掲載「率」ベスト①みすず書房の71%(新聞書評の研究2019-2021)
はじめに
筆者は2017年11月にツイッターアカウント「新聞書評速報 汗牛充棟」を開設しました。全国紙5紙(読売、朝日、日経、毎日、産経)の書評に取り上げられた本を1冊ずつ、ひたすら呟いています。本稿では、2019年から2021年までに新聞掲載された総計約9300タイトルのデータを分析しています。よかったらフォローお願いします。
なんでそんなことを始めたのかは総論をご覧ください。
過去の連載はこちらをご覧ください。
書評に強い出版社6
前回までは、書評に取り上げられた回数が多かった出版社ベスト5までを紹介しました。
今回からは、掲載「率」(出版点数に対する書評掲載回数の百分率)の上位出版社を紹介します。
野球でいえば、安打数ではなく、打率に相当する概念です。書評数だけだと、出版点数が多い出版社に有利になるので、もう一つの指標をひねり出したわけです。
ただし、今度は逆に出版点数が少ない版元が有利になる可能性があります。1タイトルに複数の書評が掲載されることもありますから、2冊発行して、3回書評に取り上げられたら、150%なんてことになってしまいます。
そこで2019年~2021年の3年間に100冊以上の新規出版があった出版社に絞りました。規定打数のようなものだと理解していただければと思います。
なお、出版点数は国立国会図書館サーチの検索結果によっています。
みすず書房 71%
出版点数に対して、7割以上という驚くべき数字です。全体の44%に当たる123タイトルが少なくも1紙に取り上げられ、このうちの4割は複数の新聞に掲載されました。学芸系の翻訳書に強みを持ちます。日本の知的インフラの誇れる点の一つは、翻訳書の多さだと思っていますが、それを支えている出版社です。以下は、3紙以上に紹介されたタイトルのリストです。
3紙に紹介された13冊
『文明史から見たトルコ革命』
『庭とエスキース』
『反穀物の人類史』
『専門知は、もういらないのか』
『アメリカの世紀と日本』
『明治維新の敗者たち』
『味の台湾』
『第一印象の科学』
『時間』
『ランスへの帰郷』
『アルフレッド・ウォリス』
『アリストテレス 生物学の創造 上下』
『アウシュヴィッツ潜入記』
4紙に紹介された2冊
『資本主義だけ残った』
『霧中の読書』
次回は「亜紀書房」です。