サイバーパンクについて
サイバーパンク覚え書き
SFジャンルに通暁するものならば、必ず目に(耳に)するであろう言葉。
サイバーパンク。
サイバーパンクと言えば、陰鬱な未来都市に絶えず汚染された雨が打ちつけ、
派手なファッションの兄ちゃん姉ちゃんが身体改造を施され、電脳空間に没入する、そんな世界だろ?
『ブレードランナー』 『AKIRA』 『攻殻機動隊』 『マトリックス』
ゲームだと『サイバーパンク2077』なんかで描き続けられた未来。
と思うだろうが、違う
そもそもサイバーパンクとは80年代に成立したSF小説のサブジャンルで、
ウィリアム・ギブスンやブルース・スターリングといった当時新進の特徴的なスタイルのSFを発表する若者たちの派閥を揶揄するものだった。
しかし、これら原点と言える作家たちの作品は、必ずしも上にあげたようなサイバーパンクのイメージとは合致しない。
サイバーパンクの煽動者とも呼ばれるスターリングの3作目の長編は(実質的にはこの3作目である『スキズマトリックス』が彼のサイバーパンクデビュー長編であるのだが)一切、退廃的未来都市や電脳空間といった設定は出てこない。にもかかわらず、サイバーパンクの代表作と称されるのだ。
このようなジャンル認識の乖離がなぜ起こったのか、その理由の一つには
もう一人の中心人物、サイバーパンクの教祖、ウィリアム・ギブスンのデビュー長編であり、サイバーパンクというジャンルそのものを世界に知らしめた小説『ニューロマンサー』にある。
この『ニューロマンサー』こそ、我々がこんにちサイバーパンクと呼ぶジャンルの全てを形作った作品、爆心地なのだ。
退廃的未来都市、パンクな野郎女郎ども、電脳世界への没入。
あまりにキャッチーでセンセーショナルな世界観は、瞬く間にSF界の内外に浸透し、一つのカルチャーとなる。
後進の作家たちもこぞって、この『ニューロマンサー』の模倣を始め、パロディ、オマージュ、クリシェ、エピゴーネンの嵐となる。
その後はポストサイバーパンクとして、道具立てを一新した作品や、スチームパンクなど、様々な傍流を産んで拡散していきました。
攻殻機動隊の世界観もだんだん一般に浸透してきた今こそ、もう一度読む価値のあるSFだと思います。
なのでハヤカワ書房には頑張ってもらいたい。復刊してほしい。
サイバーパンク関連文献
文学史としてのサイバーパンクは『サイバーパンク・アメリカ』でおさらいできる。当時の状況などが詳しく知れます。
サイバーパンクの導師、ギブスンについては『現代作家ガイド』を。濃いめの作品論にインタビュー、『ニューロマンサー』など各作品のプロットも掲載されているので、難解でついていけなかった人にもおすすめ。
もう一人の重要人物ブルース・スターリングに関しては、伊藤計劃氏Webサイト『STERLINGRAD』がおすすめ。伊藤氏いわく、スターリングのファンサイト、だそう。作品紹介や書評など、伊藤氏個人の思索も窺える文章です。
読書ガイド
ネットで見つけたサイトです。面白い本いっぱいあるよ。