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第五回"映画館で映画を観るってどんな魅力があるんだろう" 連載企画/シネ・リーブル梅田
連載第五回では、映画『最後にして最初の人類』の公開中(8/19まで公開)のシネ・リーブル梅田で支配人を務める山本沙有里さん に「映画館で映画を観る」ことについてお話を伺いました。
第五回
山本沙有里さん (東京テアトル株式会社/シネ・リーブル梅田 支配人)
―――さっそくですが、ご自身のお仕事と働く映画館について教えていただけますか?
(山本)シネ・リーブル梅田という大阪の映画館で支配人をしております。この役職に就いてからは、まだ半年ぐらいです。アルバイトから社員になって、今回、支配人になったので、もうずっとシネ・リーブル梅田にいます。
―――皆さんに自己紹介の代わりに「映画館での映画体験」と言われて思い出す作品をお伺いしてるんですが、山本さんはどんな作品を思い出しますか?
(山本)リュック・ベッソン監督の『レオン』(1995)です。この作品は、初めて”ミニシアター”に行くきっかけになった映画だったので、すごく覚えています。
映画も名作ですが、”ミニシアター”というものに強い衝撃を受けたっという意味で、思い出深い映画ですね。当時見た映画館が大阪でいうと、結構飲み屋街として知られる北新地にあるんですけど、そんなエリアの雑居ビルの中にあったんですね。
―――結構行くこと自体に勇気がいる場所ですね。
(山本)そうなんですよ。飲食店とかがいくつか入っていて、なんか「ほんまにこんなところに映画館あるんかな」みたいな感じ。エレベーターを上がってみて、パーっと扉が開いたら、映画館があったんです。めっちゃびっくりしました。
当時、立ち見とかも全然あるので、その映画館のスタッフさんが、立ち見のお客様にいろんなタイプの椅子を出してきて、そのまま映画が始まるっていう、シネコンのような映画館では絶対ないようなことが体験できて、観た映画の印象よりも、その劇場の様子はすごく覚えています。
―――そこから映画館でアルバイトを始めるにはどのような経緯があったんですか?
(山本)それまでは、何か見たい映画があれば、その作品を上映している映画館に行くって感じだったんですが、『レオン』をきっかけに”ミニシアター”を知ってからは”ミニシアター”で映画を見るスタイルに変わりました。自然と映画を観る本数っていうのも増えましたし、いろんなミニシアターを探して映画を観に行くことにはまっちゃったんですよね。
そんなときにちょうどシネ・リーブル梅田でアルバイトを募集していたので、「ぜひ、ここで働きたいな」っていう気持ちでアルバイト募集に応募しました。
―――今へと続くすごい強烈な映画体験だったんですね。
(山本)そうですね。いまでは、その北新地の映画館もなくなってしまったんですが、のちにそれが今働いているシネ・リーブル梅田の前身の映画館だったということを知りました。
シネ・リーブル梅田は、ミニシアターなんですが、スクリーンが4つあるのが特徴で、特集上映とかを含めると、年間300本弱ぐらいの作品を上映してるんです。今週6作品公開するみたいなことも頻繁にありますし、ラインナップの振り幅の広さ自体がシネ・リーブル梅田の特徴になるのかなと思っています。
―――前回、東京テアトルの西澤さんにお話を聞いたときに、東京テアトルで運営する映画館には、キャッチコピーがあるとお伺いしていただいたのですが、シネ・リーブル梅田さんの「様々なジャンルの良質な映画を幅広い世代へ提供する映画館」につながるお話ですね。
(山本)そうですね。働くスタッフ含めて、みんなそう思ってると思います。上映作品決まるたびに、みんなざわざわしたりすることもありますし、その多彩さをみんな楽しんでいるんじゃないかなと思います。
―――最近、働くスタッフの皆様のなかで“ざわざわ”した作品はどんな作品ですか?
(山本)何か決まった作品というよりは、最近だと同時期公開の作品でふり幅を感じた作品は『アウシュヴィッツ・レポート』と『アフリカン・カンフー・ナチス』の2作品です。
『アウシュヴィッツ・レポート』は、タイトルの通り、実話を元にした深刻な社会派の作品なんですが、もう一方で公開された『アフリカン・カンフー・ナチス』はナチスという言葉が入っていても、めちゃくちゃコメディーな作品なんです。
SNSを拝見していると結構ナチスという言葉に引っかかる方って多いようで、「シネ・リーブル梅田ってこれを一緒に上映しているんだね」みたいな言葉も頂きますし、働くスタッフ内でも、”まさかのコラボ”に近い、同日公開にはざわつきがありました(笑)。
―――現在上映中の『最後にして最初の人類』のSNSで、シネ・リーブル梅田さんの劇場にいらっしゃる方々は最前列から埋まっていく、と拝見しました。お客様への座席のおすすめなどはありますか?
(山本)そうですね。結構、シネ・リーブル梅田では、座席も前の方から埋まっていくと思います。
スタッフ的にも一番オススメの座席が最前列なんですよね。うちの劇場知り尽くした方は、やっぱり一番前から予約されています。スクリーンから1列目までのちょっと距離もありますし、スクリーン自体そんなに高い位置に設置していないので、一番前に座っても見上げるような感じにはならず、丁度いい目線の位置なのかもしれません。
―――この春からヒューマントラストシネマ渋谷に続き、音響システムOdessaを導入したスクリーンも登場したと伺いましたが、変化などはありましたか?
(山本)先日の『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン』を上映した際にはやっぱり音のすごさを感じましたし、認知はまだまだこれからだとは思うのですが、手ごたえを感じ始めています。実際に働くスタッフ内でも新しいサウンドシステムが入ると聞いて、ざわつきがありました(笑)。
―――様々なタイプの作品を上映するシネ・リーブル梅田では、この1年どのように運営されていますか?
(山本)このような状況で、結構時短営業も多いなかではあったのですが、昨年の秋に公開した『スパイの妻』は、久しぶりに劇場も盛り上がった印象がありました。緊急事態宣言を受けて1か月近く休館することもあり、営業再開すると止まっていた作品が一気に動き出し、まとまって公開するような繰り返しの日々が続いています。そういったなかでもお客様もそうですが、働くスタッフまで、盛り上がり話題なった映画のように思いました。あと、東京とあわせてシネ・リーブル梅田で恒例になってきている「未体験ゾーンの映画たち」という特集上映も11月頃から準備が始まるので、いつも目まぐるしく作品を上映していますね(笑)。
―――最後に皆さんにとって、「映画館で映画を観ること」について伺ってるのですが、山本さんはどんな風に考えていますか?
(山本)働いているシネ・リーブル梅田をはじめとして「テアトルシネマグループ」のモットー がスタッフ向けマニュアルに記載されているのですが、"最高水準の映像体験を提供する"という言葉にすごく共感をしていて、とてもいいなと思っているんです。配信サイトが増えて、スマホを使って移動中にも映画を観ることもできますが、映画館ではいい映画体験をしてほしいと思っています。
やっぱり「体験」した方が記憶にも残りますし、あわよくば、思い出にもなると思うんです。映画を見て人生観が変わったとかそんな大げさなことはなくても、知らないことをたくさん知れるという魅力がありますし、映画を観ることで、理解の幅が広がったりとか、考え方が増えたりだとか、そういう小さな影響は、きっとたくさんある。「映画館に行く」というちょっとした行動が日常になればもっと毎日が豊かになると思っているので、映画ファンだから映画を見るんじゃなくて、どんな人にも映画体験を楽しんでもらえたら嬉しいですね。
2021/08/02
『最後にして最初の人類』シネ・リーブル梅田での上映は8月19日(木)までとなります。ぜひ劇場の雰囲気も合わせて映画をお楽しみください!
~現在公開中~