【植物と短歌】ツユクサ
ツユクサは別名「月草」や「蛍草」とも呼ばれる青紫色の花を咲かせる植物だ。
花期が6~8月と書かれていたが、私の体感だともっと長い期間咲いていたように思う。
ツユクサの登場する短歌を探してみると、古くから現代までよく詠まれていることが分かった。一例を引用する。
<和歌>
<近・現代短歌>
和歌では「月草」と詠まれることが圧倒的に多いようだ。
花が一日でしぼむことから自分が消えそうなほど切なさに死んでしまいそうな想いに喩えたり、ツユクサは染料としても使われるのだが水で洗うとすぐ色落ちしてしまうことから相手の心変わりに喩えたり、恋の歌に詠み込まれることが多かったらしい(平田喜信, 身﨑壽. 和歌植物表現辞典. 東京堂出版, 1994, p203)。
近・現代短歌においてはどうだろうか。短歌表現辞典(飯塚書店編集部. 短歌表現辞典 草木花編. 飯塚書店, 2021, p152)に掲載されている歌を見た感じでは、恋の歌に詠み込まれているという印象は受けなかった。単に美しいものとして詠まれていたり、儚いものとして詠まれていたり…。
青色の花というのは印象的なのか、今昔物語中に、
とあったり(倉敷市立自然史博物館のHPで「生色なき顔の形容として用いる」と紹介されている)、
源氏物語中には、
とあるなど、ツユクサは古くから比喩表現に用いられることがあったようだ。
また、清少納言は枕草子に、
と書き残している。
古くから親しまれてきた植物であることは間違いなさそうだ。
そういえば最近読んだ論文に、花において青色は美しさの評価を高める効果があるとあった(Hůla & Flegr, 2016)。チェコ人が対象の調査についての論文だったから日本人にも同じことが言えるかは分からないが、通ずるものはあるかもしれない。
最後に余談。源氏物語といえば今年の大河ドラマだが、ついに先週最終回を迎えてしまった。
少し意外な終わり方だったが、良い終わり方だったとも思う。
1年間毎週の楽しみにしていたからすごくさみしい。
まだ大河ドラマ館に行けていない。行かなきゃ。
Hůla M, Flegr J. 2016. What flowers do we like? The influence of shape and color on the rating of flower beauty. Peer J, e2016.
https://peerj.com/articles/2106.pdf