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TTPの極意を寿司職人が語ってみたら読書と同じだった件

TTPの実践から知恵を得る方法

“TTP”という言葉がある。
営業やマーケティング用語として使われることが多いですが、元々はどこかの社長さんが使い始めてからリクルートなどで広まった言葉のようです。
TTP(徹底的にパクる)という意味で用いられるのですが、この言葉自体が一人歩きをしてしまい、意味を履き違えて使われることが多いようです。

こうした省略語というのは、使いやすく、キャッチーなため多くの人が使用しますが、不特定多数が使用するからこその、“間違った使い方”が多く見受けられることも事実です。
TTPというと、「パクれば仕事ができるようになる」と考えている人が多いようですが、実はパクってからが本番なのです。
そんなお話をしてみたいと思います。

私は寿司屋という世界で25年間働いてきましたが、こうした“職人の世界”というのは、「見て盗む」ことが当たり前に行われてきました。
親切に、仕事をていねいに教えてくれることは無かったのです。もちろん、例外的に親切な職人さんも、ごく一部おられましたが、多くの職人さんは教えてなどくれませんでした。
理由としては、職人という仕事は、その多くが一人で黙々と取り組む仕事です。そうした仕事を選ぶ人がそうなのか、そうした仕事だからなのか、口下手な人がほとんどでした。
お客さんの前でなら話せるのに、普段はほとんど話さない人が多く、そんな私自身も、仕事なら話せても、それ以外では無口な人間でした。
仕事は、仕事と割り切ることができるのに、普段ならスイッチが切れたように、一日中声を出さない日も多々ありました。

無口な人が仕事を教えるときに、「仕事なんだから、スイッチ入れて声を出しそう」そう考える方も多いとは思いますが、全く逆で、声に出さず、自分がやっている事を見せるだけの人が多かったのです。自分の仕事を見られることを嫌がる人も多かったため、“盗み見る”ことをしなくては、仕事が覚えられなかった現実がありました。
そう考えると、口下手だから教えないのではなく、「自分の仕事を邪魔されたくない」という感覚だったのかもれませんね。

そんな環境だったため、私は仕事をていねいに教えてもらった記憶はほとんどありません。当時はそれが、“当たり前”だったので、「何で教えてくれないんだ」なんて考えたこともありませんでした。
しかし、この“見て盗む”ですが、これが一筋縄ではいきませんでした。
なぜなら、戦争のように怒号と罵声が乱れ飛ぶ仕事環境であったため、バタバタと忙しい時に、ぼーっと見ているわけにはいきません。“見ていられる時間帯”というものが存在するのです。
忙しくない時、自分が役割として与えられた仕事が、ある程度片付いた時などしか、見ていられるほどの余裕はなかったわけです。

このような環境下において、自分が許される時間だけ、先輩方の仕事を見ているのでは、上達するのにも時間がかかって仕方ないですよね。
そこで私が考えたのは、
「雑用という雑用を勤務時間外に全て片付けて、準備万端にする」
というものでした。
そして、新聞配達よりも早く起きて、日付が変わってから寝るという生活を実践しました。

こうした工夫によって、無事に、誰よりも先輩方の仕事を盗むことができるようになったのです。
しかし、ここからが本番です。
仕事というのは、盗んだら終わりではなく、そこからが始まりなのは、冒頭でもお伝えした通りです。
まずは徹底的に真似ることから始めます。人のことを徹底的に観察し、それをそのまま再現する力というのは、今でもかなり得意な方だと自負しています。
コツとしては、とにかく観察することです。

しかし、ここでもう一つ、重要なポイントがあります。
観察して、先輩のやっていることをパクる時、どれだけ手順の少ない作業だったとしても、仕事内容を丸暗記するのは限界があります。
コツは、仕事内容を理解することです。
「そんなの、当たり前じゃん」という声が聞こえてきそうですが、それが当たり前ではなく、TTPを実践している人のほとんどは、何も考えずにただ、真似をしている人がとても多くいらっしゃいます。
「尊敬している人がやっていることだから、私も実践しているんです」
なんて人がとても多いのです。
その仕事や作業内容をきちんと理解して、「なぜこれをしているのか?」ということを、自分で理解しなくてはいけません。そうでないと、ただの“猿真似”となってしまい、その結果は自分のものではなくなってしまうのです。

どうせ丸パクリするのなら、その行動の細かい部分に至るまで徹底的に理解し、それにプラスしていくのです。
「もっといい方法があるのではないか」
このような考え方は、読書と同じです。
本を読んで、本の内容をそのまま使うのではなく、本の内容からもう一段階上の考え方を考えるのです。
「自分なら、こうした方がいいと思う」
ということを、一つでも二つでも増やしていくことが、TTPでは終わらず、知識を自分の知恵にすることにつながるのです。

下積みが長かったこともあり、完コピするのは、私自身が最も得意とするところです。
そんな私が考えたTTPの実践は、知恵につながるのかを考えることが最も重要なのです。

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尾崎コスモス/小説家新人賞を目指して執筆中
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