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『ドリーム・シナリオ』をみる

もう残すところ1ヶ月で今年が終わるようで、ぼくのまわりでは何事もなく、来年を迎えられそうでよい感じ。
今年見た映画を総括する段階に入ってきましたね。

どうやらぼくはいま厄年らしく(後厄というやつですね)来年になると、それが明けるのですよ。
本業は漫画家なのですが、ジャンプSQに読み切りの掲載も決まりそうで、来年には公開される運び。次からは連載用のネームに取りかかることになるので、やはり来年なのか? 来年に何か起こるのか?

もう今年見たい映画は『動物界』くらいです。
岡山県なので『ロボット・ドリームス』など気になる映画は、周回遅れで公開するため、今年中には見られない。

あとはTOHOシネマズで『ネットワーク』をリバイバル上映するらしく、『ジョーカー』を見たあと気になっていたので、このタイミングで見れるのはラッキーかも。それくらいだ。

さてと、本題。
A24とアリ・アスターが製作にまわり、クリストファー・ボルグリという新鋭のノルウェー監督がメガホンをとったホラーコメディ『ドリーム・シナリオ』
A24とかアスター監督のブランドに相応の内容になっていて、彼らの作品が好きな人はきっとハマるだろう内容でした。

予告編を見たかぎりでは、『エルム街の悪夢』かThis Manの都市伝説のような、正体不明の男が夢に現れて、人々を恐怖のどん底に陥れる話なのかと想像しましたが、実際は逆だった。

ニコラス・ケイジ演じる冴えない大学教授ポールが、ある日突然、みんなの夢のなかに現れ始め注目の的になり、端的にいうとバズってしまう。
しかし気をよくしたのもつかの間、大学時代の同輩に研究を盗まれてしまい、彼自身、不満がたまると、夢のなかに現れる男も凶暴化。
安眠を妨げられ、トラウマを訴えでる人が続出するという結果に。
それ以来、ポールは誹謗中傷に晒されるようになる。

つまりこの映画は、エルム街のフレディ役にされてしまった男が、社会から追い詰められていくという、そういうホラーなのです。
スケアリーな恐怖というより、じわじわと続く、悪夢感のある恐怖です。ナイトメア・シナリオです。

監督の意図としては、行き過ぎたキャンセル・カルチャーを題材に、現代を風刺する作品を作る。というところでしょう。
『ドリーム・シナリオ』はアメリカの話ですが、イギリス人が監督した『シビルウォー』と同じく、ノルウェー人による部外者の視点だからこそ、ここまで容赦ない現実を描けたのだろうか、とも思ったり。
(あと映画に出てくる家具が、北欧風で素敵な感じ)

中年男性の疎外と偏見という側面も見過ごせず、これがニコケイではなく美女か、イケメンだったらどうだろう? 悪夢でも嬉しかったりするのだろうか。
扉に指を挟まれて怪我した学校の先生の反応とか、なかなか怖い。

主演のニコラス・ケイジも、近年になって存在感を増してきて、本作でも実力を遺憾無く発揮しています。
鼻を特殊メイクしたり、髪をハゲにしたり、トドメはメガネを装着して、本人のアクの強いビジュアルを打ち消しているというのも、おもしろポイントですね。
拘束具を付けられている危険人物の感じ。やつは本気を出していない……。

なぜこうしなければならないのか、ぼくの推理ではあるけど、今作の役柄とニコケイの実人生がシンクロしていて、彼そのもののビジュアルでいくと、自伝的な作品に見られてしまう危険性があったのではないか。

2008年ごろ、ニコケイをネタにするネットミームが拡散されたことがあり、ネット民の間で大盛り上がりしたらしい。
本人はあまり面白くなかったようで、変人扱いされるのにうんざりしたらしい。当たり前ですけどね。

日本でも街頭インタビューとかでネットのおもちゃにされてしまった人物をたくさん見かけますが、そろそろ(いやとっくに)笑えない段階に来ているのだろうと、今作を見て思った。

そしてラストパートでは急にSF設定が持ち込まれるというサプライズがある。
夢のなかに入り込んで広告をするという夢宣伝ビジネスが発達し、ユングの集合的無意識を自由に活用できるようになった社会が描かれ始める。

寝てる時にまで広告かよというディストピアに震え上がりますが、『パプリカ』とか『インセプション』とは別の世界が描けそうで、これはこれとして単体でおもろい。
あと予算の関係か、監督の興味の違いか、夢世界のビジュアルとかが探求されないがもったいない。タキシードで謎のキノコ食ってるビジュアルがシュールだったくらいだ。
あとはトーキング・ヘッズの格好で現れるラストシーンとか。ここが唯一、エモーショナルでコミカルないいシーンだった。

『ドリーム・シナリオ』はアスター監督の『ボーは恐れている』にテイストが近く、あの映画ほど長くはないが、同じオブセッションを感じられます。
アスター監督の映画が好きな人は、楽しめる。『エルム街』を期待すると、ちょっと外す。
社会風刺系で悪夢的映画。そんな感じです。
なかなか、楽しめる一作でした。

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