたのがこちらです!
前章でも少しだけご紹介しましたが、このプログレスバーは過去の授業を確認する際に使用できる機能です。
下部にあるスライダーで選択された経過時間のタイミングにおける、生徒の集中状態の割合を確認することができます。
プログレスバーについては直接ユーザーからの希望があったわけではなく、開発側でユーザーの立場になって考え、実装した機能です。
ですが実際に使用した先生方から、
「手ごたえのなかった授業があった場合に、プログレスバーを確認することで状況を把握することができた」
という感想をいただき、ユーザビリティ向上に繋げることができました。
このように、現場の声がすぐに届き、それをすぐに反映できるのは自社製品ならではと言えるのではないでしょうか。
また自分の作った機能を、ユーザーから直接褒めていただける点も大きな魅力だと思います!
最後に
今回は、弊社自社製品「集中ナビMRCLE」を使って行われた実証実験のレポートをお届けしました。
実は実証実験中に開発した「全生徒の集中状態画面」は、私が入社1年目で初めて実装した画面でもあるので、特別な思い入れがあります。
今回この記事を書いている過程で当時を振り返ることができ、これからも初心を忘れず頑張っていきたいと改めて感じました。
では、最後までお読みいただきありがとうございました!