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『少女マクベス』の紹介と感想

降田天作品初体験記


作者紹介

プロット担当:萩野 瑛
執筆担当:鮎川 颯
二人によるユニット名が、降田天となっている。

1980年代に生まれた二人は、地元が別であったが、大学で友人として知り合った。小説を書くことが好きだった鮎川さんが、それでも自分の作る作品が面白くないと感じていたときに、萩野さんに読んでもらったところ的確なアドバイスを受けたことによって、二人で執筆活動をする決心をした。
萩野が大筋を書き、2人で登場人物の心情などを話し合った後で、鮎川が執筆していることが多い。

作品紹介

降田天作品は数多くあるが、今回ご紹介したいのは、『少女マクベス』(2024年8月 双葉社)である。

少女マクベス公式ホームページ
ホームページでもご紹介されている(ホームページがめちゃくちゃカッコいい!!)が、ここでも作品を一部、ご紹介したい。

学内一の天才と謳われた劇作家志望の女子生徒が、
自身の手がける「マクベス」の上演中に舞台から不審な転落死を遂げる。
彼女の死の真相とは――?

演劇女子学校に入学した結城さやかは、劇作家を目指している。同学年には同じく劇作家志望で、学内一の天才と謳われる設楽了(したら・りょう)がいた。了は俳優の能力を引き出し、観客を魅了する舞台を作り上げる卓越した才能をもっていた。了の手がける舞台に上がりたい、了に認められたいと俳優志望の生徒達はこぞって渇望する。次第に周囲から「神」とまで崇められた了は、横暴な振る舞いをしても良い舞台を作るためだと許された。しかしそんな了は突然、自分の手がける演劇の上演中に舞台から転落死する。不幸な事故だと片づけられたが、翌年の春に入学してきた新入生・藤代貴水(ふじしろ・たかみ)は全校生徒の前で高らかに宣言した。「わたしは、設楽了の死の真相を調べに来ました」——さやかは貴水に巻き込まれる形で、了と生前の関わりのあった生徒を調べることになり・・・・・・演劇を愛する生徒達の眩く鮮烈な学園ミステリー!

『少女マクベス』ホームページより抜粋

作品について感じたことや感想

とにかくこの作品は、少女と少女の間に発生する大きな感情を味わえる作品です!
それがゾクゾクして、楽しい作品なのですが、なにせ登場人物が多い!
物語の主人公、結城さやかよりも強烈なキャラクターで存在感を示している天才劇作家「設楽了」が君臨しています。
その設楽了を中心として、8人の女生徒が登場人物として物語をまわしていくのですが、この学年も個性も違うはずの8人が、読んでいくうちに混乱してきます(汗)

綺羅や氷菜、綾乃や貴水といった現代の名前が羅列すると、どうしてもキャラが頭の中でごちゃごちゃになったのですが、これをめちゃくちゃカッコいいホームページが、『人物相関図』として解消してくれています。(下にあるように『百花演劇学校の生徒たち』という名前で、なんと! キャラクターごとにイラスト化して描かれているため、これを見ながら読み進めるとわかりやすくなります! この絵がかわいい!)

ホームページにある人物相関図紹介欄

降田天さんは、お二人とも演劇の経験はなく、実際に取材もされていないということなので、厳密には違和感を持たれる部分があるかもしれません。
しかし、それに余りあるほどの女生徒同士の関係性の中で起こりうる、深い感情描写は見事だと思います。
降田天さんは、観劇はお好きだそうで、それこそ『マクベス』への情熱は、インタビューなどでお話しされているところを拝見しても、ひしひしと伝わってきます。

わたし自身は、『マクベス』を見たことも読んだこともなく、ただ地方の小さな劇場に観劇に行く程度の演劇好きであり、まったくの『マクベス』素人なのですが、それでも十分に楽しめました。

降田天さんも、アイドルオーディションを見ることがとにかくお好きらしく、そこから今回の演劇学校の女生徒同士のライバル関係を描いていくための着想を得ていたそうです。
たしかに、テレビなどでたまに見る、アイドルオーディションは見ているだけでヒリヒリする緊張感が伝わってきますものね。わかる気がします。

『少女マクベス』を読むべき人はこんな人

わたしは、書店でこの本を見つけたとき、とにかく「装丁が素敵!」と言って飛びついて購入したのですが、結果的に正解でした。
睨みつけるような少女のイラストが表紙絵に描かれえていて、それはまるで「天才少女を具現化したような表情」だと思えてならなかったのです。

『この銀盤を君と跳ぶ』という綾崎隼さんの作品でも、天才少女が描かれていましたが、このようなとっつき悪さは、実際にクラスメイトでいたら親しくなりにくいですが、遠巻きに見ている分には興味がそそられる魅力にあふれています。
つまり、小説だからこそ、お近づきになれる存在なのです。

熱く、情熱を傾けて何かに熱中している人には、何にも代えがたい魅力にあふれています。
夏の甲子園をみているような、何かに突き動かされるような感覚に浸りたい人は、絶対に読むべき一冊です。

やる気が出ない、明日への活力が湧かないなんて、「そんなことを言っている場合じゃない!」と自分を鼓舞するには、こうした「天才に感情をゆだねてみる」ことは、効果的だと思います。

さあ、あなたも『少女マクベス』を読んで、明日から何かに熱中しませんか?

きっと、そうしたくなる何かが、この作品には詰まっています。

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尾崎コスモス/ライター
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