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『グラディエーターⅡ』をみる

こんにちは!
最近は暑いんだか寒いんだか、妙な環境になっちまって、四季の消失を憂えています。
アメリカ大統領選もありましたね。
『グラディエーター』一作目を見返していたときに、「偉大なるローマ」だの「ローマの夢」だのといったセリフがいちいち印象的で、それは「偉大なるアメリカ」「アメリカン・ドリーム」とかかっていることに、今さらながら気がついたのは、ニュースのおかげかもしれない。

というわけで一作目など、とてもタイムリーな鑑賞なのですよ今。
コロッセオでの大衆人気のみが、コモドゥスかマキシマスか皇帝の座を決めるのである。おそろしく明快な政治だ。

そして実に24年ぶりとなる続編、『グラディエーターⅡ』は企画こそ一作目のヒット直後にあったものの、紆余曲折あって実現することはなかった企画だという。
それが今復活したわけで、さっきもいったように大統領選と重なるという、時宜を得た公開となった。引き続き監督となったリドリーの意図も、おおよそそのようなものだろう。

しかしこの映画がすごいのは、まず脚本が一作目とほとんど同じ展開をなぞることだ。
一作目ではラッセル・クロウが演じる、家族を殺され奴隷となってしまったマキシマス将軍が剣闘士となり、帝位を略奪し、また家族を殺す命令を下したコモドゥス帝に復讐を果たすという物語だった。

今作では、同じく妻を殺されたハンノと呼ばれる、ローマからすれば蛮人の男が、奴隷となり剣闘士になり、やっぱり復讐をするという物語だ。

なのでこれはもう、一作目『グラディエーター』の監督によるセルフリメイクと言ってもいいのではないか。
現に証拠として、サイが登場するシーンは一作目でやろうとしたけど実現しなかったネタらしく、それを今回引っ張り出してきたわけだ。

『グラディエーターⅡ』はレディオヘッドのアルバムで例えると、『KID A』と『アムニージアック』の関係に近い。(伝わらない?)
それならビーチボーイズの『ペットサウンズ』と『スマイル』の関係といった方がもっと適切か。(もっと伝わらない?)
B面集ともいえそう。

それかこう考えるのだ。
本作をリドリー・スコットによる『グラディエーター』2024年Mixだと思うのだ。
アレンジ違いを楽しめばいい。
ぼくが今作で最大の見どころだと思うのは、新たにRemixされたコロッセオの演目などだ。

剣闘士となったハンノがまず最初に戦わされるのが、ヒヒである。
霊長類のヒヒである。

ヒヒはVFXでできていて、これがただのヒヒだったら、しょぼい退屈なシーンになっただろう。だがしかし、なんなんだこのヒヒは?
猟犬のような獰猛な見た目をしていて、『ストレンジャー・シングス』のデモゴルゴンみたいに襲いかかり、剣闘士たちの喉元を噛みちぎろうとする。
本当にこんなヒヒが地球上に存在するのか?という驚愕の戦闘シーンになっている。

お次はコロッセオでの戦いで、一作目でやるはずだったネタ、サイvs剣闘士。
コロッセオの入場ゲートの暗がりで、サイがちらっとだけ写ってこれから登場することを匂わせる短いカットで、「おおっ」とテンションが上がったのもつかの間、躍り出たサイのうえに男がまたがっていて、「ヘイル、シーザー!」と雄叫びをあげるのだから二重に喫驚した。

サイだ!と思ったら次の瞬間、男が乗っとる…!という二段構えで、ヒヒもそうだけどいちいち想像の上を仕掛けてくる。

最後の出し物は、海上戦。
コロッセオに水を引いて、サメなど泳がせておいて、そこでサラミスの海戦を模した海上戦を行うのだ。
リドリー曰く、史実。
とのことだが、この人は史実を正確に再現する一方、大胆に捻じ曲げる人でもある
ので、この情報も油断がならない。

サラミスの海戦といえば『300 スリーハンドレッド』の二作目で描かれていたやつだと思う。

ヴィジュアル的にもカオスで、一歩間違えば荒唐無稽の域にある展開だが、ど正面から試みてしまうのが、この監督の意味不明な暴走力というもの。
観客はあんぐりと口を開けているしかない。

俳優陣なども特筆することだと思う。
デンゼル・ワシントンなどすごく良かったと思う。
リドスコ映画だと『アメリカン・ギャングスター』で運転手から麻薬王に転職した男を演じていた。ラッセル・クロウとも共演していた。

アカシウス将軍も個人的にお気に入りキャラで、なんなら主人公よりも目立っていた。

リドスコの映画は『ワールド・オブ・ライズ』みたいな下手したらB級映画なプロットを、俳優陣と美術でくそリアルにして、A級にしてしまうことがあり(エイリアンとかもそうかも)
それが今作でもマジカルな現象として発揮されたかも。
双子皇帝とかも、ギリギリの存在だ。アニメキャラみたいに見えたもん。
これ吹替が、宮野真守と梶裕貴らしくって、宮野真守のゲタ皇帝とか想像がつきすぎる。
他にもマクリヌスが大塚明夫、アカシウスが山寺宏一で、吹き替えも楽しそうだなぁとか思ったり。

余談だけど、ハンノがローマにやってくるとき、門の上にロムルスとレムスの像が飾られてあって、やっっっっっぱ『エイリアン:ロムルス』じゃねーかと、驚愕の伏線回収を目の当たりにした。

多分『エイリアン』の新作の企画が動いていたとき、すでに『グラディエーターⅡ』を作るため、頭の中がローマでいっぱいになっていたリドリーが、「エイリアン新作のタイトル、ロムルスがよくね?」みたいなノリで決めてしまったのだろう。
エイリアンの方はロムルス要素薄かったもん。
こうなったらもう『エイリアンVSグラディエーター』をやるしかない。
コロッセオでゼノモーフと戦うの。

また例によって、ディレクターズカット版が作られるのかもしれないが、そうなったらもう少し話の流れなど滑らかになるのだろうか。
『グラディエーターⅡ』はとにかく“出し物”がすごく、荒唐無稽とも言えるアイデアの数々にくらくらしよう! という映画でした。
パンフないのが悲しい。

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