守りたい世界の話
ちょっと逃避する場所
この世界と距離を置ける場所
わたしが願う居場所
図書館司書になりたかった
そのきっかけは、『図書館戦争』だった。
正義を貫く姿に、強く惹かれた。
特に、柴咲のようになりたかった。強く気高く美しいひとに。
元々、図書室は私の大事な居場所だった。
休み時間が嫌いな子供だった。
仲良しグループ、一人一人の話し声、騒ぎ立てる男子、感情、騒音。
小さな教室内に詰め込まれた情報量に耐えられなくて、静かな場所に行きたかった。
廊下に出る。廊下で騒ぐ人たちや、開け放たれたドアから見える教室内の人々の姿をにらみつけて歩いた。憎しみや怒りを持っていたわけではなかった。身構えていた。年中身体がこわばっていた。うまく笑うこともできなかった。ひどく肩が凝った。にきびが多かった。本当に生きづらかった。心を無にしてたどり着いた図書室は、いつも私を救ってくれた。
静けさ、各個人の世界が侵害されない空間。誰にも邪魔されず、<わたし>でいられた。あるいは、<わたし>を無くしてくれた、のかもしれない。
もっぱら小説ばかりを読んでいた。
マジックツリーハウス、黒魔女さんが通る!、有川浩、恩田陸。
それらの物語に触れている間は、現実を見なくて済んだ。
図書室に行かない休み時間は、机にかじりついて本を開く。周りの声など聞こえていないふりをして、ただ文字を追う、紙をめくる。そうしているうちに本当に周りの声は聞こえなくなっていった。ただ、物語の中の世界にだけ没頭できた。
国語の時間。教科書に載っている物語は、先生の音読を待たずして最後まで読み進めた。先読みすら二周ほどしてしまったら、机の中の本をそっと取り出して、隠れて読んだ。
算数の時間。「解けた人から静かに休み時間にしていいよ」、と言われれば、真っ先に解き終わって、本を読んだ。
物語の合間に授業を受けていたし、物語の合間に同級生との交流があった。
私の生活の中心は、本の中にあった。
そうやって平穏を保っていた。そうやって、息をしていた。
私は、<この世界>を守りたいのだ。
生きづらさを抱えた人の、安息の場所を守りたいのだ。
コミュニケーションを無理強いされない場所。一人の安寧が保たれる場所。
今のわたしを守ってくれる場所は、果たして、。
わたしは一体、何に脅かされていたのか?
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